[ライブキャッシュ]ルースなBBレンジに対してのフロップCB(BB有利ボード)654r ①均衡の理解
きっかけ
前回、654dddを解析していたところ(https://note.com/persuit/n/n62b6e4c4719e) BTNのCBに「強いメイドハンドだけでレイズを返しヒット系は降りないパッシブなBB」にノードロックしたところ、「逆にCBを打たれる前にドンクを打つ事でバランスを取る」という挙動をRuse AIが見せた。
本来はチェックレイズでCBに対抗しているところでブラフができないならば、ドンクでしてしまおうというGTOのたくましさ(?)
という事はおそらく、特にBB有利なボードのCB戦略ではドンクの存在が大きく関わっていそう。
せっかくドンクが絡むスポットが出てきたので、今回このスポットをいじってみる事で、ポーカーにおいてドンクとはどのように機能しているのかという一般的な知見が得れるのではないか。
ドンクが有効な場面、なぜドンクをするのかを理解する
ドンクしすぎる/しなさすぎる相手への対処法
前回の654モノトーンを654レインボー/654ツートンに変えてみたら広いドンク頻度が出現した。
今回は654rを見てみる。
設定
※前回と同じ
レーキ,スタック,ベットサイズ
レーキ:10% 2bb
エフェクティブ:200bb
ベットサイズ:オートマティック
想定レンジ
※前回と同じ。詳しくは前回を参照
低レートライブキャッシュの、基本BBは降りませんおじさんを想定。
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解析
BTNvsBB[loose] 654r BBドンクレンジ
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かなり広く40%Potのドンクを打つ
滑ったハイカード系でチェックレンジを作り、ヒットもドローも全部ベット
ヒット系は、BDなしを60%くらいチェックレンジに残してバランス
レンジ関係も、薄く広くBBにアドバンテージがあり、BB有利なボードという直感を裏付けている
では、この40%Potドンクに対してBTNはどう反応するのかというと
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かなり広めにコールしている
BDもガットもないK,Q,Jハイなどは流石に諦め
AKを半分くらい捨てているのが意外。しかしこれはドンクの弱いところをブロックしているかどうかの微妙な差のようだ。
BBのドンクレンジに遡ってみると、たしかにKよりQをブラフドンクに回しており、KQs,KJs,K2sなどをピュアチェックに残している
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セットとストレートなどの強いところ、オープンエンドやBDフラドロガット、オーバーペアなどの広いドローでレイズレンジを作っている。A9oなどのガットもないAハイをブラフに回しているのが意外。
相手が広くドンクを打ってきているので、こちらもある程度のハンドまでレイズに動員しないとコンボ数が足りないのだろう。
では、BBのベットレンジがさらに広がればさらにレイズハンドは広がるのだろうか?という事が気になり、BBを全レンジドンク(額はそのまま40%)にロックしてみた。
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やはり、単純にFが減りR,Cが増える結果に。
アクションに割り当てるハンドの選定は変わらず、そのまま今までそのアクションに当てられていたアクションの一部が昇格している感じ。(AKoの降りていた頻度が全てコールに、レイズを担当していたハンドのレンズ頻度が全体的にやや上昇)
では、ドンクの額が変わるとどうだろう。BBのドンク額を75%に設定してみる。
BB ドンク(大)
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全体的に頻度が下がる。
A9oやTHグッドキッカー、THガットなどはサイズを上げた影響を受けづらく、そのままフルでドンクレンジに残っている。(なぜ?)
このドンクに対するBTNの戦略がこちら
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40%Potドンクへの対処に比べ、Foldは順当に増える(20%->39%)
Aoのガットなしが広く削れる
40%Potドンクの時にBBのレンジに広く含まれていたAハイ弱キッカー、K,Q,Jハイが消えているため、ブラフに勝っているところが減ったからではないか、という仮説を立てた。
しかし、BBのドンクレンジの全体ベット頻度を50%に保ったまま、ハイカード系のベットを40%Potベットと同じくらいの頻度まで上げてみてもBTNのFold範囲は変わらなかった。
なのでシンプルに「ベット額上昇によって、MDFの観点から、エクイティの大きさもrobustnessも低いAハイが脱落ハンドとして選ばれた」と捉えておくのが良さそう(?)
