院内見聞録 さよならスラッシュ③ 老眼鏡を作り直す
(前回までのあらすじ)
コンタクトの度数が合わなくなったので老眼が進んだと思いきや、白内障のせいでむしろ近眼が進んでいたことが発覚。てんやわんやしたけど無事に左目の白内障の手術は終わったが、暗い所で光源を見るとスラッシュのような光の筋が入って見えるようになった。
それから2週間後、同じように右目も手術すると、今度はスラッシュではなく一文字に光の筋が入るようになった。暗い道を歩きながら右目、左目とかわるがわる手で覆いながら街灯を見ると、スラッシュ、一文字、スラッシュ、一文字と光の筋が見える。一体これはどういう現象なのだろうか、と何でも知りたがるわたしはもちろん眼科の先生に質問してみたが「炎症もないし、濁りもないし、手術は成功してます」とまるでわたしがクレームをつけた人みたいな扱いをされて終わった。先生、ちゃうねんて。別にクレームつけてるわけちゃうねん。ふしぎな現象だから、なんでこうなるのか知りたかっただけやねん。と毎回眼科ではこのような扱いをされるのに、のど元過ぎればつい忘れて質問してしまうのであった。
ところで白内障手術で入れる眼内レンズには単焦点のものと多焦点のものがある。そして単焦点は保険がきくが、多焦点はきかないので単焦点一択だ。問題はどこに焦点を合わすかで、わたしはそれまでド近眼だったから、もし、寝ているときに東京で直下型地震が起きたら初動が遅れるのは間違いない。、メガネがなくてもすぐに動ける体のほうが便利そうという理由から遠くに合わせてもらう。こうしてわたしは裸眼で映画を見に行けるようになったのだが、遠くにピントが合っているということは、すなわち近い場所は見えない。かくして日中の(いや、夜もか)ほとんどの時間をパソコンの前で過ごしているわたしは老眼鏡が必需となった。最初、眼科で出してもらった処方箋で老眼鏡を作ったのだけど、安い店でレンズを入れたのでせっかく買ったお高いフレームの美しいアールがなくなってしまったので、結局別の店でレンズを入れなおすことにした。そして処方箋どおりだとどうもクリアに見えなかったので、メガネ屋さんで測りなおしてもらった。
測ってくれたのは感じがいい若い女の子。単に視力を測るだけかと思っていたら、レンズの上から何か(瞳?)からの長さや角度のようなものを測っては印をつけている。どうやら乱視に関係するものを測っているらしい。ちょっと待って。眼内レンズを入れたら乱視はなくなるんじゃなかったの? たいていはそうなのだが、残ってしまうこともあるのだと言われたので、思い切って暗いところで光源を見たときに入る光の筋のことを話してみた。左目が右上から左下へ斜めに、右目は一文字にと説明していると、突然向こうが「えーーーっ、乱視の角度と同じです」と言うではないか。こういう事象はわたし以外にも多くありそうなのに、誰も教えてくれなかった。そしてそこから2年の時が流れ、ついに光の筋は消えるのだった。(あともう1回続く)