#あの花が咲く頃には

■登場人物

〇〇:28歳

大手広告代理店を経て、秋元康に可能性を見出され、海外プロモーターとして乃木坂LLCのCMOに着任。

衛藤美彩:26歳

生田絵梨花:22歳

橋本奈々未:26歳

秋元真夏:25歳

松村沙友里:26歳

桜井玲香:25歳

■目次

第1章 #乃木坂に変革をもたらす者

第2章 #思わぬ激励

第3章 #新たなるスタート

第4章 #覚悟

第5章 #思いやる心

第1章 #乃木坂に変革をもたらす者

2019年1月ある日の午後、乃木坂メンバーは秋元康に集められていた。

康 みんな、聞いてほしい。今日から乃木坂のプロモーターとして入社した〇〇くんだ。PR全てに関わる重要な人間になるから、みんな、よろしく。

〇 皆さんはじめまして。今日からお世話になる〇〇と言います。年齢は28歳です。宜しくお願いします。

この人間の入社により、乃木坂46やメンバーたちは大きく変化していくこととなる。その様を描いた、物語である。

〇 簡単に自己紹介させてください。これまで大手総合広告代理店におり、これからは乃木坂の海外のプロモーションを中心にプロモーション全般を担当することとなりました。出身は生田と同じドイツのデュッセルドルフ、過去NYC、韓国にも住んでました。そのため英語ドイツ語韓国語は話せます。乃木坂を盛り上げるために頑張るので、どうぞよろしく。

一同 よろしくお願いします!

(松村 ドキッ かっこええ…)

松村は胸が高鳴っていた。何とも言えない感情と衝動が襲った。

◯ 早速だけど、NYC公演が決まった。日程は再来月。その準備に早急に取り掛かるので、各自指示に従うように。以上!

一同 え…?

康 うん、そういうことだ。早速◯◯くんは仕事をしてくれたよ。みんな、初めての経験だけど頑張りましょう。

全員がざわつく。突然のことに誰しもが戸惑いを隠せない。

桜井が切り出した。

桜 うん、みんなで頑張ろう!(キャプテンとしてここはしっかりしなきゃ…!)

◯ …

そこから急展開でNYC公演に向けた準備に見舞われた。

モデルやテレビ、ラジオ、その他撮影などのスケジュール調整、セットリストの調整や主張手配など、関係者総出で事を進めた。

ある日、◯◯に全員呼び出された。

乃木坂工事中の撮影後だ。

◯ 本件は秋元さんから一任されているため、僕の方から発表をする。NYC公演が終わった後、ドイツ、台湾、そして韓国での公演が決まった。長丁場になるが、乃木坂初のワールドツアーデビュー戦となった。

少々スケジュール的にはタイトだが、それぞれの国の文化に合わせて舞台環境など多少変えるので、この要項を各自熟読しておくこと。もしわからない点などあればいつでも相談してほしい。

初めてのワールドツアーで戸惑う事も多々あると思う。みんなのメンタルケアも喜んでやりたい。何かあったら何でも言ってくれ。

? …はい。

橋本が手を挙げた。

橋 こんな急にいろいろ言われてもみんな心身ともについていけるか…

◯ ごもっともだ。そう思ってるメンバーは他にもいるか?

桜井を除く全員が手を挙げた。

◯ 桜井は大丈夫なのか?

桜 いや…そりゃびっくりはしているんですが…もう決まった事なのであれば、キャプテンとしてしっかりしなきゃなと…

◯◯はにっこり笑った。

◯ さすがキャプテンだな。その心意気や良し。ただ、みんなの想いは当然だと思う。1つだけ約束しよう。ただその前に一つだけ聞いておきたい。

…やりたくない者はいるか?

一同 …

誰も手を挙げず、場は静まり返った。

◯ …一つだけ約束しよう。

一同は◯◯を見つめた。

◯ 何があっても俺が成功させる。時差や個々人の言語以外の障壁は全て解消する。何不自由なく、楽しかったと言わせる結果を導き出そう。

そのために一個お願いがある。

一同 …

◯◯はにっこりと笑った。

◯ 心から全力で楽しむ心の準備だけしておいてほしい。

◯◯の自信は顔から滲み出ており、人を説得させるには充分だった。それに影響され全員が全員、自然と安堵の表情へと変わった。

そこで桜井が前に出た。

桜 みんな、アレやろ!円陣!

全員が円になる。

桜 いきなりたくさん決まっちゃったけど、私たちは私たちらしく、全力で楽しみましょう!

 笑顔!感謝!努力!うちら乃木坂登り坂!46!

テンションが高揚していく者が増え、ざわつきながらも各自マネージャーと相談し、スケジュール調整などを行なった。

場が静まり各自解散となった後、◯◯は橋本に声をかけた。

◯ …橋本。

橋 はい。

◯ さっきはありがとう。橋本が言ってくれなきゃ玲香は前に出てくれなかったし、みんなの心は一つにならなかったよ。

橋本は驚いた。不満を言ったつもりが感謝をされることに。そして橋本はその時◯◯の思慮深さにも気付いた。

橋 いえ、とんでもないです…

◯◯はにっこりと微笑みかけ、体調管理をしっかりするように告げた。

橋 (私たちのこともよく知ってくれてるのかな…?)

そして時は移ろい舞台はNYC。

成田空港から約1日かけて空を飛び、一向が宿舎に到着した。

橋 玲香、今更になったけど、あの時前に出て仕切ってくれてありがと。

玲 いやいやななみんが言ってくれなきゃ前に出れなかったよ〜

あのおかげで、大変だったけど準備は万端だね!

橋本はあの時の◯◯の表情や言動を思い出していた。

そして当日。

極度の不安や緊張を抱える中、◯◯は全員を集めてこう言った。

◯ さぁついに本番だ。みんな、今日まで準備お疲れ様。あとはやりきるだけ…と、言ってもあんま意味ないと思ってるから、一個だけ。玲香、俺が最初になんて言ったか覚えてるか?

玲 楽しめ…ですか?

◯ 違う。

玲 え?

◯ 心から全力で楽しめ、だ。失敗してもいい、コケてもいい、歌詞間違えてもいい。心から楽しかったと思えるパフォーマンスをしてきなさい。ファンのため、何より自分のために。わかった?

一同 …はい!!

2019年3月のNYC、世界中の高貴な文化が集うこの都市の中心に乃木坂はいた。

曲を全体的にモダンなジャズ風な曲調に変え、ジャズテイストな振り付けや編曲を行なった。しかし、あくまでアイドルグループであるということは変えず、その一面も存分に発揮させた。

そして、コンサートが終わる頃…

拍手喝采、スタンディングオーベーションの嵐だった。

会場は"Nogizaka!"とこだまし、沸いた。

大成功だった。

公演終了後、控え室にメンバーは揃っていた。

それぞれ疲労を浮かべた表情をしていた。

そこに、◯◯が来た。

◯ みんな、一瞬いいか?

一同はすぐに集合した。

◯ …はぁ。

突如深く大きい溜息をする◯◯に緊張が走る面々。

◯ 歌詞は間違えるし、誰かはコケちゃいけないところでコケるし、誰かは音程外すし、列間違えて踊ってる者もいた。散々だったな。

一同の表情が急に曇る。

◯ ただ…最高の公演だった。今までDVDや入社前に直接観たどの公演よりも最高だった。

全員驚き、そして泣き始める者もいた。

◯ 怖かったよな。不安だったよな。緊張したよな。でも、みんな、乗り越えたな?それが全てだ。乃木坂という日本を代表するアーティストは、世界で受け入れられたんだ。過去の固定観念をぶち破ったんだ。これ以上に最高なことはないだろう?たった1日1公演しかないチャンスを、モノにした。それが今の乃木坂の実力だ。誇っていい。自信を持っていい。今日は全員がMVPだ。お疲れ様でした。

そこから抱き合う者、ひたすら涙を流す者、笑う者、それぞれがそれぞれの感情を爆発させた。

◯ 今日は打ち上げだ!宿舎に戻って準備が出来たらみんなで楽しく食べよう!成人メンバーは飲酒も許可する!

その後宿舎に戻り、各自打ち上げに向け準備をしていた。

たまたま同室だった松村、橋本、衛藤。

松 ほんま◯◯さんすごいな〜ほんまに成功させてもうたし…

衛 ね、ほんとにすごいよね。

松 私、◯◯さんを見てると過去なかったくらい胸がドキドキしてまうんよね…

橋 え?

松 いや、ちゃうねん、いや、ちがくないねんけど…う〜ん…

橋・衛 …

その後、無事公演の終了を祝しての打ち上げが開催され、皆美味しい食事やお酒を楽しんでいた。

疲れもあるため、乾杯後は程々に、各自宿舎に限定された自由行動が許可されていた。

あまりに疲労を抱えていたせいか、多くのメンバーが早々に部屋に戻り寝てしまっていた。もしくは部屋でメンバー同士で話すなど、疲れを癒すためにゆっくりしていた。

打ち上げ会場はそれなりに広く、テラスなどもついていた。

マネージャーなどスタッフ陣もその日は自由が許可されていたが、メンバー同様疲れも大きく自室で寝るなどしていた。

◯◯は会場外のテラスで1人飲んでいた。

そこに現れたのは…

橋本だ。

◯ おう、ななみじゃないか。お前は寝ないのか?

橋 まだあまり時差ボケが抜けてなくて…

◯ そうか。一杯飲んで行くか?

橋 …そうします。

その後は多少酔いも回り、公演中の話や◯◯が住んでいた頃のNYCの話、笑い話など、他愛のない話が膨らみ楽しんでいた。

橋本が話し始めた。

橋 本当に…成功させちゃうんですね。

◯ 絶対に成功させるって言ったろ?

橋 そうですけど…

◯ 立役者は俺じゃないよ。みんなが頑張ったから。それ以外にないよ。

橋 ◯◯さんってずるいですよね。

◯ え?

橋 そんなのかっこよすぎる。

◯ いやいや…本当は俺が一番不安なんだよ?ははは

橋 え?

橋本は驚いた顔で◯◯を見る。

◯ そりゃあな、責任とか不安でいっぱいだよ。まぁ俺がそんなんじゃだめだから一切言わないけど。

◯◯は酔いの助けもあってか珍しく饒舌だ。橋本とは2歳違いということもあり、つい本音が出てしまったのかもしれない。

そんなことを言う◯◯を想像出来なかった橋本は、意外な一面に驚いた。と、同時に◯◯を男性として見てしまっていた。

橋 …じゃあ、私が支えましょうか…?

◯ そうだな、1人でも多く支えてくれる人が多いに越したことはない。助かるよ。

橋 違うよ…

そう言って橋本は◯◯にキスをした。

◯ ななみ…!

橋本は自分でも自分のしたことに驚き、その場からすぐ去った。

◯◯は呆然と立ち尽くしていた。

? あ、玲香、私飲み物持ってくるね〜

玲 あ、真夏ありがと〜

真 うん、すぐ戻ってくるね〜

(えーっと、打ち上げ会場はこっちだったよね?あ、そうだこっちこっち… あれ?◯◯さんとななみんだ… 2人で飲んでるのか、私も混ざっちゃおうかな♪………え?今、ななみん◯◯さんに…キスした?!あ、出てくる、隠れなきゃ!)

バタバタ…

走り去る橋本を確認して、真夏は部屋に向かった。

すると今度は逆方向から松村の姿が。

松 あっ真夏だ〜!

真 あ…さゆりん…

松 ん〜?どしたん元気ないやん?

真 あ、いや、そんなことは…

松 なになに言うてみ?

真 実は…

松 え?それほんま?

真 うん…

松 それ、うち以外には誰にも言ったらあかんでる

真 そうだよね、ごめん、なんかびっくりしちゃって…

松 しゃーないよそれは。うちでも驚く!へへへ

ガチャッ

◯ おう、真夏と松村か。今日は早く寝ろよ。俺ももう疲れたから休むよ。

松 はい!あ、◯◯さん、今日の公演中のことで少し相談があるんですが、聞いてもらってもいいですか〜?

◯ そうか、わかった。じゃあ少し歩きながら話そう。

松 真夏、おやすみ〜!

◯ 真夏、おやすみ。

真 あ…はい、おやすみなさい…

真夏は飲み物を取り部屋へ戻った。

◯ どうしたんだ、相談なんて。何かあったか?

松 ◯◯さん言ってましたよね?私たちのメンタルケアもしてくれるって、公演前に。

◯ うん。

松 私…わからないんです。

◯ うん。

松 ◯◯さんを一目見てから、◯◯さんを見る度に胸がドキドキしてもうて…

◯ …え?

松 私…◯◯さんが好き。

せやから、ななみんとキスせんと今度私としてください。そしたらこれ誰にもも言わんで済ませてあげる。

◯ 松村…

松 したら私部屋戻りますね!

バタバタ…

松村は部屋へ戻った。

ピロン♪

橋本の携帯が鳴る。

〇 どうやら、さっき松村に見られていたみたいだ。できるだけ二人きりになることは避けよう。

橋 さゆりんはなんて?

〇 …私と今度キスしてくれたら、誰にも言わずに済ます、と。

橋 ごめん…でも松村もそんな言い方…

そうして波乱の芽を積んだまま、〇〇と生田は生まれ故郷であるデュッセルドルフに皆より先に前入りしていた。

生田の写真集撮影の現地視察も兼ねていたからだ。

初回の写真集もここで撮ったが、3冊目となり再度訪れることを決めた。

写真集のタイトルは、「3年後の私」

初回と全く同じ描写で撮影を行い、3年間でどんな変化があったかをストーリー調で撮ることが決まっていた。

〇 生田、ここは初回と同じそうだが、3年経ってみてどうだ?当時は、19歳か。

生 そうですね、、うーん。懐かしいです。笑 でも、改めて来ると、初心に帰れた気がして頑張ろうって思います。

〇 あれから、ミュージカルにドラマ、もはやアイドルよりも女優業の方が忙しいんじゃないか?

生 そうですね。

〇 これから先はあれだな。世界的なピアニストも兼ねるってのはどうだ?

生 え、、?

〇  もういろんな番組でピアノを披露しているのは知ってる。日本に帰国したら、コンサートに出てみよう。俺は、生田をただのピアノができるアイドル出身の女優で終わらせるつもりはない。一人でコンサートをやれるくらいの女優にしたいって思ってる。

生 えへへ、、でも、そうなれたらいいな~とは思います。小さい時からピアノをやってきて、たびたび披露させていただく機会もありますが、もっと研ぎ澄ましていきたいって思ってるんです。

〇〇は、照れながらも芯の強さが垣間見える生田を見て、感銘を受けた。

〇 スターだな…

生 え?なんですか?

