見出し画像

みじん切り大革命!ぶんぶんチョッパーを開発したあの人に、お礼を伝えてきた!

じゅわっと肉汁あふれるハンバーグ、洋食の定番ミートソース、キーマカレーにコロッケに餃子など、多くの料理には「みじん切り」された野菜が潜んでいる。
 
しかしいざみじん切りに取り掛かると、うまく包丁が扱えず粗さがバラついたり、玉ねぎで目が沁みたり、片付けにも時間がかかったりで苦手意識がある人も多いはず。「みじん切り…もう無理…」と諦めかけていた2015年、とある神アイテムが開発された。
 
それが「ぶんぶんチョッパー」だ。

ぶんぶんチョッパーとは、蓋に付いているハンドルを引くと中の刃が連動して回転し、あっという間にみじん切りができる神アイテム。
 
つまり、
 

ぶん!

ぶん!!

チョッパー!!!!!!

ということ。
 
発売されるやいなや、ご家庭の「みじん切り」に大革命が巻き起こる。わずか8秒でみじん切りができ、忙しいご家庭、一人暮らしの方、さらに包丁を握るのが難しい方、お子様、料理が苦手な方の一躍ヒーローに。
 
そんなみじん切りに革新を起こした、ぶんぶんチョッパーについて #これ誰にお礼言ったらいいですか でこんなお礼が寄せられた。 

 このお礼を見た瞬間、「わかる!!!伝えたい!!」と強く感じた。
 
なぜなら、筆者もみじん切りが苦手でぶんぶんチョッパーに助けられた一人だからだ。ぶんぶんチョッパーを買ってからというのも、嬉しいことがあればブンブン、悲しいことがあればブンブン、プレゼンが成功した日もブンブンと、超絶お世話になっている。
 
きっと多くの方々が同じようにぶんぶんチョッパーに助けられたはず。
 
一体この、シンプルなのに画期的な仕組みはどのようにして生まれたのか。 また、この手動みじん切り機とも言える商品に「ぶんぶんチョッパー」という愛らしい名前をつけたハイセンスな方は誰なのか。 
 
我々はぶんぶんチョッパーの生みの親を探すことにした。

こうして誰がやったかはわからないがお礼を言いたい仕事を募り、本人を探し出し実際にお礼を伝える#これ誰にお礼言ったらいいですかプロジェクト過去記事はこちらから。↓


■これ、誰にお礼言ったらいいですか

さっそく「ぶんぶんチョッパー 誰が作った」とインターネットで検索すると、すぐに答えにたどりついた。検索し、一番上に出てきた「有限会社ケイ・アンド・エー」をクリック。

こ、ここだ~~!!!
 
日本全国のみじん切り時間を圧倒的に短縮してくれた会社は、有限会社ケイ・アンド・エーだと発覚。右上にある【お問い合わせ】から、お礼をお伝えしたことを問い合わせるとすぐに返事がきた。

本プロジェクトにも共感してくださり、筆者の尻尾も千切れんばかりにブンブン。開発担当への取材をお願いすると、なんと代表取締役の宗さんが担当されたという。
 
開発した企業も開発者も分かり、アポイントもOK。すべての準備は整った。
 
有限会社ケイ・アンド・エーへ向かうため我々は、#これ誰にお礼言ったらいいですかシリーズ史上初の飛行機での遠征取材へ向かった。

そう、ぶんぶんチョッパーを開発した有限会社ケイ・アンド・エーは、なんと福岡県北九州市にある。まさか福岡県だとは思わなかったものの、どれほどの会社なのか、たくさんの従業員がいるのだろうなと高まる胸を押さえて北九州市八幡西区、場所は萩原に向かった。


■有限会社ケイ・アンド・エーに到着

福岡空港から電車に揺られること1時間30分。最寄り駅「萩原駅」に到着。萩原駅には、筑豊電気鉄道というローカル電車で辿り着いた。

駅から徒歩5分、マップが示す建物が見えてきた…どきどき。

辿り着いたのはとあるビルの一階。ここが、ぶんぶんチョッパーを生み出した会社なのだろうか。


あ、(有)ケイ・アンド・エー!!
 
