『名牝系』華麗なる一族〜ウインドインハーヘア(Wind in her Hair)編〜活躍馬まとめ
競走馬の世界には牝系という概念があります。
牝系とは、家族の考え方を競走馬の世界に落とし込んだもので、『母』や『母の母』、『母の母の母』というように母方だけを辿っていく概念になります。
そもそも何故この考え方をするのというと、
サラブレッドには
『thorough』[完璧な、徹底的な]『bred』[品種、育ち]
という意味があり、より優秀なものを生産していくというのが目的であるため、1年に1頭しか産めない牝馬と違い、牡馬は種付けすれば父親になれるので、優秀な馬しか父親になれないという理由があります。
優秀な馬しか父親になれないという事は、父親で大きな差は生まれにくく、母親で差が生まれることになります。
それは何代続けても同じ事が言えるので、結果的にこの牝馬は、、からこの牝系は、、という考え方になっていきます。
結果的に牝系ごとに評価される事となり、優秀だとかそうでないとかという話になります。
セリなどではその評価の差が価格に反映され、大きな差が出ます。
たとえ母親が競走馬として優秀ではなくても、牝系が優秀だと高値で取引されます。
そういった馬から強い馬が現れるのはサラブレッドの世界では日常茶飯事なので、バイヤーはあまり気にしないですし、むしろ活躍していない事から少し安くなるので多くのバイヤーが狙う馬にもなります。
牝系について長々と書いてきましたが、この記事では、ディープインパクトの母ウインドインハーヘアを祖とする牝系であるウインドインハーヘア牝系についてまとめています。
ウインドインハーヘアについて
ウインドインハーヘア Wind in Her Hair [愛]
父 Alzao 母 Burghclere 母父 Busted 生年月日 1991年02月20日
通算成績:愛英独13戦3勝 (3-3-2-5)
主な実績:アラルポカル(G1)1着、英オークス(G1)2着、ヨークシャーオークス(G1)3着
代表産駒:ディープインパクト、ブラックタイド、オンファイア
母母Highclereはエリザベス女王の所有馬としてG1を2勝した名牝で、本馬の従兄弟にはNashwanやNayefがいるという名牝系の出身である。
現役時はG1戦線で活躍した名競走馬で、受胎した状態でG1を優勝したという有名な話があり、それだけ心身共に強靭なモノを持っていたという事が伺える。
現役時でも十分凄いのだが、ここからが本領発揮という感じで繁殖として大成功を収める。
本馬最大の功績はディープを産んだ事になると思うのだが、ディープ以外の多数の活躍馬の基盤にもなっており、名牝系の祖として影響力は強いままである。
牝系の活躍馬
Jeremy [米]
父 Danehill Dancer 母 Glint in Her Eye 母父 Arazi 生年月日 2003年03月02日
主な実績:サンダウンマイル(G2)1着、ジャージーS(G3)1着、クイーンアンS(G1)2着
ヴェイルオブアヴァロン Veil of Avalon [米]
父 Thunder Gulch 母 Wind in Her Hair 母父 Alzao 生年月日 1997年03月31日
主な実績:ドラローズH(G3)1着、ギャラクシーS(G2)2着
リルダヴァル
父 アグネスタキオン 母 ヴェイルオブアヴァロン 母父 サンダーガルチ 生年月日 2007年04月08日
主な実績:NHKマイルC(G1)3着、毎日杯(G3)3着、鳴尾記念(G3)3着
ヴォルシェーブ
父 ネオユニヴァース 母 ヴェイルオブアヴァロン 父 サンダーガルチ 生年月日 2011年03月16日
主な実績:目黒記念(G2)2着、アルゼンチン共和国杯(G2)3着
レイデオロ
父 キングカメハメハ 母 ラドラーダ 母父 シンボリクリスエス 生年月日 2014年02月05日
主な実績:東京優駿(G1)1着、天皇賞(秋)(G1)1着、ジャパンC(G1)2着
ディープインパクトに続く牝系2頭目の日本ダービー馬で、近親から複数ダービー馬が出る事は非常に稀なので、同牝系の偉業と言える。
種牡馬入りとなった本馬は、初年度から600万円と実績から考えると気持ち高いとも思える金額だが、牝系の良さやサンデーサイレンスの血を持ってないという事もあり、生産者からの評価は非常に高く、即満口となった。
レイエンダ セン