〇 なんでもない。そうだ。日本に帰ったらとあるミュージカルの観劇に行かないか?きっと、とても刺激をうけると思う。

生 え!いいんですか!

〇 勿論。

いてっ!

生田が躓いて転びそうになる。

ガシッ

〇〇が生田の腕を掴む。

〇 しっかりしてるんだかしてないんだか。

生田 えへへ、、すみません。。

〇〇はこの時、生田絵梨花という人間に対し、人間として惹かれていた。

それなりの経歴を持った人間だという自覚もあったが、それ以上に惚れづらい性格をしていた〇〇にとっては珍しい感覚だった。

翌日になると、メンバーが到着し、その2日後に控えた公演に向けた準備のために奔走した。

NYCで一度成功させているからか、皆不安そうな表情はしていない。むしろ、自信に満ちた表情だ。

が、2人だけ明らかに様子がおかしかった。

松村と橋本は、部屋も同じ、飛行機の席も隣に関わらず、一言も話さなかった。

勘付いていたのは、真夏。何があったかはわからないが、なんとなく想像はできた。

その状況の中、公演。

ダンケシェーンやポピパッパパーなど、ドイツ人ウケするであろう曲を先に持ってきて、後半に表題曲を多めにするという構成。

それまた、拍手大喝采。

◯◯もドイツ公演が一番不安を抱える場所だったが、会場中の観客を魅了した。

このワールドツアーはスケジュールや予算の関係で1箇所1公演という構成だが、それが逆に希少性を出し、多少金額が高くとも満席完売、グッズも完売するという盛況ぶりだ。

橋本と松村も舞台上ではいつも通り、いやそれ以上のパフォーマンスだった。

大熱狂のうちに終わったドイツ公演。

その日もまた打ち上げが催された。

? ◯◯さん…

◯ どうした?真夏

真 今日この後少しお話できますか?

◯ もちろん。

真 ありがとうございます!また後ほど声掛けますね!

星野・齋藤飛鳥・和田など若いメンバーに急に囲まれる◯◯。

和 前から聞きたかったんですけど、◯◯さんって彼女いたりするんですか〜?

中学・高校生の頃先輩に群がる女子のような質問攻めに合う◯◯。

◯ いや、いないよ。

星 え、なんでですか〜?普通にいそうなのに。

◯ 今はみんなが彼女みたいなもんだからね。

飛 出た出た。そのパターン。そうやって隠そうとするから大人ってずるい!

◯ いやいや…

他愛のない話も束の間、皆部屋に戻っていた。

NYCの時同様、遊ぶ間も無く台湾公演に出発しなければならないため、会もほどほどに解散した。

すると、真夏か戻ってきた。

真 ◯◯さん!

◯ おう、どうした話って。

真 実は…

〇 うん。

真 … この間ななみんとのアレを見てしまったのは私なんてす。びっくりしすぎてすぐ会ったさゆりんには話しちゃったんです…それから、さゆりんとななみんの様子がおかしくて…どうしたらいいんだろうって…

?・? あ、真夏と◯◯さんまだ飲んでるんですかー??

そこに玲香と衛藤が現れた。

◯ お、2人とも大丈夫か?疲れは。

玲 当たり前ですよ〜キャプテンですよ〜?

衛 …とか言いながら富士山はリタイアしちゃったよね?

玲 あれは別ー!

テンションの高い2人に比べて神妙な面持ちを悟った衛藤。

衛 どうしたんですか?2人とも…元気ないですけど。

◯ いや、今後の公演のスケジュール感とみんなの疲れ具合について、真夏から相談を受けてたんだ。

◯◯は咄嗟に機転を利かせた。

玲 それ私の仕事ー!

◯ まぁそう言うな。それだけみんなのことを思ってる人間がいるってことだ。いいことだろう。

玲香は頭をぽんぽんっとされ、照れた。

玲 そ、そうですね…

衛 (ふーん…

◯ さて、今日はもう遅い。部屋に戻って寝ようか。

それぞれ部屋に戻る。途中で別れたはずの衛藤から声を掛けられる。

衛 ◯◯さん。

◯ あれ?さっき分かれたはずじゃ

衛 今度、日本に帰ったら飲みに行きません?日本で美味しい焼酎Barがあるんです。

◯ …いいね。焼酎は大好きだ。

衛 じゃ、おやすみなさい。

◯ しっかり寝て疲れ取れよ。

衛 はーい!

部屋に戻ったメンバー。

真夏と玲香は若月と同じ3人部屋だ。

若月は既に熟睡していた。

玲 ねぇねぇ真夏、寝た?

真 寝てる人に寝たって聞くのおかしくない?

玲 まぁまぁ。ねぇ、◯◯さんってさ…

真 え?

玲 かっこいいよね…

真 ちょっとやめてよ玲香。

玲 ごーめんごめんっなんてねっ

真 もう … (ななみんとさゆりんに続いて玲香もなんてやめてよ。。)

玲 (なんだろう、ドキドキする …)

ピロン♪

真夏の携帯が鳴った。

衛藤からだ。

衛 真夏、ななみんとさゆりんの間に何があったか知ってる?

真 え …?どした?何かあった?

衛 いや …2人とも全然会話しないんだよね …

真 そうなんだ …何があったんだろうね…

衛 私、見ちゃったんだよね。真夏もでしょ?

真 え、何を … ?

衛 〇〇さんと …

衛藤は明らかに何かを知ってる風だった。

真 みさ、それ絶対ほかの人には言っちゃだめだよ!乃木坂が崩壊しちゃうかも …

衛 やっぱり。何かあったんだ。〇〇さんとななみんかさゆりんのどっちかが。ねぇ何があったの?私、2人と同じ部屋でこれ以上何もわからないのはちょっと …

真 え!(やられた …でもこれはもう仕方ないか … )実はね …

衛 そうだったんだ …とりあえず状況はわかった。これは二人だけの秘密にしようね?

真 うん!ありがとう。よろしくね!

衛 おやすみ。

真 おやすみなさい~

衛 (ふ~ん、〇〇さん、押せばイケるってことね …ななみんとさゆりんより先に私が〇〇さんをもらおうかしら。ふふ)

~翌朝~

衛 ふぁ~おはよう、ななみん、さゆりん。

一個相談あるんだけどさ、聞いてもらってもいい?

松 うん。どしたんみさみさ~

衛 実はね …私、どうしようか迷ってて …好きな人ができちゃったの …

松・橋 え?

衛 〇〇さん …すっごく素敵じゃない …?あんまり変わらないのにすごいし、全てが理想って感じで …

松・衛  …

言葉を失う松村と橋本。

衛 やっぱり …だめ、かな …

松  …うん、あかんと思うよ。

橋  …

衛 そう …だよね …でももしかしたら止められなくなっちゃうかも。そうならないようにがんばるね。

松 うん …

橋  …

この衛藤の言動に渦中の二人は相当に焦った。

そして、自分のしていたことを改めて見直せられる機会に。

相当気が病んだ2人であった。

そして、その日中に皆フライトで台湾に渡った。

心身ともに相当の重荷である。

そのストレスは橋本の体調を悪くさせた。

しかし、あれやこれやのうちに台湾公演が催され、

公演の最中ーーーーーーーー

バタッ

裏で橋本が倒れた。

各担当のマネージャーたちは裏側のサポートでどうしようもなかった。

そしてその場に居合わせた〇〇。

〇 ななみっ!!!!!

迅速に救急車を呼び、各マネージャーなどのスタッフはコンサートの後方支援でいっぱいだったため、

〇〇が付き添う形となった。

救急車の中で橋本の意識は戻らないまま、病院についた。

医師から容態を告げられ、病室で手を握りながら待っていた〇〇。

そして、橋本が目を覚ました。

〇 な …ななみ!

橋 〇〇 …さん?

〇 大丈夫か?気分はどう?

橋 うん、ちょっとだるい …

〇 ストレスと疲労みたいだ …すまない。俺が組んだスケジュールが悪かった …

橋 ううん、謝らないで …

〇 もっとケアに注意をすれば …

橋 違うの。私が一番気が重かったのは、仕事のことじゃなくて …あなたのこと。

〇 俺 …?

橋 私ね、もうだめだわ。私、〇〇さんのこと、大好きなの。ごめん。どうしたらいいか、もうわからないの …

〇 俺が …俺がななみを支えるよ。いや、支えさせてくれ …

橋 ありがとう …ふふ、いつだかは私が支えるって言ってたのに、逆になっちゃったね …好きだよ …

〇 ああ …全員には内緒にしよう。

橋 うん …

そのタイミングでマネージャーの一人が病院に到着し、〇〇と入れ替わった。

橋本は、嬉しさと疲労が相まって、再び寝た。

コンサート後に会議があったため、宿舎に戻った。

この後メンバーは1日の台湾でのオフ、3日間のオフを日本で過ごし、最後の公演の場、韓国へと旅立つこととなる。

この日はスタッフ陣で長丁場の会議を行った後、スタッフのみで食事をしていた。

メンバーはメンバーごと久々の休みを満喫するかのようにはしゃぎ過ごしていたようだ。

〇〇たちが宿舎に戻ってくると、ロビーには玲香・真夏や他メンバー数人がいた。

メンバーたちもお酒を飲んだ後のようで、酩酊しているメンバーも数名いた。

特に玲香は、甘えるかのような姿でメンバーとじゃれ合っていた。

玲 あ!〇〇さんだ~

〇〇に近寄る玲香。

真 ちょっとだめだって!玲香!飲みすぎ!

〇 さすがにみんな落ち着き払ってるな。明日も休みだし、今日は思う存分楽しみなさい。じゃあ。

立ち去る〇〇。

0時を過ぎた頃合い、スタッフ陣もメンバーも寝静まる中、〇〇は一人酒を飲みながら仕事をしていた。その時。

コンコンッ

〇〇は立ち上がりドアを開けると、目の前には玲香がいた。

そして玲香は部屋へ転がりこんだ。

〇 ちょっ … 玲香!

玲 静かにして?

〇 おいおい … どうした?

玲 話があってきちゃいました♪

玲香はまだお酒が回っているようで、テンションが高かった。

〇 話って?

玲 私ね …

こそこそ話をするかのように顔を寄せた。

まず一回、頬にキスをした。

〇〇がびっくりして顔を向けると、口にキスをされた。そのままベッドに押し倒し上に跨る玲香。

〇 玲香っ!

玲  …お願いがあるの。私、本当に好きになっちゃったんだ。でも、叶わないのは知ってる。だから、一個だけお願い。私の初めて、もらってください …今日のことは、一生私だけの思い出として、綺麗に取っておきたい …

〇 玲香 …

行為を始める玲香。こんなはずでは …と思うも止めるに止められない〇〇。〇〇は受け入れた。 


第2章 #思わぬ激励

翌朝

玲 おはよう。

?  …おはよう。玲香、珍しく早起きだね。

玲 今日はみんなで観光だからね。ほら真夏、起きて!

真 うん …

玲香は誰も起きぬ早朝に戻ってきていた。

というものの、興奮が冷めず、〇〇の部屋で少し寝たものの、その後は全く寝られなくなっていた。

しかし、非常にすっきりしており、何かを達成したかのような高揚感を持っていた。

翌日の観光は完全にフリー。

日本に帰ってからはスタッフ含めてオフだったので、〇〇らスタッフ陣は朝から会議や作業を繰り返していた。

メンバーは観光をしても良し、部屋で寝てても良し、完全なフリーだった。

観光の序盤からある程度のグループに分かれており、自然とその場に残った面々が、

松村、真夏、玲香、衛藤、生田という異色なメンバーだった。

玲香・生田・真夏の3名はテンションも高くおちゃらけながら楽しんでいたものの、

松村は橋本と衛藤のことが気になり、衛藤は衛藤で両名のことが気になっていた。

九份や中正紀念堂などを見て回り、一見楽しそうに観光している。

ピロン♪

生田の携帯に連絡が入る。

マネージャーからだった。〇〇さんと一緒に合流しようかと考えてるんだけど、今誰いるか確認の連絡がきていた。

途端にテンションが変わる一行。

純粋に喜ぶ生田・衛藤・松村。若干の気まずさを覚える玲香・真夏。

勿論言葉にはしないものの、心の中では思案を巡らす一同だった。

〇〇やマネージャー … と、橋本が到着する。

〇 みんなおつかれ。どう?久々のオフ&観光は?

生 最高に楽しいです~!私台湾初めてだからうれしい~。あ、ななみんも!体調大丈夫?

橋 うん、大丈夫。24時間くらい爆睡したからもう元気。笑

生 よかった~心配したんだってば~

橋 ごめんね。ありがと。

〇 ななみも復活したし、今日は最後みんなで楽しんで終わろうか!もう18時も過ぎてるし、提案があるんですが、いかがでしょう?

一同は〇〇についていくことにした。

着いた場所は、台北101だ。夜景が綺麗で有名である。

合計で9名にもなっていたので、5人と4人のグループに自然と距離ができ、

5人グループには、〇〇・生田・橋本・マネージャー・玲香、

4人グループには、松村・衛藤・真夏・マネージャーという構成になっていた。

橋本は2人きりになれないか考え、

玲香はどう接したらいいかわからず、

生田はとにかくおしゃべりしたくて、

松村と衛藤は〇〇のことが気になり、

真夏はこの状況というだけで居てもたっても居られない心境だった。

展望台に着き、全員がその時考えていたことを忘れ、言葉を失った。

綺麗・・・

キャーキャー騒ぎながら、全員身を乗り出し夜景を見ていた。

それも静まってきたころ、〇〇は全員の注目を引くかのように靴音を立てて歩き出し、話し始めた。

〇 NYC、ドイツ、台湾、ここまでワールドツアーはうまくいっている。乃木坂はもっと世界をとれるし、俺はそのためにここにきている。幸い、ここにきているのは白石や西野、生駒はいないが、乃木坂を支える主力メンバーだ。この野望を実現しよう。こんな夜景よりきっと100倍も綺麗だ。どうだ?ここにいるみんなはどう思う?

皆、静かに、しかし強く、頷いた。

しかし、一人だけ、心境は異なった。

ある者は、ワールドツアーが終わったら乃木坂を辞める決心をした。

その後食事を楽しみ、宿舎に戻った。

夜の就寝前。

部屋割りとしては、奇しくも、

 ①秋元ー桜井

 ②衛藤ー橋本

 ③松村ー生田

となっていた。

~秋元・桜井部屋の様子~

玲 真夏、報告があるの。

真 え …?なんか嫌な予感なんだけどやめて!笑

玲 うーん、私にとっては幸せなの。

真 実はね …

玲香は自ら部屋に強引に押し入り、自らお願いをして行為に至ったことを話した。

玲 私はね、それだけで充分なの。もう幸せもらっちゃった …

真 そんなんでいいの?もっと長くいたいとか、思わないの?

