空を見上げて平和を祈った夜のシュークリーム
8月15日。終戦記念日だ。
私の住む東京都大田区は昔から毎年この日に花火が打ち上がる。
しかしながらコロナ禍やら天気の状態のせいでずっと中止されていて、今年6年ぶりに花火大会が行われた。
とは言っても、私がこの都市に住み始めたのはほんの5年ほど前のことなので、実は花火を見るのは今回が初めてのことだった。
今年もイベント自体は決定していたが、台風の影響でギリギリまで開催されるかどうかは発表されなかった。
当日のお昼の12時。
無事に開催されることが大田区から発表された。
せっかくだから観に行ってみようか。と夫と相談をして観に行くことにした。
時間が近付き、最寄りの駅近くまで出たのだが、人の多さや熱気や暑さで軽いパニック発作を起こしてしまった。
残念だが、この状態では会場にはとても行けそうにない。
「うちの実家からなら遠目だけど見えると思う。」
夫がそう提案して、お義母さんにすぐに連絡をしてくれた。
やはり、夫の実家からなら見えるとのことで、ビアードパパのシュークリームをお土産に夫の実家で鑑賞させてもらうことに。
一緒にどうですか?と誘ったのだが、お義父さんとお義母さんはテレビの中継で見るから大丈夫よ、と。
残念だけど、暑いからね。
ベランダに出ると夜風は意外にも涼しく穏やかで、あんなに辛かった体調も嘘のように引いていった。
十数年ぶりに購入したビアードパパのシュークリームを頬張りながら打ち上げを待った。
シュークリームなんて、ここ最近はコンビニかスーパーでしか買うことがなかったので、しんなりとした皮に甘ったるいクリームが詰まっているものばかりがシュークリームなのだと擦り込まれていた。
しかしながら、一口食べてびっくり。
サクッとしたシュー生地、皮の旨味を味わえるくらいの甘さ控えめなクリームが、優しいハーモニーを口の中で作り上げた。
丸々ひとつ食べても胃が重くならないシュークリームは久しぶりだった。
あれ?こんなに美味しかったっけ…。
そんなことをアレやコレやと考えていたら、夜空に大きな花が咲いた。
立派な花だった。
夫と共に綺麗だね。と見ていたら、外にお義父さんとお義母さんも出てきた。
4人で夜空を見上げる。
言葉数こそ少ないが、同じ空を見上げて、同じ時間を共有していることがとても嬉しかった。
結婚して初めての夏。
夏の終わりに思いがけず素敵な思い出を重ねることができた。
夜空に大きく打ち上げられた花火に平和を祈る。
どうかこの先も、こんな風に温かくて穏やかな幸せが続いていきますように。
平和を祈りながら、残りのシュークリームを食べる。
暑さでゆるくなったクリームがたらりと垂れるのをすくい取って口にする。
何故だかさっきより甘く感じた。
私はきっとビアードパパのシュークリームを食べるたびに、この日のことを思い出すのでしょう。
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