ペルシアのパンの話(中編)
いつも焼きたてのおいしいパンが欠かせないペルシアの食卓には、キャバーブや煮込み料理とご飯という献立の時でも、ちゃんとパンが並んでいます。
パン好きな人たちがとにかくパンをよく食べることといったら!特にパン好きなことで知られているイラン西北のアゼルバイジャン地方の人たちはスパゲッティやご飯までパンに挟んで食べていたりとか(!)焼きそばパンやラーメンライスのような感覚なのかもしれないけれど、何が出されても、「お腹が一杯になるようにパンと一緒に食べよう」というフレーズをよく聞くし、本当に何でもサンドイッチにして食べるので、ついつい可笑しくなってしまうのです。
サンドイッチといえば、タブリーズからテヘランに行く飛行機でこんな思い出が。
私の隣にはパイロットの5歳の息子さんが1人で座っていたのだけれど、初めての飛行機だったのか緊張気味で、私や周りの大人たちの世話焼きもものともしないで、じっと前を向いて座っていました。
夕食が出されてもしばらくそのまま座っていたので、大丈夫かな?とちらちらと様子を窺っていたのだけれど、しばらくすると、まずトレイの上にナプキンを敷いて、その上にパンやハム、チーズやサラダなどをきれいに並べてから、今度はパンの上に全部のせて、ケチャップもかけて、サンドイッチにしてから、なんとも満足そうに食べ始めたのです(!)なんとも独立心旺盛でかわいらしい光景だったし、飛行機の機内食をこんなにきちんと満足そうに食べているのも印象的で、機内食でもサンドイッチ!と微笑んでしまった光景でした。
そうそう、パンにまつわる習慣でもうひとつ面白いのが、パンを買って帰る人は途中で会った人に焼きたてのパンを少し分けてあげる、というものです。
パンを買う時は、一抱えほどのパンを何枚もそのまま両手で抱えて帰るのだけれど、途中で知り合いに会うと、挨拶してから必ずパンを勧めるし、知り合いじゃなくても、目があってサラーム!と挨拶すると、パンを勧めてくれるのです。ほとんどのパンは政府の助成のため、ごくごく安いので、たぶん帰り道で会った人みなにあげても大した負担にはならないと思うのだけれど、街角でこういう親しげな挨拶を交わしている人たちを見ると、なかなかいい光景だなぁと思わずにいられません。
食事時の街角で小腹を空かせてしまっても、パンのお裾分けに事欠かない国だから、街歩きも余計に楽しいのです。(続く)
(Copyright Tomoko Shimoyama 2019)