玲 私にはね、わかるの。あの人はこれから先も乃木坂には重要な人。私も乃木坂にいたい。だから、これ以上は望まない。それが幸せなの。

真  …(いくら玲香から行ったとは言え …〇〇さん …)

~衛藤・橋本の部屋~

衛 ねぇななみん。ななみんさ、〇〇さんのこと、どう思う?

橋 え …?どうって?

衛 男性として。かっこいいよね~素敵だよね …私の理想なんだよね …きっと、そう思ってる子、多いと思うの。

橋 確かに …そうだよね。きっと優秀なだけじゃなくて、人としての魅力みたいなものがあるんだろうね。

衛 私 …本気で狙いに行っちゃっていいかなぁ?

橋 うーん …私には何も言えないけど …

衛 じゃあ、応援してくれる?

橋 ごめん、応援するとかってことでもないと思うし、みさの好きなようにすればいいと思うよ。

衛 そうだよね、ななみんはそういうタイプだよね。でもよかった、そう言ってくれて。じゃ、おやすみ~

橋 おやすみ …

一度キスをしたことを知っている衛藤は、揺さぶるかのように橋本に聞いた。

橋本は橋本で、みさの怪しい言動に疑問を持ちながらも、ただそう答えるしかなかった。

~松村・生田の部屋~

松 あ~。。

生 どしたのまっちゅん。

松 あんな~いくちゃん。うちなぁ、めっちゃ〇〇さんタイプやねん。

生 え?!

松 うちにとって王子様~って感じやねん。

生  …好きってこと?

松 そーやと思う。

生 そうなんだ …でもね、私も〇〇さん素敵だなって思うんだよね。これが恋って言うかはわからないけど、〇〇さんとだったらまだ見ぬ未来を見れそうだなぁって …

松 なになにいくちゃん。それ、宣戦布告やろ?

生 違うよ~そんなつもりで言ったんじゃないよ~

松 にひぃ~負けへんよぉ~

生 違うってば~

~〇〇・??の様子~

〇 このたびは台湾公演、見に来てくださり誠に有難うございます。

? むしろNYCとドイツ、どちらもいけなくてすまない。

〇 秋元先生がお忙しいことは重々承知しておりますので、恐縮でございます。

康 そんな堅苦しいのはいいよ。まずは、この3公演、どれも見事な活躍ぶりだったな。裏の根回しから何まで。さすが、僕の見込んだ〇〇くんだ。

〇 有難うございます。

康 今日は一つだけ言いたくて、わざわざ深夜に時間を作ってもらってすまないね。

〇 いえ、とんでもございません。それで、お話というのは …?

康 メンバーと恋をしてほしい。

〇 は …?今なんと …?

康 恋をすることで女性は美しく強くなる。関係を持ってもいい。恋する女性は人に勇気を与えるからね。

〇  …

康 1人や2人、卒業することになってもいい。卒業コンサートは異常なほどの現象を巻き起こす。〇〇くん、君には、"プロモーター"としての活躍を期待しているよ?

〇 はい…

康 じゃあ今日はこれで。明日帰国だろう?

〇 はい!失礼いたします。

翌日、メンバーは日本に帰ってきた。3日間のオフが与えられる。

午前中には日本に帰国し、メンバーは帰路についていた。

ピロン♪

〇〇の携帯が鳴った。

橋 今日、帰って少し落ち着いたら夜会える?

〇 いいよ。場所はどうしようか。

橋 〇〇の家に行くよ。

〇 わかった。

食材を買ってきた橋本が〇〇の家に着いた。

〇 ようこそ。あ …買ってきて、くれたんだね?笑

橋 ?とりあえず、お邪魔します。

橋本はリビングについてびっくりした顔をしていた。

橋 そういうこと?笑 〇〇は何の材料買ってきたの?

〇 味噌汁と肉じゃがと魚と刺身 …

橋 すごい!私も味噌汁とステーキの材料買ってきてた!笑

〇 はははっやっぱり恋しくなるよね、こういう時は。笑

橋 じゃあ私作るよ。

〇 手伝うよ。こういうのは二人で作ったほうが楽しいだろ?

橋  …うん。

2人だけの空間に心から安堵していた。

〇  … …作りすぎたな …笑

橋 だね …笑

〇 まぁ残ったら明日食べるよ。

橋 じゃあ手伝おうかな?

〇 助かる。笑

2人で初めてのんびり食事をして、お酒を飲みながら他愛もないことで笑って、絵に描いたような何気ない幸せの瞬間だった。

〇 泊まっていきなよ。

橋  …うん。

そのまま二人は一夜をともにした。

翌朝 …朝ごはんを食べた後、二人は家でのんびりしていた。

すると橋本は切り出した。

橋 私、乃木坂辞めようと思う。卒業したら、結婚してほしい。〇〇を私のものにしたい …知ってるの、松村もみさも、〇〇にアプローチしてきてるって …

〇 ななみ …

橋 私、本気だよ。

〇  …ごめん、今すぐは返事はできない。乃木坂を辞めることにも賛同できない。乃木坂から見ても、奈々未はまだ必要だ。

橋  …私のことなんだと思ってるの?ただのアイドル?乃木坂の橋本奈々未を好きになったの?

〇 そういうことじゃない …けど、今すぐは返事できない。ごめん。

橋  …

橋本は黙ったまま家を出ていった。

はぁ …

一つ大きく深いため息をついた〇〇。

すると、携帯が鳴った。

ピロン♪

衛藤からだ。

衛 〇〇さん、お休み中にすみません。今回のワールドツアーを通じて、お仕事のことでご相談があるんですが …今夜お時間ありますか?

〇〇はとても行く気にはなれなかったが、仕事と割り切っていくことにした。

〇 わかった。じゃあ赤坂にある康さん御用達の会員制バーに行こう。関係者慣れしてる店員さんばかりだから、特に気を遣わなくて大丈夫だよ。19時に、そこで。

衛 はい♪ありがとうございます!

そして店に着き …

〇 ごめん、待たせた。

衛 いえ、私も今来たところです。

〇 マスター、いつもの。

衛 よくくるんですか?

〇 そうだね、康さんと飲むときは必ずここだし、もう結構来てるかな。

衛 素敵なところですね~

〇 会員になれる人をかなり限定してるからね。こちらとしても変な客とか来ないから安心だよ。で、相談というのは …?

衛 私 …これから先どうしていくべきなのか、悩んでるんです。もっと歌とかのお仕事増やしたいなって …自分にはまいやんほどの美貌もなければ、まひろやいくちゃんほどの歌唱力もない。ピアノもできないし、真夏ほどバラエティにも振り切れない。

〇 なるほど …結構しっかり考えてるな。さすがだよ。

衛 いえいえ…

衛藤は照れながらも真剣な目をしていた。

〇 ちょっとまだ言うには早い気もするが … 何を目指すか次第だが、悩む必要性はないと思う。充分頑張ってるし俺はそれを知ってる。売っていく自信もある。現に、今回のワールドツアー、NYCでの人気投票で一番人気あるのは衛藤だった。付け足していくとすると、演技を磨く必要がある。同時に英語の勉強もしよう。ハリウッドにそのうち売り込みに行く。その準備をしてほしい。

衛 え …?

〇 歌の仕事は必然的に増えてくる。けどそんなんじゃ衛藤の才能を活かしたことにならない。俺がいるんだ。それくらい目指そうぜ?

衛藤はたまらず泣き出した。

〇 え、みさ …?

衛 違うんです、ここまで私のことを考えてくれてる人がいるだなんて、思ってなくて …

〇 ばか、なんのために俺がいるんだよ。俺は乃木坂メンバーのプロモーターとして抜擢された人間だぞ?

衛 すごい …ありがとう …ございます …

〇 はい、じゃあもっかい仕切り直しで乾杯しようか。

衛 はい …!乾杯 …!

その後もお酒を飲み、酔いが気持ちい程度に回ってきたころ、衛藤は少し甘えた表情になってきた。

〇 じゃあ、そろそろ帰ろうか。

衛 え~いやですぅ~まだ帰りたくない~

マスター ははは、〇〇さん、もう一杯くらい、奢りますよ。

〇 マスター …笑 ありがとう。

衛 やったぁ~!

その一杯を飲んだ後、衛藤は酩酊状態になっていた。

〇 みさ、帰るぞ~

衛 いやですぅ~

グイッ

衛藤は〇〇の手を強く引っ張り、〇〇は体を寄せられた。

衛 私、知ってるんです。この会員制のバーの上、ホテルなんですよね?同じく会員制の。 …お願い。私を、もっと女にして?

〇〇は言葉を失った。

なぜなら、その言葉で秋元康の言葉が蘇ったからだ。

「メンバーと恋をしなさい。関係をもってもいい」

橋本との関係性で弁明できるはずもなく、衛藤に引きずられる形で、今度は衛藤と一晩過ごした。2人は関係をもってしまった。

翌朝、2人から連絡がきていた。

一人目は、松村。

松 今日、会えませんか?

疲れもたまっていたし、仕事もしなければならなかったため、〇〇は断った。

〇 ごめん、今日は仕事しないといけないんだ。また今度。

家にはしょぼくれる松村の姿があった。

二人目は、橋本。

橋 昨日はごめん …いきなりあんなこと言われても困るよね …

〇 いや、こちらこそ即答できなくてごめん。けど、どちらも大切なんだ、今の俺にとって …

橋 わかってる。私が我儘を言い過ぎた …暫く、距離を置きましょう。そしたら、何が大切か見えてくると思うの。

〇 わかった …

いつどんな事件がおきてしまうかもわからないこの関係。

しかし一方で、乃木坂の人気度はうなぎのぼりだ。ワールドツアー中だが、好きなアイドルランキングが発表される時期で、1位~10位を総ナメした。

1位は白石、2位は西野、3位に生田、そして玲香、衛藤、橋本、松村、秋元の名前もそこにはあった。

乃木坂メンバーはこれから先、もっと日本の芸能界にとって重要な人物にできると確信していた。

翌日、〇〇はランキングしている一人と会う約束をしていた。

生田だ。

ドイツで先入りしていた時、〇〇は生田とミュージカルを観劇しに行くことを約束していた。

それも、かの有名な「美女と野獣」だ。

〇 これ、次のシーズンの時の美女、生田にやらせようと思ってるんだよね。

生 え?

〇 よく見ておいて。

生  …はい。

その後、生田と食事をするため、乃木坂にある会員制のレストランに来ていた。

〇 どうだった?美女と野獣

生 演者の方々の演技力に恐れ入りました …

〇 だろう?これを見ておくのと見てないのとでは、全く違うからな。あのイメージを忘れないように。

生 はい!

すると、そこにある男が現れた。

秋元康だ。

ep46

〇 ーーあ、秋元さん!

〇〇が声をかけると、秋元がこちらに近づく。

〇〇が一礼すると、生田も立ち上がり、一礼した。

すると、秋元が一言だけ言った。

康 ふむ。これは正しいな。

〇  …はい?今なんとおっしゃいました …?

康 うん。二人、付き合いなさい。ある程度のことは揉み消そう。

〇・生 え …?

康 僕の見たところ、〇〇に生田はお似合いだし、生田に〇〇は必要だ。これ以上ない共存関係になるぞ。

突然のことに驚いた二人だったが、妙にしっくり来たのも事実だった。

〇・生 …はい。

秋元は大きくにっこり笑ってその場を後にした。

テラス席に出てみると、夜景が綺麗に見える。右には東京タワー、左にはスカイツリーが見える。

東京を一望できる眺望だ。

〇 なんか、秋元さんにサポートもらう形になっちゃったけど … 正式に付き合おう。生田と … いや、絵梨花と一緒にいればまだ見ぬ未来を見れそうな気がするんだ。直感ってのも大きいけど …

生  … …はい。私でよければ。私も、なんて言ったらいいかわからないんですが、同じように思ってます。

〇 これから、二人の時は敬語は止そう。

生  …うん。わかった。

◯ 今日、ウチに来ないか?

生 …うん。行く。

橋本との関係が微妙な中、生田との関係を決意し、かつ衛藤や松村、玲香といったメンバーをすでに巻き込んでしまっている〇〇。激動の日本でのオフ期間だったが、また韓国でのツアーが始まろうとしていた。

万全を期していざ韓国。

〇〇の隣には、たまたま橋本が座った。

2時間の間、2人は他愛もない話や韓国についてなど、いつも通り、いやそれ以上に話をした。

韓国はワールドツアーの千秋楽、韓国公演が終われば初めてのワールドツアーも終わる。

これまで3か所で様々な文化に触れてきたメンバーは、それこそもはや心から楽しむ気持ちで韓国公演を迎えていた。

ライブ中のMCに韓国語での挨拶や笑いを入れるなど、パフォーマンスにも慣れが出てきていた。

セットリストはK-POP発祥地と考え、その先の出口や孤独兄弟、命は美しいなどをメインに据え、かっこいい&綺麗な曲をメインに構成していた。

全てが完璧に終わった。

こんなに完璧でいいのかと思えるほど。その中でも、橋本と松村の人気は韓国では群を抜いていた。

いろいろあったワールドツアー、表面上は大成功で終わった。

しかし … … …

日本に帰った翌日、〇〇が出社すると社内がざわついていた。明らかに何か起きていた。

マネージャー 〇〇さんっ大変ですっななみが、乃木坂を辞めると …

恐れていた事態が起きた。

〇 今奈々未はどこに?

マ 会議室Aにいます。

〇 わかった。ここは僕に任せて。

〇〇は静かにドアを開け、静かに座った。

そこから暫く沈黙が流れた。

橋 …もう決めたの。私、辞めるよ。これからは、乃木坂の橋本奈々未ではなく、いち橋本奈々未として見てほしいから。

〇 もし、俺がそれでも付き合えないって言っても?

橋 …今回の件で思ったの。私、乃木坂の橋本奈々未としてではなく、橋本奈々未として生きていきたいの。だから、それでも変わらない。

〇 そうか …わかった。

席を立つ〇〇。

橋 …止めないの?

〇 止めて取り消すような人なら、あそこまで想うことは無理だったからな。

橋本は大きな声で泣いた。

かくして、橋本の卒業が翌年の2/20に決まった。橋本の26歳の誕生日だ。

〇〇は別の機会に橋本と話す機会を作った。

〇 ななみ、これから何をしていきたいんだ?