事務所を見つけ、沸き立つ取材班。
 
すると中から、ぶんぶんチョッパーを2つ小脇に抱えて笑顔の男性が建物から出てきた。きっと彼こそが、創始者に違いない。 確信をして駆け寄ると、
 
「わざわざ遠くからありがとうございます」 
 
我々はこうしてみじん切りの革新者、宗さんにお会いすることができたのである。 


●ついに対面!「ぶんぶんチョッパー」生みの親、宗さん

―本日はよろしくお願いいたします。私自身「ぶんぶんチョッパー」にすごくお世話になっているので、お話できるのを楽しみにしていました!
宗さん:こちらこそ遠方からわざわざありがとうございます。

有限会社ケイ・アンド・エー 代表取締役の宗さん

―実はプロジェクト史上、一番の移動距離です(笑)。
宗さん:
おお!いや〜本当にありがとうございます。
 
―さっそくお話をお伺いできればと思いますが、先ほど見たところコンパクトな会社の印象を受けました。従業員の方は、何名いらっしゃるんですか?
宗さん:社員は全部で7名ですね。物流に4名、ここに常勤してくれている従業員が3名です。
 
―7名!?少数精鋭の中で、ぶんぶんチョッパーが生まれたんですか!?
宗さん:あはは!そう言われるとそうですね(笑)。当社は「笑顔が見たい」を合言葉に、毎日のお困りごとから発想を得たオリジナル雑貨の企画・卸売りをしています。

たとえば、コードレスで使える充電式のポータブルミキサーやレンジ調理も可能なシリコンバッグ、マルチクーラーバスケットなんかもあるんですよ。そんな中でも、特に「ぶんぶんチョッパー」は大ヒット商品です。


●「ぶんぶんチョッパー」は、見た瞬間売れると思った

―では改めて、「ぶんぶんチョッパー」の誕生秘話をお聞かせ願えますか。
 宗さん:ぶんぶんチョッパーを見つけたのは、今から10年ほど前。実は、僕らが0から考えたわけではなく、原型となる商品を中国の展示会で見つけたんです。
 
―そうだったんですか!
 宗さん:当時、何か良い商品を生み出せないかとアイデアを求めて中国の多ジャンルのアイテムが集う展示会に行きました。僕、プライベートでは料理が趣味なので調理器具ブースをぶらぶらしていたんですよ。

―まさか、そこで…!?(生唾ごくり)
宗さん:はい、ぶんぶんチョッパーの原型となるアイテムを見つけました。少し触って「これは絶対売れる!」と思いましたね(笑)。
 
ぶんぶんチョッパーは、言ってしまえばミキサーを手動で操作するアイテムです。一見面倒なようにも思えるけど、その発想が面白いなと。サンプルとして持って帰って社員たちに見せると「これはすごい!」と大喝采。うちの社員やパートさんは主婦さんが多いので商機を確信し、再度中国へ飛んで製造会社と打ち合わせを重ね、提携を結ぶことが決まりました。

我が子のように、触れる時はそっと。

―ということは、製造は中国でしてもらい、輸入する形で販売されているんですね。
 宗さん:そうです。ただ、日本で販売するにあたり、2つの苦労がありました。


●ネーミングのポイントは、“どんくさそう”で“ダサそう”なこと

―2つの苦労というと?
 宗さん:まずは、名前です。
 
―「ぶんぶんチョッパー」ですね。このネーミング、めちゃくちゃ気になっていました。
宗さん:商品名は、商品の命そのもの。商品のポテンシャルの高さはわかっていたので、となると広がりゆく商品名もとても大事です。加えて、商品名は僕らのような中小企業の生命線でもあります。大々的な広告戦略は資金的に難しいので、商品の価値と名前を武器に売っていく。商品名で勝負を決める!とまで思っていましたね。

宗さん:そうですね。元の名前に「チョッパー」があったので、それ以外をどう表現するか悩みました。変にごちゃごちゃさせてもわかりづらいから、引っ張ったときの「ぶんぶん」がちょうどいいんじゃないかなって。
 
―でも、たとえば「引っ張りチョッパー」とかどうですか?
宗さん:“引っ張り”も僕の中で浮かびましたが、あまりにもベタじゃないですか(笑)。ちょっとどんくさそうでダサい、それでいて可愛げがあってわかりやすい、そんな名前がいいなと思っていたんです。

宗さん「僕もいろいろ考えたけど、やっぱり“ぶんぶん”が一番ですね」

―正攻法で「みじん切りチョッパー」とかはどうでしょう?
宗さん:僕ね、「みじん切り」というワードだけは絶対に付けたくなかったんですよ。
 
―え!?みじん切りができる商品なのに?
宗さん:「みじん切り」とつけちゃうと、「みじん切りの機械なんだ」と先入観がついちゃうじゃないですか。「みじん切りは自分でやるからいいわ」と思ったら、手に取ってもらえなくなりますよね。
 
―つまり、商品の可能性を名前で狭めてしまうと。
宗さん:そうです。今、ぶんぶんチョッパーはお子様の離乳食や介護現場の流動食作りなど、「みじん切り」以外の使い方でも活躍しています。そうやって新しい使い方、発売当初には思いもよらなかった未知の可能性があったのも、「ぶんぶんチョッパー」という名前だからだと思っています。使い方はお客様が決めていいし、名前で縛っちゃいけないなと。

