#171 ピュアブラックは美しい

以前、ほかの日記でも書いたかもしれないが、両親によりディズニーの英才教育を徹底的に施された私は、数あるディズニーキャラの中でもヴィランズが特に好きである。

『アラジン』のジャファー、『リトルマーメイド』のアースラ、『ヘラクレス』のハデス……など、魅力的なヴィランズは数あれど、一番好きなヴィランズは誰かと言えば『ノートルダムの鐘』のフロローだ。

基本的に子供向けの内容が多い中でも、そもそも『ノートルダムの鐘』はかなり大人向けな内容だ。幼い子供に説明のいる部分も多いが、しかし重厚なテーマの物語をディズニーならではのハイクオリティなアニメーションと軽快なリズム感で描かれると、とてつもなく惹き込まれて、その手腕に惚れ惚れしてしまう。

その中においてフロローは、自らの信じる正義に陶酔するあまり、カジモドを召し使いのように扱い、エスメラルダを我が物にしようと街を火の海にする、ディズニーヴィランズの中でもかなりな極悪非道ぶりを発揮している。

そんな話を先日のクリスマスパーティーで従兄弟と話しており「一番やべぇやつじゃん、フロロー」と言われて私は「そうなんだよ……だから、良い!」と言ったら私の母に「お母さん!この子オカシイですよ!」と言われてしまった。
母にまで「育て方間違えたかしら」と言われる始末だ。

だが、フロローのようなヴィランズは他と違う大きな点があり、そこが最大の魅力だと思うのだ。

まず、マレフィセントやアースラなどは、自身が悪である自覚と矜持を持っており、その力の誇示と支配を目指している。

しかし、フロローは自身を善人と信じており、自分の行うことは法そのものであり、行われて然るべきものだと信じて揺らがない。

真の悪は、善意で舗装された道の果てにあると思っている。善意は、本来なら世のため、人のためという思いから施されることが多い。しかし、それが行き過ぎると「自分はこんなに尽くしているのに、何故周りは理解しないのか」という思考に陥り、やがて自分を理解しない世界を呪うようになる。

かつては、あんなに清い善意から始まったことだったのに……

普通の人間なら、途中で自分の過ちに気付いて改めたり、方針を変えたりするものなので、行くところまで行く人間はそうそういない。
そういう意味では、フロローはまさしく最も人間らしいヴィランと言える。

ピュアブラックに至るまでの過程を思えばこそ、信念を全うしたその美しさは際立つ。
そう、ピュアブラックは美しいのだ。

それはそれとして、フロローは普通にキモキモおじさんだと思うし、ああいう死に方をしてくれて本当に良かったとも思うんですね。

ヴィランは散り際が派手なほどいいよね。

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