橋 乃木坂の裏のスタッフメンバーとして働きたいなって思ってる。

〇 なるほど。じゃあ俺が今思ってることを先に伝えておこう。実は …

橋 わかった。もしそうなったら、ぜひそこで。

〇 ありがとう。よろしく頼むよ。

ある日、事件が起きた。

最近、〇〇とも接点を持てず、逆に卒業を発表したことで一気に世間から注目を浴びた橋本と、急にいろんなレッスンに時間を割き始めた衛藤に対し、焦燥感を感じるようになっていた。

ある収録の後 … 若干の逆恨みにも近い。松村は、橋本にわかりやすく喧嘩を売った。

松 乃木坂辞めるだなんて …よほど好きな男でも現れたんちゃうん?だれやろな~わからんけど

橋  …なに?なんか言いたいことでもあんの?

松 いや、なんもあらへんけど、まさか男と一緒になるなんてことで仕事放り出すような女に見えへんかったからな~って

橋 松村。ただの言いがかりはやめてよ。何も知らないクセに。蚊帳の外の人間がぴーちくぱーちく吠えるんじゃないしょや!

橋本は松村の腕を強くつかんだ。

松 イタッ

松 なにすんねん!

松村は橋本のことを肩を突き飛ばした。

ーーーちょうどそのころ、衛藤と玲香が楽屋に戻ってきた。

衛 ちょっと!何してんの!やめてんの!どうしたのふたりとも!

ドンッ

仲裁に入ろうとした衛藤が突き飛ばされる。

その時に近くにあった机の角にぶつけみるみる頬が腫れていく衛藤。

玲香が電話で〇〇を呼んだ。

〇〇は事態を聞きつけ、楽屋に駆けつけると、急に2人は静かになった。

〇 なにやってんだおまえら!

橋・松  …

それぞれから一部始終を聞いた〇〇は、次のように決めた。

松村は公には体調不良ということで謹慎処分。衛藤は顔の怪我の治療のため療養となり、橋本は卒業前のため活動の継続となった。

〇〇が松村を呼び出した。

〇 すまんな、急に呼び出して。

松 いえ …

〇 実は話があって …

松 〇〇さん、本当に申し訳ありませんでした …

松村は泣きながらに謝罪をした。

〇 俺に謝るなら、顔にけがさせた衛藤と一方的に傷つけた橋本に謝れ。謝りに行け。

松 はい …すみません …

〇〇は、何事もないように、機転を利かせ楽屋にその他のメンバーが戻ってこないように便宜を図っていた。

時間差での収録ということも幸いして、4名以外はこの事態のことを知らない。

〇 さて、本題だ。俺には、松村との夢がある。

松 え?

〇 モデル業も順調。容姿端麗、なのにアニメが大好き。乃木坂初の声優になるつもりはないか?

松 …!

〇 一個だけ先に言っておくと、俺に夢を抱くな。だけど、一緒に夢を見よう。松村が卒業後、モデル兼声優兼女優になる。その夢は一緒に見たい。そのためなら全力で松村とこれからも向き合っていきたいと思ってる。どうだ?

松 こんな私に …こんな私のために …是非、やらせてください …

松村は大粒の涙を流しながらそう答えた。

〇〇はにっこり笑った。

その後、玲香を呼び出した。

玲 失礼しま~す。

〇 どうぞ、そこ座って。

玲 あの~お話ってなんでしょうか …?

〇 玲香、単刀直入に聞く。女優を目指すつもりはないか?

玲 正直に話してもいいですか?

〇 勿論。そのための場だ。

玲 最近、これから先どうしようとかって思うんです。たぶん、一期生のメンバーはみんなそう思ってて。私は …

私は、やっぱり死ぬまで乃木坂の一員で終わりたいんです。だから、卒業したら、乃木坂のバックオフィスの一員として働けないかなって…

〇 そうか …やっぱりな。望めば、女優の道も手に入るが、それでもいいのか?

玲 女優 …それ自体はすごく魅力的で有難いお話なんですが …やっぱりって、わかってたんですか?

〇 まぁみんなのことは大体何を考えてるかはわかる。とりあえず、わかった。ありがとう。卒業はいつかやってくるものだし、誰に引き継ぐか、誰なら引き継げるか、よく考えておいてほしい。その出した答えに反対はしないよ。信頼してる。

玲 有難うございます …では、失礼します。

そしてその次は、衛藤の家まで行った。

コンコン

衛 はぁ~い!

〇 悪いね、突然来ちゃって。

衛 どうしたんですかー?

〇 いや、ちょっと様子を伺いにね。けがはもう大丈夫か?

衛 はい。ちょっとまだ痛みはしますけど、腫れもだいぶ引いてきたので …

〇 傷にならなくてよかったな。

〇〇がふと辺りを見回すと、英語の参考書、重ねられたDVDの数々 …

衛 普段、あんまり時間が取れないもんだから、この機会に詰め込んじゃってます♡

〇 心配いらなかったな。すまない。

衛藤は、誠実で野心家で打算的だ。最初は色目を使って口説きにこようとしていた節もあったのだろうが、あの飲んだ日に話をしてから、吹っ切れたように熱中している。それがわかったため、〇〇は安心した。

〇 勉強中、邪魔したな。もういくよ。

衛 あら。私を抱きに来てくれたんじゃないんですか?♡

2人は笑い合い、〇〇はその場を後にした。

その後、秋元康に会いに行った。

〇 秋元さん、今日はお願いがあって参りました。

康 では、言い当てよう。必ず僕が〇〇くんの立場なら取る行動を。

〇 なんでしょうか…?

秋元は一枚の紙を取り出した。

会社の登記に必要な用紙だ。資本金は3億円。代表取締役社長には、〇〇のことが書いてあった。

康 3億円で足りるか?あと、メンバーもアテがついてるんだろう。

〇〇は驚愕した。この人にはすべて見透かされているのではないかと…

〇 本当に、怖い人ですね、秋元さんは…

康 いや、心から信頼しているからね、君を。じゃあこれから、卒業メンバーを頼んだよ。社長。

〇 そこまで見抜かれていらっしゃるとは…

康 いや、日付を見てごらん。2日後になっているだろう。君は僕を上回る速さで会いに来てるよ。

〇 恐縮です…これ出されて言えることなんてなにもないですよ…

〇〇は会社の立ち上げを考えていた。入社してわずか3か月ながらに。

乃木坂を卒業するメンバーが、不自由なく芸能界で生きて行くためのサポートをする子会社だ。

橋本、衛藤、松村、そしてそこに生田を引き入れたいと。ミュージカルへのアテンド、声優へのアテンド、ハリウッドへのアテンド、OLとしてのアテンド、それらを実現する、今のアイドルたちの今後を優遇するためのプロダクション事務所だ。その設立の許諾を取るために会いに来ていた。

康 待っていたよ。さすがだ。生田には?

◯ まだです。相談しなかったことを怒られるかもしれませんが、今から行ってきます。

ピロン♪

生田の携帯が鳴った。

◯ 今日会えないか?

生 19時に舞台の稽古が終わるの。その後なら!

あの会員制のレストランに2人は訪れていた。

いつも通り最近あった面白おかしい話、最近の稽古の状況、仕事の話など、普段から連絡は取り合ってるものの、話した。

2人はまたテラスに出た。乃木坂〜六本木・西麻布周辺の風景が一望できるテラスに。

◯ 絵梨花、今日は話があるんだ。

絵 何?かしこまっちゃって。

◯ 実は…

◯◯は考えていること全てを話した。そして…

◯ 絵梨花にもこの事務所に所属してほしい。

生 それって…乃木坂を卒業してほしいってこと?

◯ そうなる。

生 なるほど…

彼女自身、乃木坂に居ながらも既に夢を実現しつつあること、離れることへの抵抗、不安が大きかったに違いない。が…

生 わかった。1番最後だったことに最初怒ってやろうかと思ったけど、◯◯がそう言うなら、ついて行くよ。

絵梨花と話をしていると呑まれそうになる。なんて強い目力。多彩で、お茶目で、素直で、明るい。

今まで見て来た人間の中で一番強い光を放っていると感じた。それもかなり強烈な光だ。

彼女の魅力に引き込まれていた。

初めてだった。今まではどちらかというと自分が惹きつけてしまうケースの方が多かった。この人を離してはいけない、そう感じた。ドラマの舞台かのような綺麗な背景と、綺麗な女優。

見惚れた。

〇〇は口から出してしまった言葉がある。

◯ 眩しい…

絵 え?

◯ いや、ありがとう。

生 頑張ろうね。

◯ うん。死ぬ気でやるよ。なぁ絵梨花。

生 なぁに?

◯ 今日、ウチにこないか…?

生 うん…行く。

かくして、〇〇と生田は付き合い始めた。

しかし、この関係が再び波乱を巻き起こすになるとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。

第2章 #思わぬ激励


第3章 #新たなるスタート

そうして新会社の設立となった。設立が完了したのは結局2019年10月。あれから半年後だ。

新会社の名前は、株式会社SIL(Sky Is the Limitの略)である。

命名の由来は、ハリウッドに負けないスターを養成すること、それを目指す会社であることから、生田が大好きな言葉、"限界を決めない"を英訳した。

乃木坂やその他アイドルグループから独立を考えているメンバーの芸能活動の支援。それをきれいにやる。AV業界には送り出さない。その代わり、スタッフとしての採用も構え、オープンな人材登用を行っていた。

代表取締役社長に〇〇。何人かのスタッフを連れ、そして新規メンバーも入れ、会社を構成した。

また、永島聖羅や深川麻衣など過去に卒業したメンバーも引き戻した。

社長秘書には橋本の姿があった。

二人は、良きパートナーとして引き続き共存していた。

橋本も、ずっとこのままでいればいいと思うほどに、会社の垂直立ち上げ、深川のドラマ・CM出演、永島聖羅はバラエティに引っ張りだこ、衛藤も日本で上映するハリウッド映画への出演が決定、松村もかの有名なシリーズアニメのヒロイン声優に抜擢。すべてが順調に行っているように思えた。

橋本は〇〇への尊敬の念は勿論、自分自身も非常に充実した生活を送ることができていた。が、ここから彼女の心境は大きく変化する。

翌年の2020年1月22日。

絵梨花の卒業コンサートが無事終わった。

乃木坂卒業公演を終え、その翌月からついにSILに所属することとなった。

橋本は〇〇と生田の関係性を知らなかったが、基本的に、生田中心の生活を送るようになった。そのおかげもあってか、生田はブロードウェイに認められるほど、後々は世界的なミュージカル女優兼ピアニストとして活躍していくこととなるのだ。

橋本は知らなかったのだ。〇〇が生田と付き合っていたことを。

そしてそれは、他の誰も知らない。最悪のタイミングでこれが知れ渡ることとなる。

3月のある日、生田が主演するミュージカルの千秋楽、◯◯・橋本・松村・衛藤の5名で観劇に行っていた。

かの「美女と野獣」を主演で演じていたのだ。

スタンディングオーベーションの大喝采。観客全員が虜になっていた。拍手が起こる瞬間、◯◯はミスをした。

◯ 絵梨花ー!!

そう、大声で名前で呼んでしまったのだ。気付いてしまった者が1人いた。

橋 (絵梨花…?◯◯、いくちゃんのこと下の名前で呼んでたっけ…?)

舞台終了後、5名は楽屋を訪れた。

松 いくちゃ〜ん!おつかれさまー!

衛・橋 おつかれ〜!

生 あ、みんな来てくれたんだね〜ありがとう!

松 むっちゃよかったで!ほんまに感動してもーた!

生 ほんとに?よかった〜

◯ 良かったよ、生田。とても良かった。おつかれさま。

生 ◯◯さん、ありがとうございます。

橋(あ、敬語だし名前…さっきのは気にし過ぎかな…?)

生 あ、この後関係者で打ち上げがあるんです。皆さん参加されますか?

◯ 皆、どうする?俺は代表として出る予定だよ。

3 せっかくだし…行きます。

松村と衛藤は全く気付いていないが、橋本はなんとなく勘付いていた。

その後打ち上げに参加するも、それらしいミスを全くしない◯◯と生田。しかし逆にそれが橋本の疑心暗鬼を走らせた。

翌日、◯◯と橋本はいつも通り出社した。

◯ 奈々未、今日の予定は?

橋 …

◯ 奈々未?

橋 …いくちゃんとはどういう関係なんですか?

◯ え…?

橋 なんか怪しいなって思ったんです。付き合ってるんですか?

◯ 何もないよ。どした?急に?

橋本は急に声を荒げた。

橋 仮にも昔付き合ってた仲でしょ?!なんで何も言ってくれないの?!

◯ 奈々未…

橋 言ってくれないなら何のためにここまであなたと一緒に過ごして来たのかわからなくなるから、嘘つかないで。本当のことを言って。

◯ …そうだ。察しの通り、俺は生田と付き合っている。

たまたま廊下を通りすがり、橋本の大声に驚いた松村は廊下でこの話に耳をそばだてる。

橋本はその場で泣き出した。どうしたらいいかわからない感情が橋本の全身を包んだ。

あれから2人でずっと頑張って来た。男女の関係はないものの、◯◯が橋本を頼りにしていることもよくわかり、実際に付き合ってるんじゃないかって思えるくらい、傍にいた。

だからこそ…ショックだったのだ。橋本は泣きながら部屋を飛び出し帰ってしまう。〇〇も、かける言葉がなかった…

それを偶然聞いてしまった松村は、もう◯◯への想いは薄れていたものの、当時から生田と付き合っていたのか、橋本とも付き合っていたのか、自分には一切目もくれず他のメンバーと関係を持っていたことに腹が立ち、最もいけない行為へと走る。

同日、週刊誌にこのようなタレコミがあった。

「株式会社SILのイケメン社長は所属タレント食いのヤリ放題社長。新会社を設立した理由は、卒業した乃木坂メンバーと関係を持ちたかったからか?」

記事にされることを待っていた松村。

松 ◯◯さんがいけないんだ◯◯さんがいけないんだ…なんで私には一切何もなくていくちゃんとななみんなの…

そんな松村に、一本の連絡が入る。

松村は目を疑った。

? 今から会えないか?

秋元康からだ。

二人きりでは会ったことのない重鎮からの連絡、断るわけにはいかない。が、松村は嫌な予感がしていた。しかし、すぐに会いに行った。

康 松村、最近は声優もうまく行ってきていて、随分と忙しいんじゃないのか。悪いね、忙しいところ。

松 そうですね、声優とモデルを両立しているので、バラエティにも出させていただく機会が増えました。

康 それは良かった。それは、〇〇と一緒に考えたのか?

