二つの世界の間で
気づけばヘテロノーマティヴィティとセクシュアルノーマティヴィティという二つの概念の間に挟まれ、ぎゅうぎゅうに狭いところを上手く避けていた一年だったと思う。
「ずっと一人でいてはダメだよ」
年が終わる前に親に言われてしまった。成人してから一年に一度は言われるようになってしまったいつもの一言。
あと2年モラトリアムを継続することになった。といっても社会人と学生の間のような立場で過ごすわけだが、それに起因する手続の諸々をするために久々に親と会った。
「結婚しろとは言わないけど、ずっと一人でいると何かあった時にアレだから……」
今年冬の初めに貧血でぶっ倒れてしまったこともあり、例年より強めの口調で言われてしまった。
「結婚しろとは言わないけど」という前置きがある時点で、結婚しろという圧力を感じる。そして子どもを産め、孫の顔が見たい……
一人で生きてはいけないということはよくよくわかっているけれど、一人でひっそりと死ぬのはダメなのか……
年末年始はどうしたって家族というものに振り回されるものなんだなあと思う。
多くの私の発言は瑣末なものとして、冗談として考えられる。そこには、私の本当に言いたいことが真剣に聞き入れられる場はないのだろう。
言ってもわからない、と私自身が諦めているのもある。
女を演じ、ニコニコとして、余計なことは言わないおりこうさんとして振る舞うのだ。
ワンルームの寒い部屋でこたつにもぐりながら、カップ麺をすする大晦日がいいなあ。
そこは寒いけれど温かい世界。
悪意なく笑いながら私を傷つける発言や行動のないただ独りの世界。
久々に親戚の集まる席に顔を出す直前、戦々恐々としている年末の夜に……