『名牝系』華麗なる一族 〜クラフティワイフ(Crafty Wife)編〜活躍馬まとめ
競走馬の世界には牝系という概念があります。
牝系とは、家族の考え方を競走馬の世界に落とし込んだもので、『母』や『母の母』、『母の母の母』というように母方だけを辿っていく概念になります。
そもそも何故この考え方をするのというと
サラブレッドには
『thorough』[完璧な、徹底的な]『bred』[品種、育ち]
という意味があり、より優秀なものを生産していくというのが目的であるため、1年に1頭しか産めない牝馬と違い牡馬は種付けすれば父親になれるので、優秀な馬しか父親になれないという理由があります。
優秀な馬しか父親になれないという事は、父親で大きな差は生まれにくく、母親で差が生まれることになります。
それは何代続けても同じ事が言えるので、
この牝馬は、、からこの牝系は、、という考え方になっていきます。
結果的に牝系ごとに評価される事となり、優秀だとかそうでないとかという話になります。
セリなどではその評価の差が価格に反映され、大きな差が出ます。
たとえ母親が競走馬として優秀ではなくても、牝系が優秀だと高値で取引されます。
そういった馬から強い馬が現れるのはサラブレッドの世界では日常茶飯事なので、バイヤーはあまり気にしないですし、むしろ活躍していない事から少し安くなるので多くのバイヤーが狙う馬にもなります。
牝系について長々と書いてきましたが、この記事では、クラフティワイフ牝系についてまとめています。
クラフティワイフについて
クラフティワイフ Crafty Wife [米]
父 Crafty Prospector 母 Wife Mistress 母父 Secretariat 生年月日 1985年01月17日
通算成績:米22戦7勝 (7-3-1-11)
代表産駒:ビッグショウリ、ビッグテースト、バトルバニヤン
牝系の活躍馬
ブリリアントベリー
父 ノーザンテースト 母 クラフティワイフ 母父 Crafty Prospector 生年月日 1990年04月11日
主な実績:臥牛山特別(900万下)
代表産駒:カンパニー、ヒストリカル、レニングラード、ニューベリー
現役時は現2勝クラスを勝利後、ローズS(G2)にするも14着に敗れ、このレースを最後に引退となった。
繁殖牝馬となった本馬は、ここから素晴らしい繁殖能力を見せ、カンパニーを始め4頭の重賞級馬を輩出した。
勝利したレースは1000m〜1200mと短距離に集中していたが、産駒は父の距離適性に応じた産駒が多く、父フジキセキのニューベリーはマイル前後、父トニービンのレニングラードは2400m前後、父ディープインパクトのヒストリカルは2000m前後を得意としていた。
また血統表以上にキレがある産駒が多く、瞬発力勝負にも強かった。
ニューベリー
父 フジキセキ 母 ブリリアントベリー 母父 ノーザンテースト 生年月日 1998年05月08日
主な実績:スポニチ賞京都金杯(G3)2着、関屋記念(G3)3着
レニングラード
父 トニービン 母 ブリリアントベリー 母父 ノーザンテースト 生年月日 1999年04月29日
主な実績:アルゼンチン共和国杯(G2)1着、ラジオたんぱ賞(G3)2着、新潟記念(G3)2着
カンパニー
父 ミラクルアドマイヤ 母 ブリリアントベリー 母父 ノーザンテースト 生年月日 2001年04月24日
主な実績:天皇賞(秋)(G1)、マイルチャンピオンS(G1)、産経大阪杯(G2)、中山記念(G2)
受賞タイトル:JRA賞特別賞(2009年)
代表産駒:ウインテンダネス、シャイニービーム、イェッツト
8歳にして天皇賞(秋)にてG1初勝利。その後マイルCSも勝利した稀代の超晩成馬。
超晩成とは書いたもののデビュー時から素質の高さを見せており、4歳春には中山記念(G2)2着、安田記念(G1)5着の実績があり、現役トップクラスの能力は見せていた。
しかし、そこからはG2、G3では勝ち負けするものの、G1では掲示板が精一杯という感じの成績が続き、初G1勝ちする2009年天皇賞(秋)までに3着1回、4着4回、5着3回と一線級には一枚落ちるという戦績だった。
それでも安定して走っており、メンバーが落ちるG2、G3では確実に勝ち負けに絡んできており、常に自分の実力は出せるタイプの競走馬だった、
その潮目が変わったのが2009年8歳秋緒戦の毎日王冠(G2)で、ウオッカが単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持されており、本馬は単勝11.8倍の4番人気で2番手候補の一角であった。
レースはウオッカが逃げる展開を中団から進め、最後の直線では瞬発力勝負になったが、上がり3F最速の33.0の豪脚を見せ、ゴール前で逃げていたウオッカを捉え、1馬身差を付け勝利した。
次戦は天皇賞(秋)に出走したが、先述した毎日王冠はハイパフォーマンスだったものの、これまでのG1では足りないという実績から単勝11.5倍の5番人気とそこまでの人気ではなかった。
インの中団からレースを進め、最後の直線に入ると早めに進路を確保し、上がり3F最速の32.9の脚を繰り出し、2着のスクリーンヒーローに1.3/4馬身差を付け勝利した。
引退レースとなったマイルCSでは、天皇賞(秋)での走りが評価され、ついに1番人気に支持された。
それまでの毎日王冠や天皇賞(秋)とは全く異なる雨で渋った時計のかかる馬場となっていたが、2枠4番とだった事もあり馬場の悪いインを通らされる展開となり、最後の直線もインを突く形になったが、モノともせず抜け出し勝利した。