―確かに「みじん切り」と聞くと、それだけのアイテムになってしまう。そこを限定しなかったからこそ、大ヒットに繋がっていったんですね。


●名前が決まった。しかし、まだ販売はできなかった

―「ぶんぶんチョッパー」という名前も決まり、ついに販売で……
宗さん:いえ、それがまだなんですよ。
 
―え、まだなんですか?
宗さん:実は、「ぶんぶんチョッパー」の商標申請が、これがまたひと苦労で。
 
―どうしてですか?
宗さん:
「チョッパー」はすでに申請があり、「ぶんぶん」の商標取得ができなかったんです。ほら、「ぶんぶん」ってハチが飛ぶ擬音語でもありますよね。珍しい言葉ではなく、一般的に使われる言葉なので申請はできないと。

―言われてみれば確かに……。
宗さん:
商標は2回申請が却下されてしまうと、その後は裁判所で第三者の介入が必要になります。僕はどうしても「ぶんぶんチョッパー」がよかったので、その重要性を力説し、なんとか商標を取得しました。……1年半かかりましたけどね。
 
―い、1年半!?
宗さん:
そう(笑)。だけど、それでも妥協できなかったんです。ですが、おかげでSNSやオンラインショップの口コミ、レビューでこの「ぶんぶんチョッパー」という名前が徐々に広がっていきました。


●職人気質の宗さんが、こだわり続ける改良

―これまで容量の大きな「ぶんぶんチョッパーDX」や、5枚刃の「ぶんぶんチョッパー5」とバージョンアップしたぶんぶんチョッパーを出されていますよね。

有限会社ケイ・アンド・エー社内には歴代のぶんぶんチョッパーが並ぶ。

宗さん:僕らはオンラインショップの口コミやSNSを見て、「もう少し容量を大きくしてほしい」「ここが使いづらい」といったお客様の声を拾い上げながら改良しています。
 
たとえば最初の改良は、蓋についている「水切り穴」。ここに水切り穴があることで蓋の中までしっかり乾き、衛生的なんです。

宗さん:ボウルと刃は分解できても、蓋の中まで分解して洗えないので困る、との声から水切り穴を付けました。
 
―うおお……!確かにこの穴があることで蓋の中の水分までちゃんと乾かせます!
宗さん:また、発売当初は紐を極限まで引っ張ると中で部品の嚙み合わせが悪くなり、ロックがかかってしまい紐が戻らなくなる不良がありました。こうした不良は、自分たちで原因を突き止めたあと、中国に渡り製造の方と話をして改良してもらいます。

―宗さんたちが調べるんですか?
宗さん:
はい。これが2つ目の苦労です。というのも、中国は「壊れたら新しいモノを買えばいい」という消費の価値観なので、ただ単に「壊れるから直して!」だとなかなか伝わりにくい。
 
彼らには彼らの文化圏があるので、「ここがこういうふうになっていて、こうなると困る人がいるから直してほしい」と具体的な原因と直して欲しい改良部分を説明するために、自分でサンプルを作って話すようにしています。
 
―販売を専門にしている会社がサンプルを自分で作って持っていくことってあるんですか?
宗さん:あんまりないでしょうね。でも、見た目にはわからないミリ単位での補正もしたくて。そうなると自分で作り、持っていった方が早いんです。

―どうしてそれほどまで、細かな部分にこだわるのでしょうか?
宗さん:
僕自身の性分ですかね。かつて自動車の整備士をしていた経験も生きていて、原因を突き止めるのも苦じゃないし、やっていて楽しいんです。これでもっと良い商品ができるぞ!って(笑)。
 
―そう思うと、ぶんぶんチョッパーはこれからも進化し続けるのでしょうか。
宗さん:
はい、もちろんです。お客様の声を拾いながら、より良くできる改良があれば積極的に進めていきます。ここで終わりと思ったら、そこが限界になりますから。次は、片手で操作できるぶんぶんチョッパーを開発したいと思っています。


●あなたの「笑顔がみたい」。そのために、ぶんぶんチョッパーは進化を続ける

―ぶんぶんチョッパーに、これほど宗さんの想いがこもっていたとは知りませんでした。
宗さん:
実は、ぶんぶんチョッパーのパッケージには僕らの理念でもある「笑顔がみたい」という言葉を載せています。

モットーは、パッケージの右上に発売当初から記載。

宗さん:実際、「子どもがぶんぶんチョッパーで料理を手伝うようになった」という声や、料理が苦手な人が「ぶんぶんチョッパーのおかげでハンバーグを作るのが楽しい」という声を聞くと本当に嬉しい。握力が弱まり包丁を握れなくなってしまった方が、ぶんぶんチョッパーで料理を楽しんでくれていることを知ったときは、感慨深かったですね。
 