松 そうです。声優になろうって言ってくれたのも、〇〇さんですし、実際の出演交渉なども頑張ってくださって…

秋 それは感謝しないとね。

松 …そうですね…

康 朝、僕にこんな連絡があったんだよ。とある関係者から、とあるタレコミがあったと…

松 …

秋 今、この記事の公開は待ってもらっている。

松 えっ?!あっ・・

秋 惚れていたんだろう?〇〇に。

松 …

泣き出してしまう松村。

はい…生まれてきてから初めて、こんな感情になれる人に出会いました…でも、だからこそ、どうしたらいいか自分でも…

秋 それは良い経験だった…と、思うしかないな。でも、だからこそ、松村はここまで順調にやってこれたんだろう?

松 …

秋 裏切られたって、思ったか?

松 いえ、裏切られた、というよりは…

秋 実はな、ちゃんと松村が最近どういう仕事をしていてどう活躍をしているかというのは全部知っていたんだ。

松 …え?

秋 事あるごとに報告が来るんだ。〇〇から。

あいつはな、お前のことが大好きだ。頑張る松村だから好きなんだろう。勿論、女性としてというより、一緒に働くパートナーとして、メンバーとして、だ。

松 …

秋 あいつは乃木坂に入ったころから、お前たちのことを一番に考えている。こんな記事が出て、一番悲しむのは誰だと思う?

…今の乃木坂メンバーだぞ?お前は、後輩たちにまで迷惑をかけるつもりか。お前もあのスキャンダルで、その恐ろしさはわかっているだろう。

松 うっうっ…(泣き出す松村

秋 ここの携帯に電話して、掲載していいと言えば、記事になる…松村、お前の一存に任せる。

松 え…?

秋 煮るも焼くも好きにするがいい。〇〇が来てからの乃木坂を思い出して御覧なさい。

秋元は席を立ち、部屋を出て行った。

松 …うっ…うっ…

松村は涙が止まらなくなった。

松 もしもし…

松村の〇〇への想いは曲がった形で現れてしまったが、これまでを振り返り、愚かな行いを悔い、一度も靡かずひたすら真っ直ぐだった◯◯。この人への想いは胸にしまい、あの日語ってくれたこの人との夢をしっかり叶えなければ…そう思った。

一方、〇〇は生田に会えない日々が続いていた。

確実にスターダムを登っている生田は多忙を極め、連絡すら滅多に取れない状況だ。

会えない時間が二人に少しのすれ違いを作っていく。

そんな状況のなか、業務終了後、橋本の家へ向かった。

〇 ななみ…

橋本は明らかに目が腫れていて、ふさぎこんでいた。

橋 あれから…ずっと。付き合っていたわけじゃないけど、ずっとずーーっとそばにいたから…私きっと、勘違いしてたんだね…

〇 ななみ…今でも、ななみのことはずっと大切だ。俺にとってははいなきゃいけない存在なんだ。

橋 うん…わかってる。結局〇〇は、私のことを女としてではなく、仕事のパートナーとして存在価値を見出してくれてるってことなんだよね…どれだけ待ったと思ってるの…ほんとに…

〇 ななみ…ごめん。ななみのことは、人として、とても好きだ。一生の仲でいたいと思ってる。ごめん。

〇〇はあまりにまっすぐな目で橋本を見つめる。

橋 ふふっ

橋本は急に小さく笑った。

〇 え…?

橋 そうだよね…その真っ直ぐさ、素直さ、キラキラ輝いている感じ。そういうところを好きになっちゃったんだよね…

〇 …

橋 よし!もう大丈夫!!明日からは、ちゃんと出社します。ご迷惑おかけしすみません。

〇 奈々未…

橋 よし。代わりにさ、一杯付き合ってよ?〇〇の奢りで。

〇 …はは、そうこなくちゃ!喜んでいくらでも奢らせていただきます。

橋 じゃあめっちゃ高級な焼肉店かステーキいこう!笑

〇 どんとこい!笑

二人はその晩、古くから付き合っている友だちかのように話し、笑い、そして語り合った。

既にお互いにとって欠かせないパートナーとなっていたことは明らかなのに、それを確認し合うかのような一夜となった。

そのころ生田は携帯を眺める。

〇〇から連絡きてないなぁ…

生 〇〇のおかげもあって、仕事は順調だけど…会う時間をもっと増やしたいなぁ…まだ仕事かな…連絡も返ってこない…もし、女性と会ってたらどうしよう…

生田は不安を募らせた。

そして、今まで抱いたことのない感情を抱き、その気持ちを自分自身理解できないでいた。

生 誰かに相談できないかな…そうだ、玲香に相談してみよう。

ピロン♪

玲香の携帯が鳴った。生田だ。

生 玲香、ついに乃木坂卒業おめでとう!キャプテン、無事にみり愛に引き継げてよかったね~!今日ごはんとかどう?

玲香も生田同様に乃木坂を卒業していた。2020年2月22日だ。乃木坂の8歳の誕生日の日に卒業をしていた。

玲 いくちゃ~~ん!ありがと〜!うん、みり愛ならしっかりやってくれると思う!ついに卒業しちゃった…うん!空いてるからいこー!

数時間後…

久々の再会を喜ぶ二人。お互いの近況報告や新しい仕事などについて共有し合う2人。

玲香は以前〇〇に話をした通り、乃木坂LLCのバックオフィスメンバーとして、企画の業務に携わっている。

生 玲香…一つ相談があって…

玲 ん?どしたのいくちゃん珍しいね。

生 実は…

これまでの経緯や今の状況をすべて話した。

玲 え~~~~!!!!!そうだったんだ…(私も一回だけあったなんて言えない…しかも秋元さん公認の仲だなんて…)

生 で、それでね…最近、あまり会えてなくて…なんか、こういうときって、どうすればいいのかなぁって思って…

玲 いくちゃん、ばっちり恋してる感じでいいね~~~!!

玲香は相変わらずテンションが高く能天気だ。それがみんなから好かれるところでもある。

生 え~~そんなんじゃないよう…

玲 そうだね~そういう時は、素直に会いたいって言ってあげればいいんじゃないかな〜?男って、大概気づいてないから、ちゃんと言ってあげないとわかってもらえないもんだよ〜

生 お、先輩、参考になる~~玲香のくせに~~

玲 玲香のくせにってなによー!

2人はその後もキャッキャ笑いながら楽しんだ。

生 やっぱり久々にメンバーに会えると嬉しいね~

玲 うん、私もみんな活躍聞いたりしてるだけでとてもうれしいよ。

生 玲香も頑張ってね。

玲 うん、ありがとう!またご飯いこーね!

生 うん!

玲香と別れたあと、生田は携帯を取り出した。

〇〇、最近会えてないから、会いたい…ううん、違う、消して消して…うーん、なんて言えばいいんだろう…今何してる?!いや、これだと軽すぎるか…一人で悩んでいるところに、ある男から声をかけられた。

? あれ?いくちゃんじゃない?

生 わっ!あっ!三角さん!

三角とは、以前から乃木坂46SHOWなどでも共演したことのある俳優だ。

△ どしたのやたらびっくりしてるけど笑 久しぶりだね~元気??

生 あ~いや、大丈夫です。はい!お久しぶりです!

△ 何してんの?帰り?

生 そうなんです、友達とご飯してて…

△ そうなんだ!まだ時間早いし、軽くいっぱい飲んでいかない?

生 (どうしよう…でも断れないし…)はい、少しだけなら…

△ やった!じゃあここらへんだったらね、いいバーこの間教えてもらったからそこに行こう!

そこは、以前〇〇と二人で来た夜景がきれいな…秋元康と会い、〇〇と付き合い始めたバーだった。

生 (〇〇に会いたいなぁ…)

△ いくちゃん、最近仕事調子良さそうだね。

生 いえ、私というより、プロモーターの方がすごくて…

△ ああ、もともと乃木坂のプロモーターだった人でしょ?あの秋元康も認めるって、芸能界だとちょっとした風雲児だよね。

生 そうなんですね…

△ 結構いろんな女優があの事務所に入りたいって直接その人に交渉しているようなんだけど、全部断られてるみたいで、すごいよね、こだわりが。

生 (知らなかった…)そうなんですね…(なんでだろう…それに、やっぱり女優さんとのつながりもすごい多いんだろうなぁ…)

生田はずっと〇〇のことが頭から離れなかった。

一方、〇〇と橋本は、焼肉も食べ終わり、店を移ろうとしていた。

今日は朝まで飲んでもいいと思えるくらい楽しく、話が盛り上がっていた。

〇〇と橋本が向かった先は、とあるバーだった。

・・・そう、生田たちがいるバーと全く同じバーだ。

〇〇たちが着く頃、生田と三角は先に飲んでいた。

そして虚ろな表情をしている生田が突然ハッとした表情に変わった。

生 〇…

生田がさらに動揺した。なんと、橋本奈々未と一緒にいる。

彼女は秘書のはず…?なぜ…?まさか…?

生田はいろいろ考えすぎて三角のことはもう視界に入っていなかった。

生 〇〇…!

〇 絵梨花!

橋 おーいくちゃん!はろー!

〇〇と橋本は既に酔っぱらっていた。

生田はそれを見て憤る。

生 私は会えなくてやきもきしてるところに、なんでななみんと二人で飲んでるの?私よりななみんのほうが大事なの?ねぇなんで?!

◯ え?絵梨花どうし…

ダッ

生田は泣きながら走って出て行ってしまう。

〇〇は一瞬戸惑う。

橋 〇〇、ほら。

出口のほうに指を差す。

〇 ななみ、すまない!ありがとう!

〇〇は状況が理解できないながらも、とりあえず生田を追いかけた。

その場に残された橋本と、遠目で会話は聞こえないが一部始終は見ていた三角。

橋本は三角のテーブルに座った。

橋 まだ飲み足りないから、付き合ってくださる?

△ えっ…あ、はい!橋本奈々未さん…ですよね?(綺麗だ・・

橋本は小さく笑い、そして橋本と三角はゆっくり飲み始めた。

〇 絵梨花!!おい、待てって!絵梨花!

〇〇が生田に追いつき引き留めた。

〇 どうした…?絵梨花。

生 もう…わかんないよ…毎日毎日仕事で忙しくて、やっと休みができたと思ったら都合が合わなくて、でもそしたらななみんと飲んでるんでしょう?ほんとに私のこと好きなの?〇〇は…

〇〇は、そういう生田を今まで見たことがなく、初めて"女の子"らしい一面を見た気がした。

〇 ぷっははははは!

大きい声で笑った。

それにつられて生田はきょとんとした顔をした。

生 え…?なんで笑ってるの…?なんかおかしいこと言っちゃったかな…?

泣き顔だった生田も少しつられて笑みを浮かべる。

〇〇は生田を抱きしめた。

〇 俺も会いたかった。今日、奈々未と飲んでたのは、仕事でちょっといろいろあってね。彼女にお詫びということで付き合ってたんだ。これは本当。

生 ほんとに…?生田は抱きしめられてまた泣き出す…うわぁ~~

〇 ふっ(子どもみたいな泣き声だな…

生 あ、今バカにしたでしょ?!

〇 してないしてな~い!本当に俺も会いたかったよ。

生 うん…ありがと。

〇 …帰ろっか?今日は一緒にいよう。

生 …うん。

2人は仲良く手をつないで歩いて帰った。

そして、家に着くと、2人は2人の愛情を確かめ合うように、触れ合い、愛し合った。

翌朝、朝起きると隣に生田がいた。

久々にこんなにゆっくりな朝。生田は収録もなく、〇〇も仕事がオフの日だった。

生 ん…

〇 (こうして寝顔を見てると、大スターの片鱗はないんだけどなぁ…

生 ん…おはよぉ~~なんで笑ってるの?うーーーん

〇 ああごめんごめん。起こしちゃったか。

生 はぁ~~~!起きるかぁ~~!おはようーーーーー!!

朝から元気な人って人間っぽいよね。

〇 うん、そうだね。(よくわかんない

生 やっぱり朝が一番大事なんだよ~~

〇 うん、そうだね。

生 ちょっと!?ちゃんと聞いてる?

〇 うん、聞いてる聞いてる。さて、朝飯でも作ろうかな。

生 あ、私作る!

〇 え?あ、うん、大丈夫。俺作る。

生 あ!ひどい!私の料理なんて食べたくないんだ!

〇 え?いや、そんなことないよ、ほら。じゃ、一緒に作ろっか。

生 いーや!私一人で作ります。最近料理の連載もしてるからね。上達したところ見せてやる!

生田の料理音痴は乃木坂界では非常に有名な話だった。

〇 (まじか~大丈夫かな~~

自然とため息がこぼれる。

10分後…

生 きゃーーーー!

〇 ?!どうした?!

生 味噌汁作りすぎてあふれちゃった!

〇 (どうやったら鍋で味噌汁作る発想になるんだよ…

大丈夫、たくさん飲むよ。

生 ほんとに?!ありがとう!

出てきたメニューは…

白米・味噌汁(大量)・玉子焼き・納豆・肉野菜炒め だった。

〇 お…?(見た目と匂い的には悪くないな、、?玉子焼きも形になってる…)

生 ちょっと、じろじろ見すぎじゃない?!乃木どこやってた頃の私とは違うんだからねっ!

〇 うん、そうだよね、じゃあ、いただきます。

パクッ

まずは玉子焼きを食べてみた。

〇 お、おいしい…?!

生 ちょっと、なんで素直に喜ばないのよ。もう。

生田は口をとんがらせた。

〇〇は、意外にもちゃんとおいしい生田の料理にびっくりしていた。

白米も、野菜炒めもおいしい。

ほっと胸を撫でおろす〇〇が味噌汁を飲むと…

生 どう…?

〇 …あ…うん…

生 あ、やっぱり?なーーんか、味がしないんだよね…味噌はたくさん入れたのに…

〇 生田さん。出汁は入れたのかな?

生 出汁?味噌汁って、出汁、いるの?

〇 (やっぱり…

そうだね、ここにあるこれを、入れてあげよう。一煮立ちさせてみようか。

〇 はい。どうぞ召し上がれ。

生 わ!おいしい!めっちゃ味する!なるほど、味噌汁には出汁がいるんだな~~

〇 …ふふふっははははははっ!いや~やっぱり、絵梨花と一緒にいると楽しいね。仕事してるときはとんでもなくきりっとした顔してんのに、緊張感ないといつもチャーミングな絵梨花だよ。ははは

生 それ…褒めてる、よね?

〇 もちろん。

なぁ、絵梨花…

〇〇がゆっくりと話し始めた。

〇 ちゃんとしたのはお互い仕事が落ち着いてからしようと思ってる。

けど、、、、

一生俺と一緒にいてくれないか?結婚してほしい。

突然過ぎるプロポーズに、生田は驚き、慌てふためいた。

生 えっえっと、あの。。

ガタッ

バシャーーッ

〇 あっちーーー!!!!