秋のパフォーマンスは非常に高かったものの、ドリームジャーニーが宝塚記念と有馬記念のグランプリを春秋連覇した事やウオッカがジャパンCなどを含むG1 3勝した事から通常のJRA賞は獲得できなかったが、その走りが評価されJRA賞特別賞を受賞する事となった。
ヒストリカル
父 ディープインパクト 母 ブリリアントベリー 母父 ノーザンテースト 生年月日 2009年03月27日
主な実績:毎日杯(G3)1着、きさらぎ賞(G3)2着、チャレンジC(G3)2着、小倉大賞典(G3)2着
ビッグショウリ
父 ノーザンテースト 母 クラフティワイフ 母父 Crafty Prospector 生年月日 1991年04月05日
主な実績:読売マイラーズC(G2)1着、プロキオンS(G3)2着、東京中日S杯根岸S(G3)2着、阪急杯(G3)2着
キョウエイフォルテ
父 ノーザンテースト 母 クラフティワイフ 母父 Crafty Prospector 生年月日 1994年03月15日
主な実績:シリウスS(G3)
クラフティゴールド
父 ノーザンテースト 母 クラフティワイフ 母父 Crafty Prospector 生年月日 1996年02月22日
主な実績:小倉3歳S(G3)3着
エヴリウィスパー
父 ノーザンテースト 母 クラフティワイフ 母父 Crafty Prospector 生年月日 1997年03月13日
代表産駒:トーセンジョーダン、トーセンホマレボシ、ダークメッセージ
現役時は15戦するも3着1回のみと勝利する事はできなかったが、繁殖牝馬としてG1馬トーセンジョーダンなど重賞級を3頭輩出した。
また活躍できなかったアドマイヤキラメキやケアレスウィスパーは母としてG1馬を輩出しており、同牝系一の枝葉と言えるだろう。
アドマイヤキラメキ
父 エンドスウィープ 母 エヴリウィスパー 母父 ノーザンテースト 生年月日 2002年02月27日
代表産駒:トーセンスターダム、センテリュオ
トーセンスターダム
父 ディープインパクト 母 アドマイヤキラメキ 母父 エンドスウィープ 生年月日 2011年03月14日
主な実績:豪エミレーツS(G1)1着、豪マッキンノンS(G1)1着、豪ランヴェットS(G1)2着、豪メムジーS(G1)3着
クラシック有力候補だったが、古馬になると頭打ちになりオーストラリアに渡った結果、G1を2勝する事になった。
デビューから3連勝できさらぎ賞(G3)を勝利し、クラシック有力候補となった本馬だが、クラシック3戦全てに出走するも11着→18着→8着と結果を出す事は出来なかった。
3歳暮れのチャレンジC(G3)は勝利し、4歳春はオーストラリアに遠征する事になった。
豪国ではG12レースに出走し、2着、5着と適性を見せ健闘したと言えるだろう。
帰国緒戦は宝塚記念に出走するが、12着と結果を出す事はできず、秋になってもOP戦では勝利するも重賞G1級では足りない頭打ち感が出ており、ついに5歳秋オーストラリアに拠点を移す事になった。
転厩緒戦はG2に出走し4着。2戦目はフューチュリティS(G1)に出走し僅差の2着になった。
その後は善戦止まりのレースが続くが、転厩7戦目となった
センテリュオ
父 ディープインパクト 母 アドマイヤキラメキ 母父 エンドスウィープ 生年月日 2015年04月08日
主な実績:産経賞オールカマー(G2)1着、マーメイドS(G3)2着
ダークメッセージ
父 ダンスインザダーク 母 エヴリウィスパー 母父 ノーザンテースト 生年月日 2003年02月14日
主な実績:日経新春杯(G2)2着、シリウスS(G3)2着、日経新春杯(G2)3着
ケアレスウィスパー
父 フジキセキ 母 エヴリウィスパー 母父 ノーザンテースト 生年月日 2004年02月04日
主な実績:関東オークス(G2)2着
トーセンバジル
父 ハービンジャー 母 ケアレスウィスパー 母父 フジキセキ 生年月日 2012年03月01日
主な実績:豪アンダーウッドS(G1)2着、京都大賞典(G2)2着、香港ヴァーズ(G1)3着
トーセンジョーダン
父 ジャングルポケット 母 エヴリウィスパー 母父 ノーザンテースト 生年月日 2006年02月04日
主な実績:天皇賞(秋)(G1)1着、札幌記念(G2)1着、ジャパンC(G1)1着、天皇賞(春)(G1)1着
代表産駒;キタノインディ、チュウワジョーダン、ゴールデンプルーフ
トーセンホマレボシ
父 ディープインパクト 母 エヴリウィスパー 母父 ノーザンテースト 生年月日 2009年03月23日
主な実績:京都新聞杯(G2)1着、東京優駿(G1)3着
代表産駒:ミッキースワロー、オノリス、ハイヒール
ビッグテースト
父 ノーザンテースト 母 クラフティワイフ 母父 Crafty Prospector 生年月日 1998年03月09日
主な実績:中山グランドジャンプ(JG1)1着、小倉サマージャンプ(JG3)3着
受賞タイトル:JRA賞最優秀障害馬(2003年)
バトルバニヤン
父 ジャングルポケット 母 クラフティワイフ 母父 Crafty Prospector 生年月日 2004年04月01日
主な実績:小倉記念(G3)2着、小倉大賞典(G3)2着、富士S(G3)3着、七夕賞(G3)3着
まとめ
いかがだったでしょうか。
この牝系は成長力があり、長きにわたって活躍できる馬が多く優秀な牝系です。
牝馬の活躍馬であるセンテリュオが早逝してしまった影響は大きく、この牝系の発展にとっても大きな損失と言えますが、大きく枝葉が広がっている牝系なので見かける機会は多いと思います。
今後の牝系の活躍に注目したいと思います。