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問題解決の本を読んでみた③-2

長らくお待たせしました。
前回、「なぜなぜ分析」の8つのポイントの③まで読みました。
とっても中途半端でしたが、今回は一気に「なぜなぜ分析」のポイントを紹介していきます。

④打ち止めになるまで掘り下げる

夢中で問題を掘り下げていると、どこまで掘り下げればいいのか、わからなくなります。
答えは「打ち止めになるまで」です。
「打ち止めになる」とは

  • それ以上どうしようもないばあい

  • たまたまやっていないだけ

  • 悪循環している

の、三つがあります。

都内のアミューズメントパークで客数が減少していることの原因分析を例に考えます。
←客数が減少している←客が来ようと思わない←交通の便が悪い←車で行きづらい←駐車スペースが少ない
「これで打ち止めかな」となんとなく思う。試しにもう少し掘り下げると
←地価が高い←東京だから
とどうしようもない話が出てくる。ここで打ち止めと考えることになります。

続いて、客が来ようと思わない を別の視点で掘り下げてみます。
←魅力をアピールしていない←広告投資をしていない←今まではしなくても大丈夫だった
これは、ただ単にやっていなかっただけなので、「ではやりましょう」となります。
今時、経営課題で「たまたまやっていないだけ」の原因がみつかることは滅多にありません。簡単に効果的な対策が取れるので、みつけたらすぐやりましょう。

客が来ようと思わない をさらに別の視点で考えてみます。
←イベントに魅力を感じない←イベントが盛り上がっていない←客数が減少している
元の問題に戻ってしまい、グルグルと悪循環してしまいます。
悪循環は手を打つことが難しいですが、客が少し増えるだけで好循環に移行する可能性もあるので、別のところから手を打つことを検討しましょう。

⑤もれなく幅広く可能性を考える

これまでは深く掘り下げることを考えてきましたが、原因分析は一本道では新たなアイディアが見えないことが多いので、広く掘り下げることも必要です。
もれなく幅広く原因を上げる洗い出すための考え方が問題解決の本に載っているので、紹介します。

  1. MECE 対立概念で分ける
    WHEREでも出てきましたね!対で一つになった相反する概念を指します。例えば、新製品と既存製品で売上高を分けたり、コストを材料費と労務費と経費と間接費に分けたりします。

  2. LISS 数式や概念で因数分解するLISSとは、一次独立した空間集合という意味です。「かけ算」で「もれなくダブりなく」なっているか考えます。例えば売上高を「市場数量×数量シェア×自社単価」と仮定して計算します。売上高のようにちゃんと数式になっているものだけでなく、組織力を「人数×スキル×やる気」など、概念の式に分けることもできます。

  3. プロセスで分解する物事の流れに着目して分けます。お店のお客様の話なら、店を認識して、入店して、着席して、注文して、飲食して、支払うところまでが流れですね。加工品の話なら、機材準備して、材料をセットして、裁断して、プレス加工して、他工場に搬送して、塗装仕上げをするといった流れになるかもしれません。原因分析の元祖「トヨタ生産方式」では、WHEREの後、必ず「プロセス分解」してからWHYの検討に入るルールになっています。

  4. 既存フレームワークで分ける ここまでは新しいアイディアを出す基盤でしたが、うっかり見落としがないよう、業界の既存のフレームワークで紋切り型に原因分析を見直すこともやりましょう。例えば、マーケティングの4P product、price、place、promotion、ものづくりの4M man、machine、material、method、ヒトモノカネやQCDなど、慣れた切り口を使いましょう。

⑥事実で確認する

次は、正しさに着目していきます。
出てきた原因と思われることが本当なのか「本当?本当?」と事実確認をしていきます。
方法としては、現場にヒアリングしたり、データを調査したりします。
場合によっては現地を視察して、様子を見たりします。

昔、私は「社長が来ているので、応接室のある建屋に近付かないように」と言われて、デスクで大人しくしていたのですが、ふと上着を取りに行ったら、ハンガーの間から社長が出てきて腰を抜かしたことがあります。
色々悪い噂の絶えない社長でしたが、実は現場主義の良い経営者だったのではと個人的に思っています。

