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院内見聞録 さよならスラッシュ②  初めての白内障手術

(前回までのあらすじ)
コンタクトが合わなくなったので老眼かと思ったら、核白内障によって近眼が進んでいたことが発覚。占いによって10月の手術がよいことが分かったので、眼科を探しつつ紹介状を書いてもらう。


というわけで、9月14日に紹介状を持ってあたりをつけていた眼科に行った。しかし直近で手術できる日が10月28日(ギリギリセーフ!)そして片眼ずつの手術なので、もう片方は11月11日にすることになった。4年前なのになぜこんな具体的な日付が分かるかというと、家計簿ソフトをさかのぼって調べているからである。

手術前の血液検査やらなんやかんやあって(そのころに植本一子の本で限度額適用認定証のことを知った。こちらを参照のこと)いよいよ手術当日である。歩けないことはないが自転車で行きたい距離ではあるが、手術後に自転車に乗るのは危険な気がしたので歩いて行く。確か午後3時ぐらいまだ外が明るい時刻の予約だった気がする。

病院に着くと瞳孔を開くための目薬を差され、30分ほど待機。視界がぼんやりしたころに前室みたいな小部屋に呼ばれる。ここでは麻酔の目薬を差される。「ちょっと沁みますよ~」と言われたが、ちょっとで想像した3倍は沁みた。ちなみに結果的には手術全部の工程でこの麻酔が一番痛かった。そうこうするうちに手術室に呼ばれる。最初に手術するのは左目だ。左目はさらに近眼が進み、確か度数最大のマイナス20度のコンタクトをつけるようになっていた。(たぶん、というのもよく覚えていない。だって、こういうことは家計簿見ても書いてないから)

左目の部分だけが開いた巨大な絆創膏みたいな何かで、顔の上半分を覆われた状態で手術用の椅子に座らされた。目の手術をすると聞いたときに想像する一番の恐怖はメスが自分の目に向かって来るのが見えることではないだろうか。以前にも書いたが、血がピューピュー吹き出しているのを見るのは平気だが、すーっと切られた皮膚からたらりと血が出てくるのはお腹の辺りがゾワッとする。だから「アンダルシアの犬」の剃刀で眼球が切られる有名なシーンでは、体がモゾモゾしてまっすぐに保っておけない。メスが迫ってきたらルドビコ療法を受けるアレックスみたいになるんじゃないかしら。

が、座ってみてすべてが杞憂だと分かった。なんせ、ド近眼である。しかも瞳孔が開いているから、さらに視界がぼやけている。まあ、何も見えませんな。先生が上のライトを見るように言う。ライトが3つあるのでどれを見ればいいのかと聞くと、ライトは1つしかないらしい。つまりそれぐらい見えないから心配はいらない。

手術が始まった。瞬きできないように何らかの固定がされていたので乾燥しないように人工涙のような液体が随時注がれている。瞬間瞬間に形を変える幾何学模様のような、水紋のような、マーブル模様のような、まあ、そんな感じの模様がキレイね~なんて思っていたら急に視界が黄色っぽくなった。あ、血が混ざったんだなと思った。何かを切ったりレーザーを当ててるような音は聞こえるが痛みは感じない。

と思っていたら、水晶体が取り出されたのだろうか、瞬時にして目の前が真っ暗になった。そうか、目が暗くなるから“めくら”って言うんだなと体で理解した瞬間である。何となく水晶体とレンズを入れ替えるときも光だけは感じられるものだと勝手に思っていた。さにあらず。そして新しいレンズが入れられると再び光を取り戻したのである。新しいレンズが入ったとたんによく見えるようになり、さっきまで3つだったライトも確かに1つしかなかった。

埃が入らないようにと買わされたゴーグルをつけて病院を出ると外はすっかり暗くなっていた。これからしばらくは左右の視力差が大きいから、右目だけコンタクトをつけなければいけないだろう。今はコンタクトをしていないが、いきなりよく見えるようになった左目のおかげで特に問題はなさそう。ゆっくり歩きながら帰る道すがら、ゴーグルの上から片眼ずつ隠して見え方を確認する。左目、よく見える。右目、よく見えない。そんなことを繰り返していると街灯の見え方に違和感がある。周りが暗い中、街灯や看板などの光源を見るとスラッシュのような光の筋が入っている。同じように片眼ずつ確認すると、左目、入ってる。右目、入ってない。

こうしてわたしは夜になると光のスラッシュを持つようになったのである。

写真とは角度が逆だけどスラッシュのように右上から左下に向かってこのような線が入る

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