コールに比べ、レイズは意外と削れない(12%->10%)
ドンク側のベット頻度が78%->50%と落ちているにも関わらず、BTNのレイズ頻度は12%->10%しか落ちていないのが意外。なぜだ。
ドンクのベットサイズや頻度が変わろうが、セット/ストレートなどのレイズインセンティブはあまり変わらないので、それに合わせてガットなどのブラフレイズもそのままレイズに組み込まれている(?)
J9s ダブルBDなど、わりとどうしようもないハンドが逆にブラフコンボとして新規採用されているのが面白い
それでいうと、逆にどういうシチュエーションだとフロップ打たれた側のレイズ頻度が額によって大きく変動するのかが気になる。恐らく、相手が広く打っている事に合わせて広くブラフハンドでレイズを返しているシチュエーションとか?(BTN BB ミドル~ローペアボのBBチェックレイズなど?)
ダブルBDまで含めて、BDはanyコール。BD+ガット/オープンエンドなどのドローの一部を低頻度ブラフレイズに回している。オフスートのハイカードA2o下ガットがギリ落ちるくらい。
BTNのレイズインセンティンブを考える上で、BBのドンクレンジの想定が気になり、話がそれてしまった。ここでメインストーリーに戻り、40%ドンクを受けたBTNがレイズを返した時のBBの反応を見てみる。
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F/Cインディファラインはミドルヒットぼちぼちキッカー。ガットのBDあり/なしが境界。
K5~J5oがインディファなのにT5oがピュアコールなのはなぜ?ブロッカーが関係しているかと思ったが、Q5oとT5oではブロッカーで見てもT5oが劣勢(トラッシュをよりブロックしてしまっている)
おそらく、ターン以降のボードカバレッジの微妙なニュアンスでの差?
BDありAハイはギリ耐え
3bet 17.8%いかつい
A~QハイのBD+ガット/OE半分以上動員
上OE(7)の1/3くらい、ヒットドローから少し。下OE(3)7割くらい(!)
その3betに対するBTNの反応。
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TPインディファ、オーバーペアピュアコール(※コールするとSPRが3.6くらい。)
AハイBDガット(A8s)までピュアコール
OEは当然ピュアコール
かなり気合入っとるなという印象。スタックサイズが関係あるかと思いえeff100bbの場合も見てみた。
オーバーペア、OESD:4betAI/C インディファ
ガット:降り
オープンエンドからコール
ヒット:降り。しかしそもそもこうならないように100bbしかない時はドンクにレイズをあまり返さない。
考察
とんでもなく広いBBのドンクベットレンジが意外だった
それに対するBTNからのレイズにもBBが17.8%も3betを返すのはもっと意外
逆にいうと、こんなドンクレンジを作れる人はライブで少ないだろうから、全くドンクがない場合や特定のハンドにドンクが偏っている場合にどうBTNの戦略が変化するかは見る価値がありそう。
というよりそれが本筋のはずが、脇道が楽しくなってしまった。次回ここをやろう。
ドンクを受けるBTN側はAハイやBDピュアコール、Hit/gutもついていれば立派なレイズ要員というのもかなりアグレッシブな印象で、現状足りてない感覚だったのでタメになった。
安ドンクでもJハイのバックドアとかスナップで降りてた気がする。相手のドンクがレンジで打ってきていない場合に、BTNの反応がどれくらい変わるか気になる。
今回のドンクのベット額の変化に対して、IPのレイズ戦略はあまり影響を受けていないように見えた。逆に、IP,OOP関わらずFlopのベットサイズによってレイズ頻度が大きく影響を受ける場面にどんなものがあるか、追加研究。