父 キングカメハメハ 母 ラドラーダ 母父 シンボリクリスエス 生年月日 2015年01月30日
主な実績:エプソムC(G3)1着、朝日セントライト記念(G2)2着、富士S(G3)2着
アブソルティスモ
父 ダイワメジャー 母 ラドラーダ 母父 シンボリクリスエス 生年月日 2017年01月20日
主な実績:サウジアラビアRC(G3)3着
ゴルトブリッツ
父 スペシャルウィーク 母 レディブロンド 母父 Seeking the Gold 生年月日 2007年04月11日
主な実績:帝王賞競走(G1)1着、アンタレスS(G3)1着、アンタレスS(G3)1着
プラチナヴォイス
父 エンパイアメーカー 母 プレザントプリーズ 母父 マンハッタンカフェ 生年月日 2014年03月10日
主な実績:フジTVスプリングS(G2)3着
ダノンパッション
父 アグネスタキオン 母 スターズインハーアイズ 母父 Woodman 生年月日 2007年02月05日
主な実績:デイリー杯2歳S(G2)3着
アドマイヤミヤビ
父 ハーツクライ 母 レディスキッパー 母父 クロフネ 生年月日 2014年01月14日
主な実績:デイリー杯クイーンC(G3)1着、優駿牝馬(G1)3着
ルフトシュトローム
父 キンシャサノキセキ 母 ハワイアンウインド 母父 サンデーサイレンス 生年月日 2017年01月31日
主な実績:ニュージーランドT(G2)1着
アサヒ
父 カレンブラックヒル 母 ライクザウインド 母父 デインヒル 生年月日 2019年02月22日
主な実績:東京スポーツ杯2歳S(G2)2着
ブラックタイド
父 サンデーサイレンス 母 ウインドインハーヘア 母父 Alzao 生年月日 2001年03月29日
主な実績:フジTVスプリングS(G2)1着、きさらぎ賞(G3)2着、日刊スポ賞中山金杯(G3)3着
ディープの全兄ということでスタッドインしたが、タイプはまるで違い、どちらかというと失敗と言える結果であった。
しかし、唯一の後継馬キタサンブラックが世間の期待以上の成績で種牡馬として成功の兆しを見せており、一子相伝ではあったが次世代に繋がる可能性は高い。
ディープインパクト
父 サンデーサイレンス 母 ウインドインハーヘア 母父 Alzao 生年月日 2002年03月25日
主な実績:牡馬3冠、ジャパンC(G1)1着、有馬記念(G1)1着
日本競馬史上最強の呼び声が高い、3冠を含むG1を7勝した歴史的名馬。
その走りも伝説的だったが、種牡馬になると伝説の第2章が始まり、数多の活躍馬を輩出した。
産駒は国内外でG1を勝ちまくり、積み上げたG1勝利数は90にも上る。
また産駒はダービーで非常に強く、4連勝を含む7勝しており歴代最多の記録となっている。
代表産駒:コントレイル、ジェンティルドンナ、キズナ、サトノダイヤモンド
オンファイア
父 サンデーサイレンス 母 ウインドインハーヘア 母父 Alzao 生年月日 2003年03月26日
主な実績:東京スポーツ杯2歳S(G3)3着
ニュービギニング
父 アグネスタキオン 母 ウインドインハーヘア 母父 Alzao 生年月日 2004年03月19日
主な実績:毎日杯(G3)3着
ロカ
父 ハービンジャー 母 ランズエッジ 母父 ダンスインザダーク 生年月日 2012年01月26日
主な実績:デイリー杯クイーンC(G3)3着
ドゥラドーレス
父 ドゥラメンテ 母 ロカ 母父 ハービンジャー 生年月日 2019年02月23日
主な実績:毎日杯(G3)3着
ヴァルコス
父 ノヴェリスト 母 ランズエッジ 母父 ダンスインザダーク 生年月日 2017年02月14日
主な実績:テレビ東京杯青葉賞(G2)2着
まとめ
いかがだったでしょうか。
ディープインパクトの母として著名なウインドインハーヘアですが、ディープ以外にも活躍馬は多数おり名牝系として確立されています。
同牝系は、比較的走る馬の出る出ないがはっきりしており、いくつかの走る枝葉と走らない枝葉に分類する事が出来ます。
POGや一口馬主ではそこに注目すると当たりを引きやすいと思います。
レイデオロが種牡馬として評価が高い理由として、レイデオロとディープインパクトのウインドインハーヘアクロスにあり、どんな作用があるのかとても興味深いですね。
それだけでなく同牝系馬にディープ後継やレイデオロが付けられた産駒も出てくるはずなので要注目です。