掘り下げた原因が事実か確認せずに解決策の検討に入ってしまうと、大きな間違いに繋がってしまうことがあるので、注意しましょう。
例えば、アミューズメントパークの例で駐車スペースが少ないという原因があったので、駐車スペースを増やす対策を取ったとします。
しかし、その後のアンケートの結果「アトラクションがつまらない」という意見が多いという事実が判明すると、投資が無駄になってしまいます。

とはいえ、全ての可能性について事実確認するのは大変です。
膨大な作業量と時間が必要になります。
そのため、原因の掘り下げを始める時点では全ての事実を把握しなくても構いません。反対に事実をよく知るばかりに視野が狭くなって本当の原因を見落としてしまうこともあるので、推測も含めて幅広く原因の可能性を考えましょう。そして後から事実確認をするのが効率の良い進め方のコツになります。

トヨタ生産方式では、現地、現物、現場を三現主義と呼んで大切にしています。

⑦正しい日本語で掘り下げる

正しく分析するために、曖昧な表現を避けて因果の構成図を描きましょう。
曖昧な表現によって、思わぬ方向に掘り進んでしまうことを防ぎます。
例えば「魅力」という言葉は曖昧なので、何の魅力かで分解すると曖昧さが解消できます。
また、客数の「減少」について原因に「駐車スペースが少ない」という理由は不適切です。「駐車スペースが少なくなった」と記載し、原因の掘り下げをさらに進めましょう。

⑧自分を主語として掘り下げる

そして最後に一番大切なことです。
それは「自責」を意識するということです。

  • 厳しい市場環境だから仕方ない

  • お客様の状況が変わったからやむを得ない

  • 競合他社の営業力が強すぎて太刀打ちできない

  • 部下が成長してくれないからチームの成果が上がらない

などと原因を自分以外の責任にしてしまうことは、誰しもやってしまうことです。
「自分は悪くない!環境や周りの人が悪いんだ」と考えていると、課題は国家レベルの解決策や他社の成功事例の考察に移行してしまい、自分達でできることがみつかりません。
自分を主語にすることで、自分達でできることがみつかるのです。

「少子高齢化が進んでいる」という理由が出てきたら、「自社が子供やシルバー層を呼び込めていない」という原因に立ち返りましょう。そうすれば、託児施設やバリアフリーについて考えることができます。
「競合他社が新しいアトラクションを始めた」という理由は打ち止めになってしまいますが、「自社が新しいアトラクションでA社に出遅れた」と表現すれば、自社の問題が浮き上がってきます。

問題解決は、「原因を掘り下げ、対策を打ち、問題の再発を防止し、事態を好転させる」ことが目的です。
対策できるのは自分達だけなのです。
自責の意識が高い人ほど、自分の責任として、深く問題を掘り下げ、真の原因にたどりつけてきています。
そのようにして、効果の高い対策をうち、成果を挙げているのです。

ふりかえり

「なぜなぜ分析」のポイントは8つありました。

  1. WHEREで絞り込んだ問題から掘り下げる

  2. なぜを繰り返す

  3. 論理の飛躍に気を付ける

  4. 打ち止めになるまで掘り下げる

  5. もれなく幅広く可能性を考える

  6. 事実で確認する

  7. 正しい日本語で掘り下げる

  8. 自分を主語にする

この「なぜなぜ分析」は個人でもできることなので、生活に取り入れるのも良いです。考えが混乱したら、諦めたり暴力に走ったりする前にペンを持つと良いですよ。

おまけ

問題解決の本はマネジメントの本なので「企業の経営課題」を検討する上でのコツが記載されています。

企業経営の結果は何と言っても利益です。
そのためWHEREは利益・売上高・コストといった財務的数値になります。
利益や売上高には顧客の動向が直接原因になります。顧客は製品やサービスを購入するのであり、それを生み出すのは業務、それを作り出すのはリソースであり、それを管理する組織となります。組織の課題には風土や戦略といったものが大きく影響します。
企業の経営課題の根本は戦略や風土に行き着く。
これを念頭に原因分析をしてみてください。

参考文献

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