―そういった思いが、ぶんぶんチョッパー作りを支えているのですね。 
宗さん:
僕は、料理の楽しさを誰にも諦めて欲しくないんです。ハンバーグとか餃子とかコロッケとか、みんなが好きなものにはみじん切りがつきものです。そこで、ぶんぶんチョッパーが力になれたらいいなと思っています。 
 
―私もハンバーグが大好きなので、本当に感謝がつきません。宗さんは、はたらく上で大切にされていることはありますか?
宗さん:
やっぱり、自分の仕事で誰かに喜んでもらうことですね。それから、自分がする仕事にきちんと納得感を持っていたいと思っています。「自分がなぜ今これをしているのか」を理解したうえではたらくとしたら起業だなと思い立ち、「感謝」と「愛情」の頭文字をとってこの会社を創業しました。

―そんな情熱と思いやりを持った宗さん、「ぶんぶんチョッパーを日本の家庭へ届けてくださってありがとうございます!」

とお礼と共にカードをお渡し。 
「これ会社に飾っておこうかな」と笑顔で受け取ってくださった。 


▼結論とまとめ
「みじん切り」に革命を起こしたぶんぶんチョッパーは、名前や細部に至るまで並々ならぬ愛情が詰まっていた。
 
・ぶんぶんチョッパーを開発したのは、福岡県北九州市の有限会社ケイ・アンド・エー。
・中国の大規模な展示会で、ぶんぶんチョッパーの原型を見つけたことからスタート。
・「ぶんぶんチョッパー」という名前に命を懸け、商標を獲得するまでに1年半かかった。
・「みじん切り」と役割を制限しなかったからこそ、多様な使い方が生まれた。
・お客様の声を拾い、これからも進化は続く。
・お子様、料理が苦手な人、忙しい主婦、包丁が握れない方など、多くの家庭の味方に。
・宗さんは「笑顔をみたい」が、はたらく上でのモットー。


■宗さんのお話を聞いて

「神は細部に宿る」というが、その神髄を見させていただいた。わずか数ミリ、わずか数グラム、わずか1枚の刃、そして何気なく口にする名前……私たちが「何となく便利だな」と使っているアイテムには、小さな、だけども確かな誰かの努力が積み重なっていることを実感した。
 
特に料理は、“衣食住“というほど生活に密着している、私たちが生きる上で欠かせない営みの1つ。年齢、性別、暮らし方、ハンディキャップの有無など多様な人がいるからこそ、こうしたアイテムのおかげで料理を楽しいと思える人がきっと増えていく。
 
ぶんぶんチョッパーがあれば、家族と過ごす団らんの時間がちょっと確保できたり、諦めていた料理に挑戦してみたり、子どもが使うことで食育にも繋がったり。「みじん切り」以上の可能性と価値がこの商品には込められていると教えてもらった。
 
「口コミやSNSの反響も嬉しいのですが、こうして直接伝えにきてくださると本当に嬉しいですね」と宗さんも仰っていたように、普段から「ありがたいな」と思っている商品やサービスにお礼を届けると、それをとりまくドラマに出会えるかもしれない。
 
そういう仕事にスポットライトを当て声を届けていくためにも、もし今後も、お礼を言いたいナイスな仕事を見つけたら勤労感謝の日に限らず、投稿してみてほしい。
 
最後にはなりますが、取材にご協力いただいたみなさま、
#で投稿してくださったみなさま 、ありがとうございました!
 
文:「#これ誰にお礼言ったらいいですか」プロジェクト事務局メンバー

「#これ誰にお礼言ったらいいですか」プロジェクトサイトはこちら

■「#これ誰にお礼言ったらいいですか展」 無事終了しました!

ぶんぶんチョッパーはじめ、約600人から集めたお礼とその先の本人のエピソードを集め、展示する「#これ誰にお礼言ったらいいですか展」を開催しました! 
勤労感謝の日は、一年でいちばんいい仕事への光が当たる日になりますように。 
 
詳細はこちら▼ 
開催期間:2024年11月22日(金)~24(日) 
開催時間:11/22(金)12:00~19:00 
11/23(土)10:00~19:00 
11/24(日)10:00~17:00 
会場:MIL GALLERY JINGUMAE (ミルギャラリー神宮前) 
住所:東京都渋谷区神宮前4-25-28 Google Map 
アクセス:東京メトロ 明治神宮前駅 徒歩3分/表参道駅 徒歩7分 
JR 原宿駅 徒歩8分 
入場料:無料 
 
(終わり)