〇〇の足に味噌汁がダイビングした。

生 きゃーーーー!!!ごめんごめんごめんーーー!!!

生田がタオルで〇〇の足を拭いている。焦った困った顔をしている絵梨花もかわいかった。

吹き終わる頃〇〇は、靴下を脱ぎ捨て、生田をひっぱり二人重なるように寝っ転がった。上に生田、下に〇〇。

生 きゃっ

〇 絵梨花。

生 はい…

〇 結婚しよう。

生 ……はい。

〇 秋元さんにも、報告しないとな。

生 ………うん。

こうして2人は結婚する決意を固めた。

第3章 #思わぬ激励


第3章 #新たなるスタート

そうして新会社の設立となった。設立が完了したのは結局2019年10月。あれから半年後だ。

新会社の名前は、株式会社SIL(Sky Is the Limitの略)である。

命名の由来は、ハリウッドに負けないスターを養成すること、それを目指す会社であることから、生田が大好きな言葉、"限界を決めない"を英訳した。

乃木坂やその他アイドルグループから独立を考えているメンバーの芸能活動の支援。それをきれいにやる。AV業界には送り出さない。その代わり、スタッフとしての採用も構え、オープンな人材登用を行っていた。

代表取締役社長に〇〇。何人かのスタッフを連れ、そして新規メンバーも入れ、会社を構成した。

また、永島聖羅や深川麻衣など過去に卒業したメンバーも引き戻した。

社長秘書には橋本の姿があった。

二人は、良きパートナーとして引き続き共存していた。

橋本も、ずっとこのままでいればいいと思うほどに、会社の垂直立ち上げ、深川のドラマ・CM出演、永島聖羅はバラエティに引っ張りだこ、衛藤も日本で上映するハリウッド映画への出演が決定、松村もかの有名なシリーズアニメのヒロイン声優に抜擢。すべてが順調に行っているように思えた。

橋本は〇〇への尊敬の念は勿論、自分自身も非常に充実した生活を送ることができていた。が、ここから彼女の心境は大きく変化する。

翌年の2020年1月22日。

絵梨花の卒業コンサートが無事終わった。

乃木坂卒業公演を終え、その翌月からついにSILに所属することとなった。

橋本は〇〇と生田の関係性を知らなかったが、基本的に、生田中心の生活を送るようになった。そのおかげもあってか、生田はブロードウェイに認められるほど、後々は世界的なミュージカル女優兼ピアニストとして活躍していくこととなるのだ。

橋本は知らなかったのだ。〇〇が生田と付き合っていたことを。

そしてそれは、他の誰も知らない。最悪のタイミングでこれが知れ渡ることとなる。

3月のある日、生田が主演するミュージカルの千秋楽、◯◯・橋本・松村・衛藤の5名で観劇に行っていた。

かの「美女と野獣」を主演で演じていたのだ。

スタンディングオーベーションの大喝采。観客全員が虜になっていた。拍手が起こる瞬間、◯◯はミスをした。

◯ 絵梨花ー!!

そう、大声で名前で呼んでしまったのだ。気付いてしまった者が1人いた。

橋 (絵梨花…?◯◯、いくちゃんのこと下の名前で呼んでたっけ…?)

舞台終了後、5名は楽屋を訪れた。

松 いくちゃ〜ん!おつかれさまー!

衛・橋 おつかれ〜!

生 あ、みんな来てくれたんだね〜ありがとう!

松 むっちゃよかったで!ほんまに感動してもーた!

生 ほんとに?よかった〜

◯ 良かったよ、生田。とても良かった。おつかれさま。

生 ◯◯さん、ありがとうございます。

橋(あ、敬語だし名前…さっきのは気にし過ぎかな…?)

生 あ、この後関係者で打ち上げがあるんです。皆さん参加されますか?

◯ 皆、どうする?俺は代表として出る予定だよ。

3 せっかくだし…行きます。

松村と衛藤は全く気付いていないが、橋本はなんとなく勘付いていた。

その後打ち上げに参加するも、それらしいミスを全くしない◯◯と生田。しかし逆にそれが橋本の疑心暗鬼を走らせた。

翌日、◯◯と橋本はいつも通り出社した。

◯ 奈々未、今日の予定は?

橋 …

◯ 奈々未?

橋 …いくちゃんとはどういう関係なんですか?

◯ え…?

橋 なんか怪しいなって思ったんです。付き合ってるんですか?

◯ 何もないよ。どした?急に?

橋本は急に声を荒げた。

橋 仮にも昔付き合ってた仲でしょ?!なんで何も言ってくれないの?!

◯ 奈々未…

橋 言ってくれないなら何のためにここまであなたと一緒に過ごして来たのかわからなくなるから、嘘つかないで。本当のことを言って。

◯ …そうだ。察しの通り、俺は生田と付き合っている。

たまたま廊下を通りすがり、橋本の大声に驚いた松村は廊下でこの話に耳をそばだてる。

橋本はその場で泣き出した。どうしたらいいかわからない感情が橋本の全身を包んだ。

あれから2人でずっと頑張って来た。男女の関係はないものの、◯◯が橋本を頼りにしていることもよくわかり、実際に付き合ってるんじゃないかって思えるくらい、傍にいた。

だからこそ…ショックだったのだ。橋本は泣きながら部屋を飛び出し帰ってしまう。〇〇も、かける言葉がなかった…

それを偶然聞いてしまった松村は、もう◯◯への想いは薄れていたものの、当時から生田と付き合っていたのか、橋本とも付き合っていたのか、自分には一切目もくれず他のメンバーと関係を持っていたことに腹が立ち、最もいけない行為へと走る。

同日、週刊誌にこのようなタレコミがあった。

「株式会社SILのイケメン社長は所属タレント食いのヤリ放題社長。新会社を設立した理由は、卒業した乃木坂メンバーと関係を持ちたかったからか?」

記事にされることを待っていた松村。

松 ◯◯さんがいけないんだ◯◯さんがいけないんだ…なんで私には一切何もなくていくちゃんとななみんなの…

そんな松村に、一本の連絡が入る。

松村は目を疑った。

? 今から会えないか?

秋元康からだ。

二人きりでは会ったことのない重鎮からの連絡、断るわけにはいかない。が、松村は嫌な予感がしていた。しかし、すぐに会いに行った。

康 松村、最近は声優もうまく行ってきていて、随分と忙しいんじゃないのか。悪いね、忙しいところ。

松 そうですね、声優とモデルを両立しているので、バラエティにも出させていただく機会が増えました。

康 それは良かった。それは、〇〇と一緒に考えたのか?

松 そうです。声優になろうって言ってくれたのも、〇〇さんですし、実際の出演交渉なども頑張ってくださって…

秋 それは感謝しないとね。

松 …そうですね…

康 朝、僕にこんな連絡があったんだよ。とある関係者から、とあるタレコミがあったと…

松 …

秋 今、この記事の公開は待ってもらっている。

松 えっ?!あっ・・

秋 惚れていたんだろう?〇〇に。

松 …

泣き出してしまう松村。

はい…生まれてきてから初めて、こんな感情になれる人に出会いました…でも、だからこそ、どうしたらいいか自分でも…

秋 それは良い経験だった…と、思うしかないな。でも、だからこそ、松村はここまで順調にやってこれたんだろう?

松 …

秋 裏切られたって、思ったか?

松 いえ、裏切られた、というよりは…

秋 実はな、ちゃんと松村が最近どういう仕事をしていてどう活躍をしているかというのは全部知っていたんだ。

松 …え?

秋 事あるごとに報告が来るんだ。〇〇から。

あいつはな、お前のことが大好きだ。頑張る松村だから好きなんだろう。勿論、女性としてというより、一緒に働くパートナーとして、メンバーとして、だ。

松 …

秋 あいつは乃木坂に入ったころから、お前たちのことを一番に考えている。こんな記事が出て、一番悲しむのは誰だと思う?

…今の乃木坂メンバーだぞ?お前は、後輩たちにまで迷惑をかけるつもりか。お前もあのスキャンダルで、その恐ろしさはわかっているだろう。

松 うっうっ…(泣き出す松村

秋 ここの携帯に電話して、掲載していいと言えば、記事になる…松村、お前の一存に任せる。

松 え…?

秋 煮るも焼くも好きにするがいい。〇〇が来てからの乃木坂を思い出して御覧なさい。

秋元は席を立ち、部屋を出て行った。

松 …うっ…うっ…

松村は涙が止まらなくなった。

松 もしもし…

松村の〇〇への想いは曲がった形で現れてしまったが、これまでを振り返り、愚かな行いを悔い、一度も靡かずひたすら真っ直ぐだった◯◯。この人への想いは胸にしまい、あの日語ってくれたこの人との夢をしっかり叶えなければ…そう思った。

一方、〇〇は生田に会えない日々が続いていた。

確実にスターダムを登っている生田は多忙を極め、連絡すら滅多に取れない状況だ。

会えない時間が二人に少しのすれ違いを作っていく。

そんな状況のなか、業務終了後、橋本の家へ向かった。

〇 ななみ…

橋本は明らかに目が腫れていて、ふさぎこんでいた。

橋 あれから…ずっと。付き合っていたわけじゃないけど、ずっとずーーっとそばにいたから…私きっと、勘違いしてたんだね…

〇 ななみ…今でも、ななみのことはずっと大切だ。俺にとってははいなきゃいけない存在なんだ。

橋 うん…わかってる。結局〇〇は、私のことを女としてではなく、仕事のパートナーとして存在価値を見出してくれてるってことなんだよね…どれだけ待ったと思ってるの…ほんとに…

〇 ななみ…ごめん。ななみのことは、人として、とても好きだ。一生の仲でいたいと思ってる。ごめん。

〇〇はあまりにまっすぐな目で橋本を見つめる。

橋 ふふっ

橋本は急に小さく笑った。

〇 え…?

橋 そうだよね…その真っ直ぐさ、素直さ、キラキラ輝いている感じ。そういうところを好きになっちゃったんだよね…

〇 …

橋 よし!もう大丈夫!!明日からは、ちゃんと出社します。ご迷惑おかけしすみません。

〇 奈々未…

橋 よし。代わりにさ、一杯付き合ってよ?〇〇の奢りで。

〇 …はは、そうこなくちゃ!喜んでいくらでも奢らせていただきます。

橋 じゃあめっちゃ高級な焼肉店かステーキいこう!笑

〇 どんとこい!笑

二人はその晩、古くから付き合っている友だちかのように話し、笑い、そして語り合った。

既にお互いにとって欠かせないパートナーとなっていたことは明らかなのに、それを確認し合うかのような一夜となった。

そのころ生田は携帯を眺める。

〇〇から連絡きてないなぁ…

生 〇〇のおかげもあって、仕事は順調だけど…会う時間をもっと増やしたいなぁ…まだ仕事かな…連絡も返ってこない…もし、女性と会ってたらどうしよう…

生田は不安を募らせた。

そして、今まで抱いたことのない感情を抱き、その気持ちを自分自身理解できないでいた。

生 誰かに相談できないかな…そうだ、玲香に相談してみよう。

ピロン♪

玲香の携帯が鳴った。生田だ。

生 玲香、ついに乃木坂卒業おめでとう!キャプテン、無事にみり愛に引き継げてよかったね~!今日ごはんとかどう?

玲香も生田同様に乃木坂を卒業していた。2020年2月22日だ。乃木坂の8歳の誕生日の日に卒業をしていた。

玲 いくちゃ~~ん!ありがと〜!うん、みり愛ならしっかりやってくれると思う!ついに卒業しちゃった…うん!空いてるからいこー!

数時間後…

久々の再会を喜ぶ二人。お互いの近況報告や新しい仕事などについて共有し合う2人。

玲香は以前〇〇に話をした通り、乃木坂LLCのバックオフィスメンバーとして、企画の業務に携わっている。

生 玲香…一つ相談があって…

玲 ん?どしたのいくちゃん珍しいね。

生 実は…

これまでの経緯や今の状況をすべて話した。

玲 え~~~~!!!!!そうだったんだ…(私も一回だけあったなんて言えない…しかも秋元さん公認の仲だなんて…)

生 で、それでね…最近、あまり会えてなくて…なんか、こういうときって、どうすればいいのかなぁって思って…

玲 いくちゃん、ばっちり恋してる感じでいいね~~~!!

玲香は相変わらずテンションが高く能天気だ。それがみんなから好かれるところでもある。

生 え~~そんなんじゃないよう…

玲 そうだね~そういう時は、素直に会いたいって言ってあげればいいんじゃないかな〜?男って、大概気づいてないから、ちゃんと言ってあげないとわかってもらえないもんだよ〜

生 お、先輩、参考になる~~玲香のくせに~~

玲 玲香のくせにってなによー!

2人はその後もキャッキャ笑いながら楽しんだ。

生 やっぱり久々にメンバーに会えると嬉しいね~

玲 うん、私もみんな活躍聞いたりしてるだけでとてもうれしいよ。

生 玲香も頑張ってね。

玲 うん、ありがとう!またご飯いこーね!

生 うん!

玲香と別れたあと、生田は携帯を取り出した。

〇〇、最近会えてないから、会いたい…ううん、違う、消して消して…うーん、なんて言えばいいんだろう…今何してる?!いや、これだと軽すぎるか…一人で悩んでいるところに、ある男から声をかけられた。

? あれ?いくちゃんじゃない?

生 わっ!あっ!三角さん!

三角とは、以前から乃木坂46SHOWなどでも共演したことのある俳優だ。

△ どしたのやたらびっくりしてるけど笑 久しぶりだね~元気??

生 あ~いや、大丈夫です。はい!お久しぶりです!

△ 何してんの?帰り?

生 そうなんです、友達とご飯してて…

△ そうなんだ!まだ時間早いし、軽くいっぱい飲んでいかない?

生 (どうしよう…でも断れないし…)はい、少しだけなら…

△ やった!じゃあここらへんだったらね、いいバーこの間教えてもらったからそこに行こう!

