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運転の資質(前編)
ほとんどの人々が当たり前のように乗りこなす
『自転車』という乗り物に乗れるようになったのは、周りと比べるとかなり遅い時期だった。
小学校に上がると同時に初めての『自転車』を買ってもらった記憶があるが、すぐに挫折した。
親には乗れるようになったと嘘をついた。
乗れないことを特に不自由にも感じず、
友達と一緒に出かける時は、自転車と並んで全力疾走していた。しかし、体力が無限に続くわけではない。自転車乗りの友人が『2人乗り』を提案してくることもしばしばあったが、この行為は
『自転車』に乗れるもの同士でしか基本的に
成立しない。双方の適度なバランスを保つ技術によって成り立つ高難度のテクニックなのだ。
そして前にも書いたが、これは犯罪だ。
たまに友達(というほど仲良くない同じマンションに住む女子)の弟(3歳くらい)が乗っている
三輪車を借りて友達の自転車を追尾した事もあったが、馬力が違いすぎて話にならない。もし今後、三輪車で自転車と競走しようと考えている人がいたら、やめておいた方がいいだろう。恐らく勝ち目は微塵もない。
一生自転車に乗れない人生を歩んでいくことを
覚悟し、将来なりたい職業から、『競輪選手』と『トライアスロン選手』を除外して、『プロ野球選手』を追加した小学校5年生の頃、そんな私にも転機が訪れた。親にバレたのだ。
本当は『自転車』に乗れないことが…
怒られたというか、呆れられたが、練習用に新しい6速のマウンテンバイクを買って貰うことになった。今度こそ練習して乗れるようになることを
約束した。(させられた)
しかし私は、新品のマウンテンバイクが傷つくのが嫌で、全く練習することもなく、しばらく駐輪場に眠らせていた。
ある日の夕方、下校後に何人かの友達に遊ぼうと誘ってみたが、どの友達も都合が悪いようで断られた。仕方なく、ほとんど絡んだことがないクラスのM君を誘ってみた。特に何して遊ぶというわけでもなく、私の家で一緒にゲームでもしようと考えていた。
M君を連れて自宅の玄関を開けた瞬間、
母親の物凄い怒鳴り声が耳を突き抜けた。
「いつになったら自転車の練習するの!!?」
恐らくM君がいることには気づいていなかったが、2人で震え上がりながら、すぐさま外に出て、マウンテンバイクのある駐輪場に向かった。
不本意ながら、自転車の練習に付き合わせてしまうことにはなってしまったが、M君とは帰り道でもイマイチ話が盛り上がらなかったので、ちょうどよかったかもしれない。何度も何度も倒れては、起き上がりを繰り返し、そうこうしているうちに、元々遊ぼうと誘って断られた友達が用事を終え、1人また1人と合流して、私の練習を応援してくれるようになった。
最終的に10人くらいに囲まれて、晴れて私は
『自転車』に乗ることができるようになった。
だんだん辺りが暗くなり、擦り傷の痛みに耐えながら、頭の中ではもちろん、『ZARD』の
『負けないで』が流れていた。(気がする)
やっとコツをつかめるようになり、それなりのスピードで倒れず走行できるようになった私は、
少し調子に乗りすぎた。
一段階レベルを上げて、練習していた団地を一周してみるというフェイズに突入した。コーナーを曲がる技術には不安があったが、上手く足を使えば進路を補正できることを発見した。
問題は、どうやって止まるのかということだった。ブレーキの使い方がよくわからない。
というか、加減がわからない。走行している速度に対して、どの辺りでブレーキを握れば止まりたい場所で止まれるのか…という距離感を掴むのが難しかった。これも足を使えばある程度は制御できることがわかったが、距離感を掴むのが難しいというのは、人間関係にも言えることだと思う。
一度乗れるようになると、スピードを追い求めてしまうのが、自転車乗りの性だ。団地を一周、また一周と、グルグルグルグルとアホみたいに速度を上げながら、頭の中には『久保田 利伸 with ナオミ キャンベル』の『LA・LA・LA LOVE SONG』が流れていた。(かもしれない)
そこで悲劇は起きた。何が起きたのかを詳しく
書くことはできないが、何事も成功の裏には
犠牲がつきものだ。これによって私はブレーキの正しい使い方を覚えたので、犠牲になったM君も喜んでくれているはずだ。
その後、M君とは不仲になることはなかったが、これを機に仲良くなることもなく、以前と同様、ほとんど絡むことのないクラスメイトのままだった。今、彼が何をしているかは知らないが、彼のおかげで、『自転車』に乗ることができるようになったことを今でも感謝している。
そんな私がハタチになり、今度は『自動車』の
免許を取ろうっていうのだから、人生っていうのは実に面白い。『自転車』にすらまともに乗れなかった男が『自動車』に乗れるようになるのか?それは…
次回に続く(この記事が反応よければ)