そこは、以前〇〇と二人で来た夜景がきれいな…秋元康と会い、〇〇と付き合い始めたバーだった。

生 (〇〇に会いたいなぁ…)

△ いくちゃん、最近仕事調子良さそうだね。

生 いえ、私というより、プロモーターの方がすごくて…

△ ああ、もともと乃木坂のプロモーターだった人でしょ?あの秋元康も認めるって、芸能界だとちょっとした風雲児だよね。

生 そうなんですね…

△ 結構いろんな女優があの事務所に入りたいって直接その人に交渉しているようなんだけど、全部断られてるみたいで、すごいよね、こだわりが。

生 (知らなかった…)そうなんですね…(なんでだろう…それに、やっぱり女優さんとのつながりもすごい多いんだろうなぁ…)

生田はずっと〇〇のことが頭から離れなかった。

一方、〇〇と橋本は、焼肉も食べ終わり、店を移ろうとしていた。

今日は朝まで飲んでもいいと思えるくらい楽しく、話が盛り上がっていた。

〇〇と橋本が向かった先は、とあるバーだった。

・・・そう、生田たちがいるバーと全く同じバーだ。

〇〇たちが着く頃、生田と三角は先に飲んでいた。

そして虚ろな表情をしている生田が突然ハッとした表情に変わった。

生 〇…

生田がさらに動揺した。なんと、橋本奈々未と一緒にいる。

彼女は秘書のはず…?なぜ…?まさか…?

生田はいろいろ考えすぎて三角のことはもう視界に入っていなかった。

生 〇〇…!

〇 絵梨花!

橋 おーいくちゃん!はろー!

〇〇と橋本は既に酔っぱらっていた。

生田はそれを見て憤る。

生 私は会えなくてやきもきしてるところに、なんでななみんと二人で飲んでるの?私よりななみんのほうが大事なの?ねぇなんで?!

◯ え?絵梨花どうし…

ダッ

生田は泣きながら走って出て行ってしまう。

〇〇は一瞬戸惑う。

橋 〇〇、ほら。

出口のほうに指を差す。

〇 ななみ、すまない!ありがとう!

〇〇は状況が理解できないながらも、とりあえず生田を追いかけた。

その場に残された橋本と、遠目で会話は聞こえないが一部始終は見ていた三角。

橋本は三角のテーブルに座った。

橋 まだ飲み足りないから、付き合ってくださる?

△ えっ…あ、はい!橋本奈々未さん…ですよね?(綺麗だ・・

橋本は小さく笑い、そして橋本と三角はゆっくり飲み始めた。

〇 絵梨花!!おい、待てって!絵梨花!

〇〇が生田に追いつき引き留めた。

〇 どうした…?絵梨花。

生 もう…わかんないよ…毎日毎日仕事で忙しくて、やっと休みができたと思ったら都合が合わなくて、でもそしたらななみんと飲んでるんでしょう?ほんとに私のこと好きなの?〇〇は…

〇〇は、そういう生田を今まで見たことがなく、初めて"女の子"らしい一面を見た気がした。

〇 ぷっははははは!

大きい声で笑った。

それにつられて生田はきょとんとした顔をした。

生 え…?なんで笑ってるの…?なんかおかしいこと言っちゃったかな…?

泣き顔だった生田も少しつられて笑みを浮かべる。

〇〇は生田を抱きしめた。

〇 俺も会いたかった。今日、奈々未と飲んでたのは、仕事でちょっといろいろあってね。彼女にお詫びということで付き合ってたんだ。これは本当。

生 ほんとに…?生田は抱きしめられてまた泣き出す…うわぁ~~

〇 ふっ(子どもみたいな泣き声だな…

生 あ、今バカにしたでしょ?!

〇 してないしてな~い!本当に俺も会いたかったよ。

生 うん…ありがと。

〇 …帰ろっか?今日は一緒にいよう。

生 …うん。

2人は仲良く手をつないで歩いて帰った。

そして、家に着くと、2人は2人の愛情を確かめ合うように、触れ合い、愛し合った。

翌朝、朝起きると隣に生田がいた。

久々にこんなにゆっくりな朝。生田は収録もなく、〇〇も仕事がオフの日だった。

生 ん…

〇 (こうして寝顔を見てると、大スターの片鱗はないんだけどなぁ…

生 ん…おはよぉ~~なんで笑ってるの?うーーーん

〇 ああごめんごめん。起こしちゃったか。

生 はぁ~~~!起きるかぁ~~!おはようーーーーー!!

朝から元気な人って人間っぽいよね。

〇 うん、そうだね。(よくわかんない

生 やっぱり朝が一番大事なんだよ~~

〇 うん、そうだね。

生 ちょっと!?ちゃんと聞いてる?

〇 うん、聞いてる聞いてる。さて、朝飯でも作ろうかな。

生 あ、私作る!

〇 え?あ、うん、大丈夫。俺作る。

生 あ!ひどい!私の料理なんて食べたくないんだ!

〇 え?いや、そんなことないよ、ほら。じゃ、一緒に作ろっか。

生 いーや!私一人で作ります。最近料理の連載もしてるからね。上達したところ見せてやる!

生田の料理音痴は乃木坂界では非常に有名な話だった。

〇 (まじか~大丈夫かな~~

自然とため息がこぼれる。

10分後…

生 きゃーーーー!

〇 ?!どうした?!

生 味噌汁作りすぎてあふれちゃった!

〇 (どうやったら鍋で味噌汁作る発想になるんだよ…

大丈夫、たくさん飲むよ。

生 ほんとに?!ありがとう!

出てきたメニューは…

白米・味噌汁(大量)・玉子焼き・納豆・肉野菜炒め だった。

〇 お…?(見た目と匂い的には悪くないな、、?玉子焼きも形になってる…)

生 ちょっと、じろじろ見すぎじゃない?!乃木どこやってた頃の私とは違うんだからねっ!

〇 うん、そうだよね、じゃあ、いただきます。

パクッ

まずは玉子焼きを食べてみた。

〇 お、おいしい…?!

生 ちょっと、なんで素直に喜ばないのよ。もう。

生田は口をとんがらせた。

〇〇は、意外にもちゃんとおいしい生田の料理にびっくりしていた。

白米も、野菜炒めもおいしい。

ほっと胸を撫でおろす〇〇が味噌汁を飲むと…

生 どう…?

〇 …あ…うん…

生 あ、やっぱり?なーーんか、味がしないんだよね…味噌はたくさん入れたのに…

〇 生田さん。出汁は入れたのかな?

生 出汁?味噌汁って、出汁、いるの?

〇 (やっぱり…

そうだね、ここにあるこれを、入れてあげよう。一煮立ちさせてみようか。

〇 はい。どうぞ召し上がれ。

生 わ!おいしい!めっちゃ味する!なるほど、味噌汁には出汁がいるんだな~~

〇 …ふふふっははははははっ!いや~やっぱり、絵梨花と一緒にいると楽しいね。仕事してるときはとんでもなくきりっとした顔してんのに、緊張感ないといつもチャーミングな絵梨花だよ。ははは

生 それ…褒めてる、よね?

〇 もちろん。

なぁ、絵梨花…

〇〇がゆっくりと話し始めた。

〇 ちゃんとしたのはお互い仕事が落ち着いてからしようと思ってる。

けど、、、、

一生俺と一緒にいてくれないか?結婚してほしい。

突然過ぎるプロポーズに、生田は驚き、慌てふためいた。

生 えっえっと、あの。。

ガタッ

バシャーーッ

〇 あっちーーー!!!!

〇〇の足に味噌汁がダイビングした。

生 きゃーーーー!!!ごめんごめんごめんーーー!!!

生田がタオルで〇〇の足を拭いている。焦った困った顔をしている絵梨花もかわいかった。

吹き終わる頃〇〇は、靴下を脱ぎ捨て、生田をひっぱり二人重なるように寝っ転がった。上に生田、下に〇〇。

生 きゃっ

〇 絵梨花。

生 はい…

〇 結婚しよう。

生 ……はい。

〇 秋元さんにも、報告しないとな。

生 ………うん。

こうして2人は結婚する決意を固めた。

第3章 #思わぬ激励

第4章 #覚悟

後日…

〇 秋元さん。お忙しいところ申し訳ありません。この度は、生田絵梨花さんとの結婚をご承認いただきたく、事前にご報告の場を設けさせていただきました。

秋 …

〇 …

秋 〇〇くん…君との付き合いも長くなってきたな。しかし、昔、恋をしなさい、とは言ったが、結婚はだめだ。

〇 え…

秋 もし結婚をするというなら代表を辞任してもらう。社長が所属事務所のタレントと結婚をするなんて言語道断だ。どうする?

〇 わかりました。では……

秋 わかった。そうしよう。

その後、〇〇は役員会議を緊急開催した。

〇 今日みんなに集まってもらったのは一つ大事な報告がある。

役 緊急とは…どういうことでしょうか…?何か経営上問題が…?

〇 相談がある。みんなに信任を問いたい。

役 え…?

・・・

〇 そうか。わかった。ありがとう。

役員会は重々しくも終わった。

役A あれで…良かったんですよね…

役B そうね…あとは〇〇さんに任せましょう。

翌日、〇〇は仕事終わりに会えないかと生田に電話をした。

秋元、現役員陣と話をした〇〇は、どういう話をしたのか。

ーーーーーーそれがついに明かされる。

〇 もしもし、今大丈夫?ごめん、忙しいときに。

生 ううん、今収録終わって帰ってるところ。どしたの?

〇 率直に言う。

別れよう。

生 え…?え、え、え、え?うそ…でしょ……?この間結婚しようって言ってくれたじゃない!なんで…?

〇 話はこれだけだ。明日からは今まで通り、社長と所属タレント、その関係性で進めよう。

プッ ツーッツーッ

生 え、ちょっと…!

すぐに再度かけなおす。が、〇〇は電話に応じない。

生田はその場でしゃがみ込み、呆然とした。

〇〇は、ほどなくして海外出張に出た。ワシントンに1か月の滞在だ。

生田からの連絡は一切確認せず、生田は抜け殻のようになった生活をしていた。

仕事にも精が出ない。

生 なんで…?あの時の言葉や行動は全て嘘だったの…?

涙が流れる。

〇〇のことを考えるだけで涙が出てきた。理由が全くわからなかった。 

生田は困り果て、ある人に連絡をしようとする。

ーーー橋本だ。

生 ななみんなら、何か知っているかもしれない。

ピロン♪

橋本の携帯が鳴る。

生 ななみん…今〇〇と一緒にいるんでしょ…?何があったか知ってる…?

橋 ごめん、その件に関しては私でも本当に知らない。役に立てなくてごめん。

〇 奈々未、行こう。

橋本はすっと携帯を閉じた。

ある日、生田は玲香と会っていた。

玲 え!!!なんで…?!

生 わからないの。。なんでか、、、〇〇のことを思うだけで、、、涙が出てくるの。。

玲 ……でも、〇〇さんに限って、そんなひどいことしないと思ってたのに…

生 そうだよね…

玲 きっと、何か理由があったんだよ…

生 なんでじゃあそれを私に言ってくれないのよ…結婚の約束までしたのに…私の存在ってそんなもんだったのかな…電話ひとつで別れるなんて…

玲 …

結局、なんの答えも出ないまま、二人はもやもやしたまま、その日は別れた。

ある現場の収録。

以前、共演していた三角とたまたま一緒になることがあった。

△ 生田さん、最近元気ないよね。なんか、役者仲間からも聞いたよ。なんかあった?

生 三角さん…いえ、特にないです。

△ 嘘だ。俺で良かったら、話聞くから、ごはんいこう?

生 …はい、有難うございます。

収録が終わり、二人はごはんへ出た。

収録の話など、他愛のない話をしていた。

△ 俺じゃ、相談相手としては力不足かな?

生 いえ!そんなんじゃないんです…ただ…

△ うん。

生 じゃあ、小野さんだったらどうしますか?例えば、自分にはわからない理由で突然二度と会わないと言われたとしたら…そして連絡も取れない、会えもしない…

△ なるほどね。

生 考えても考えてもわからないんです…

△ じゃあ、答えは一つだ。

三角は諭すように話した。

生 え?

△ 考えることをやめることだ。考えても考えてもわからないことを考え続けても、答えは一生出ない。

生 でも…

△ まずできることは新しい思い出を作ってみたり、新たな出会いを求めてみたり。仕事に没頭してみたり。今のままだと、きっと仕事にも影響出ちゃうと思うよ?

三角の言うことはその通りだった。

生 そうですよね。。

△ 手始めに、俺が今度行ってみたいところがあるんだけど、付き合ってくれないかな?

生 え…?

△ 今度の日曜空いてる?

生 あ、仕事はオフです…

△ じゃあ決まり。車で迎えに行くから、何時にここに来てもらえる?

生 はい…

三角の半ば強引な勢いに負け、生田は三角と出かけることになってしまう。

そして、日曜…

△ おはよう。

生 おはようございます。

△ さ、乗った乗った。

生 ありがとうございます…

△ 今日はさ、普段の悩みも忘れてとことん楽しんじゃおうよ。

生 はい…

それから△と生田は車で向かった。

その場所は、草津だ。

△ さ、ついたよ。

生 わぁ…

目の前には白根山の紅葉がきれいに見えていた。

生 すごい…きれい…

△ 俺もたまにこういうところ来るんだよね。演技のこと、仕事のこと、将来のことで悩んだりすることはたくさんあるし、そういう時は、自然の壮大さに触れると、自分の悩みなんてちっぽけに思えるから。

生 ほんとに、きれいですね。。

△ 今日はさ、リフレッシュプランばっちり組んであるから、楽しんでよ。

生 ほんとですか…!ありがとうございます!

生田が笑顔になった。

△ お!やっと見れた~

生 え?

△ いや最近さ、生田さんの笑顔、全然見れてなかったからさ。結構暗い顔してたよ?私何かありました~って顔。

三角がからかうように言う。

生 そうなんですね…よし!切り替えていかなきゃ!

△ お、それでこそだ!じゃあそろそろ次の場所に向かいますか~

生 どこですか?

△ 内緒♡

生田は三角に連れてこられるがままに。

△ ついたよ~

生 あ…!温泉…!

△ 自然に触れた後は、露天が最高でしょ?

生 最高です…!

△ うん、じゃあそれぞれ入ってこよっか。俺結構長風呂しちゃうから、のんびり入ってきていいよ。

生 はい、ありがとうございます!

それぞれ分かれて温泉につかる。

生 (そうか、私最近そんなに落ち込んだ顔してたんだ…改めなきゃな…みなさんに悪いことしちゃった。それにしても、温泉って最高~~~。疲れが吹き飛ぶ…最近一気にいろいろありすぎたから…

ずーーっと〇〇と駆け抜けてきた生田。

勤勉で努力家な彼女は、ずっと仕事に生きていた。仕事と最愛のパートナーに包まれてることが幸せだと思っていた。

だが、気づいた。

こういうのも、幸せって呼べるんだなぁ…

風呂を後にし、

△ じゃ~~~ん!露天上がりと言えば、これでしょ♪

生 わーー!牛乳!最高ですね!

△ じゃあ一気飲みね!よーーーい、どん!

生 あ、ずるい!

ゴクゴクゴク…

2人 ぷはぁ~~~~~~~~っ

△ さいっこうだね!!!!

生 ですね!!!!

その後、浴衣で周辺をのんびり歩きながら時間をゆっくり過ごした。

△ よし。じゃあ帰ろうか。

生 そうですね。

ドライブの帰り道、生田は爆睡してしまっていた。

? …さん!生田さん!起きて!着いたよ!

生 はっ!すみません!!

△ ううん、大丈夫。気持ちよさそうに寝てたから、良かったと思って。

生 なんとお恥ずかしい…

 あ、じゃあ、それでは。。

ガシッ

三角が生田の腕をつかむ。

生 え…?

△ 生田さん。俺のことちゃんと考えてみてくれないかな?俺だったら、こうやって一緒にのんびりしたり、演技のことで刺激しあえたりできる。一緒に切磋琢磨していくこともできる。きっと今までとは違う幸せを教えてあげられると思うんだ。

生 …

△ ま、結論は急いでないよ。また会ってくれればそれでいい。

生 はい…

△ うん、じゃあおやすみ。

生 おやすみなさい…

生田の心は揺れていた。

今までとは違う楽しみを見せてくれた三角に対し、少しだけ惹かれていた自分に戸惑っていた。

それから三角と生田は何度かごはんに行ったり、会う機会が少しずつ増えていった…

それから、2人で食事に行ったり、映画やミュージカルを観たり、美術館、博物館。

1日で行けるところなら大抵のところは行き切るほどとなっていた。

〇〇の出張も、当初一ヶ月の予定だったが、伸びに伸び、3ヶ月も空けるほどとなっていた。

彼らは就労ビザではなく、観光ビザで行っていたため、その間橋本と2人でずっとアメリカにいたようだ。

生田も徐々に三角のことを想う機会が増え、〇〇への怒りも薄れてきつつあった…

第4章 #覚悟

第5章 #思いやる心

その後、〇〇が日本へ戻ってきた。

その一報が、生田に届く。緊張した。

すぐに会いに行った。

コンコン

生 失礼します!〇〇社長!

シーン

ガチャッ

橋 〇〇さんは今外出中よ。

生 そうなんだ。失礼しました…

橋 …16時には戻るけど?

生 …15時半までスタジオでレコーディングだから、その後…

橋 そう。じゃあもしかしたら、会えるかもね。

橋本は、苦渋の決断だった。

ワシントン出張中、すべて〇〇から聞いてしまったからだ。

秋元から何を言われ、役員陣と何を約束したのか。

生田はレコーディングが終わってから、待っていた。すると…

コッコッ

革靴が鳴る音がした。

生 〇〇…!

〇 …奈々未、この後の予定は?

〇〇は生田のことを無視した。

橋 このあと16時半から桝坂LLCの来客がございます。

〇 そうか、わかった。

生 〇〇…!なんで無視するの…?

〇 今は業務中だ。下がりなさい。そして、社長に向かって呼び捨てとは聞き捨てならないな。

生 …!

生田は複雑な顔をした後、部屋を出た。

橋 〇〇…あれでよかったの?あれはちょっといくちゃんがかわいそうだよ…

〇 ななみ、業務中だ。その件は俺に話すな。

橋 ごめん。出しゃばった。

〇 いや、元はと言えば俺が悪い。すまない。迷惑をかける。

橋 ううん…

橋本は複雑な心境だった。

その日の帰り、大学時代の友人らと飲むために、とある店にいた。

そして、橋本は見てしまった。

生田と三角が会っているところを。

それを見た橋本は、更に胸が苦しくなった。

橋(本当に、このままでいいのかな…

友人 ちょっと奈々未ー?聞いてるー?

橋 あ、ごめん、なんだっけ…

友 ちょっとー!

その翌日。

所属タレントを含め、全社員が招集され大きな会議が催された。

そして〇〇から今後について大きな発表があった。

その内容は…二つ。

一つ目は、生田絵梨花、ワシントンに本社を置く世界的企業のNogi社のCMが決まり、更に本場アメリカで名作、「マンマ・ミーア」の主演を取った、というものだ。

流石に全員がざわついた。

その公演が終了後、〇〇が代表を退任する、ということだ。それが二つ目。その後の進退については明かされなかったが、役員Aがその後の後任として代表取締役社長の座につく、というものだ。

そこにいた全員が全員驚いた。

観衆がざわめく中、最も複雑な想いをもっていた人は…橋本だ。

総会は終わり、あとにする〇〇。

追う橋本。

橋 〇〇…本当に、これでよかったの…?

〇 ああ。絵梨花には、ワシントンでの仕事が終わった後にすべてを打ち明ける。俺が社長の座から降りたら、な。もしそれでも…

橋 うん…わかった。

生田は担当マネージャーを問い詰めた。

生 ちょっと!私そんなこと聞いてないんだけど?!

マ 私も今知ったの…

生 もう我慢ならない!!ちょっと行ってくる!!

生田は珍しく怒りの表情を浮かべて社長室のドアを開ける。

バン!!

生 ちょっと〇〇!!

〇 なんだ。

生 なんだじゃないよ…なんであんな大事なこと、一言も相談くれないの?大体最近おかしいよ…

〇 社長として、今後のSILと生田絵梨花という女優のことを考えた交渉だ。お前に相談して何になる。

生 そんな…ひどい言い方しなくても…

〇 MTGの時間だ。出ていけ。

バタンッ

締め出される生田。

生 なんなのもう…もうよくわかんないよ…

生田は怒りと悲しみが入り混じった感情となった。

ピロン♪

そこに連絡来た。

三角だ。

△ そろそろ、あの時の返事もらいたいし、今度、会える?

生 …

〇〇は秋元と会っていた。

康 よくやってくれた。大成功だね。

〇 はい。

康 で、この後の進退だが、以前話した内容と変わりはないかね?

〇 …はい。

康 そうか、残念だ…

〇 秋元さん、乃木坂LLC時代から、本当にお世話になりました。

康 これからも定期的に飲み交わそう。これからは、師匠と弟子というより、ある種ライバル関係になるがね。

〇 ライバルだなんて恐れ多い。。

康 とにかく、この1か月、やり遂げてくれ。その後のことは、どうあれ心から応援をしているよ。

〇 はい…有難うございます。

橋本が待っていた。

〇 奈々未、終わったよ。

橋 ほんと…不器用なんだから…

〇 悪い。ななみにも迷惑かける。

橋 ううん…

その場に松村、衛藤、深川が寄ってくる。

一同 〇〇さん!!!

〇 おう、みんなか。

衛 やめちゃうって…ほんとなんですか…?

〇 そうなんだ。すまない。乃木坂時代から本当にありがとう。みんなのおかげで今の自分があるよ。

泣き出す衛藤と松村。

衛 私…〇〇さんがいたからこれまで頑張ってこれたのに…

松 私も…いろいろあったけど、〇〇さんじゃなかったらここまでこれなかった…

〇 2人とも、見違えるほど成長したよなぁ。ほんとに。衛藤は、主演バシバシ決めて、ハリウッド女優としてももう名高いよな。

松村も、主演声優のアニメ、今何本あるんだ?今度、ディズニー映画の吹き替えも決まったそうじゃないか。もう二人とも俺がいなくても大丈夫だよ。ずっとずっと、応援してるから、たまにはご飯でも行こうな。

衛 この後は何をされるんですか…?

〇 うーん、まだ決まってないんだよね。笑

松 え…?

〇 また決まったら話そう。そうだ、今度、初期のころのタレントだけで、飲みにでも行こうか。パーッとやろう。

一同 はい!!!ぜひいきたいです!!

ピロン♪

生田の携帯が鳴った。

ーーーー橋本だ。

橋 大事な話があるの。土曜日会えない?

土曜日。

橋本は生田と会っていた。

生 どうしたの、大事な話だなんて…

橋 もうこれ以上は私が我慢できないから。

生 え…?

橋 いくちゃん、何があっても〇〇を信じられるって、言える?

生 うん…最近よくわからないことが多すぎるよ…

橋 うん、そうだよね。でも、よく考えてみて。

生 え?

橋 あの日から、何があって、何が決まった?

生 プロポーズされて、突然無理って言われて、ワシントン行って、仕事が決まって、辞めるって…めちゃくちゃじゃん…

橋 一環していることに気づかない?

生田は悩む。

はっ!という顔をした。

生 もしかして…

橋 もうこれ以上は言えないけど、一つだけ教えちゃうと、〇〇、あなたのことを話さない日はなかった。

生 …

橋 じゃあ、私もう行かないと。

生 え?それだけ?

橋 あなたの仕事のことで、〇〇と打ち合わせなの。社長を辞任するまでの1か月。あなたがどう過ごすかはあなた次第だけど、あなたの行動は〇〇に大きく影響を与えるわよ。

生 …急に、そんなこと言われても…

橋 子ども臭いこと言ってんなしょや。自分で何しなきゃいけないか自分で考えな。

生 …!

生田はどうすべきなのか、考えた。

自分はどうしたい?どうしていくべきか?

帰り道、生田はふと携帯を取り出した。

ピロン♪

三角の携帯が鳴った。

生 すみません…明日は会えません。

小 そうか、残念。また今度!

生 いえ…また今度ももう…すみません。

小 どうした?

生 この1か月、自分が何をすべきなのか、考えないといけないんです。

小 …わかった。じゃあ待ってるよ。また気分転換したくなったら連絡もらえる?

生 …はい。

翌日、生田は収録現場に来ていた。

収録に入ると、スタッフ、共演者からの激励でいっぱいだった。

ワシントン頑張ってきてね、日本人初のCM起用だね、歴史的な快挙だ、と。

生田は言われるがまま、笑顔を繕うことでその場をやり過ごしていた。

生 (やっぱりこれってすごいことなんだ…今は、目の前の仕事に集中しよう。

そこからの生田は、以前と同じくらい、仕事に打ち込んだ。

そこから2週間経ち、CM撮影とミュージカルへの出演に向け、〇〇、橋本とともにアメリカへ飛んだ。

〇 ついにだな…準備はできてるか?

生田は答えた。

生 はい。この一か月、このためだけに生きてきました。

〇 それならいい。あとはやるだけやりきろう。最大限サポートする。

こんなに自然と話せることに動揺はしたが、普通の会話ができたことに喜びを覚える生田だった。

そして…

撮影から舞台まで、無事すべての仕事が滞りなく終了した。

Congratulations!

千秋楽の打ち上げ時、現地メンバーからの拍手が鳴りやまなかった。

歴史的な実績を作り上げた〇〇と生田。

それを陰で支え続けた橋本。

帰国前夜、3人で最後のパーティを行っていた。

一同 おつかれ~~~~!!!!!!かんぱーーー!!

いつになく3人とも充実して楽しそうな顔をしている。

〇〇が話し始めた。

〇 ふぅ…ようやく最後の仕事が終わった…2人とも、本当にお疲れ様。

橋 いやいや…二人に比べれば私は何も。

〇 いや、やっぱり奈々未じゃないとこれはやり遂げられなかった。

橋 …ありがとう。

生 〇〇、おつかれさま。ありがとう。〇〇のおかげで本当に良い経験ができた。一個だけ聞いてもいいかな。本当に辞めちゃうの…?

〇 ああ、辞めるよ。

生 その後、どうするの?

〇〇と橋本は目を合わせ、小さく頷き合う。

〇 絵梨花、俺はSILを辞める。だが、新事務所を立ち上げる。

生 え…?

〇 生田絵梨花専属の事務所だ。

生 え…?どういうこと…?

ようやく、真実が明かされる。

〇 これが、秋元さんに出された条件だったんだ。プロポーズをした後、秋元さんに直談判をした。最初は当然反対されたよ。ただ4つ条件を出された。

一つ目、日本人初の仕事を獲得し、成功させること。

二つ目、別の男を差し向けるがそれを生田自身がクリアすること。

三つ目、代表を退陣し、新会社を設立し、生田絵梨花を連れて出ること。

最後に、これらを必ず生田絵梨花の耳には届かないようにすること。

生 …(まさか、三角さん…?)

ハッとした顔をして橋本を見る生田。

橋 だから言ったでしょ?何が起きてるかちゃんと考えなさいって。

生 そんなのわかるわけ…

〇 だが、絵梨花。最後に超えなきゃいけない関門がある。

生 え?

〇 ななみのいる手前申し訳ないが…

俺についてきてほしい。この3人で、新しい会社でやり直そう。

そして…今度こそ落ち着いたら、結婚しよう。

生 ずるいよ、ずるい…何も言わないで全部決めて…私がどんな想いをしたのかわかってるの…?

〇 本当にごめん。でも、言ったらだめだったんだ。まぁ、奈々未から少し入れ知恵はされたみたいだけど。

ごめん、と小さく手を合わせる橋本

〇 今も昔も変わってない。絵梨花、俺は絵梨花のことが大好きだ。もう何も弊害はない。一緒になろう。

生 もう…あれだけ泣かされて、あれだけ怒って、あれだけ嫌な想いさせられたのに…なんで、こんなにうれしいんだろう…

〇〇は生田を引き寄せ、抱きしめた。

橋本は、それを見て、大きくにっこり、笑顔になった。

それから3人は日本に戻り、新会社エリフラワーを設立。

今まで以上に仕事熱心に取り組み、生田絵梨花は世界に躍進、それを支え続ける〇〇と橋本。◯◯は代理店事業としてプロモーションプランナーの仕事も幾つか受けていた。

これから先、どんな困難があっても、この3人ならきっと乗り越えていけるだろう…

第5章 #思いやる心

#エピローグ

2年後…

リーン ゴーン

観衆 おめでと~~!!!結婚おめでと~~!!

そこには友人や家族らに見守られ、バージンロードを歩く、橋本の姿があった。橋本はあの後、なんと三角と付き合い、結婚が決まった。橋本の結婚式である。あれだけ安定した職に付いている人と言っていたものの、彼が本来持つ優しさに惹かれ、恋に落ちていた。

その列席には、衛藤や松村などの乃木坂メンバー、そして〇〇と、生田、そしてその子どものかずやの姿があった。

〇 ななみ、おめでとう!

生 ななみん、綺麗だよー!

笑顔で応える橋本。とても綺麗で、何より幸せな笑顔で溢れている。

〇 絵梨花、来年はもう一人子ども欲しいな。

絵 そうね…もしそうなったらななみんの子どもと同級生になるかもね!

〇 そうなったら幸せだな。かずや、弟か妹ほしいか?

か ほしいー!!

〇〇と生田は目を合わせ、にっこり笑った。

fin 

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