#99 最悪の一日
「なんで立て続けにこんなことが起こる?」
と嘆きたくなるほどひどい一日だった。
何やっても上手くいかないし、普段やらないミスはするし、突発的なトラブルがすぐ起こる。
お陰で一日中ずっとイライラしていたから、精神衛生的にもよくないし、またそのイライラでまたミスをする悪循環の連続だ。
まず、朝起きた時だ。
数カ所、身体に痒みを覚えて見てみれば蚊に刺されている。飼い猫シグマと共に起きると、いち早くシグマが犯人の蚊を見つけて、叩いて弱らせたところを仕留めることができた。
これはまだ良い。
その後、いつも通り朝ごはんの準備をして、豆乳をプロテインシェイカーに注ぎ終わってから冷蔵庫に戻そうとしたとき、手が滑って豆乳のパックを落としてしまった。
これがちょうど冷蔵庫の真ん前で、落ちた勢いでドボドボとこぼれた豆乳が冷蔵庫の下、そしてそこに敷かれたビニールシートと床の間にまで染み込んでしまった。
重たい冷蔵庫をズラしながら、大半の豆乳は拭き取ることができたものの、冷蔵庫の足の真下辺りはほんの少しまだ拭ききれていない。私一人の力ではこれ以上やりようがないのだから、半分諦めている。
その後、仕事に入った際。
朝早くから共有を依頼されていた資料を、言われた通り早めに送って先方からのフィードバックを待っていたら「あ、これ午前中で良かったから急がなくて良くなったんですよー」と言われる。毎朝日課にしている散歩の時間を犠牲にしてまで送ったのに!と怒り心頭。
急がなくて良くなったのなら、その時点で連絡して教えてくれや、この○○○○○○○○。
どうにか午前中の仕事が落ち着いて昼ごはん。
キッチンタイマーについている小さな磁石が外れてしまっていたので、セメダインで接着を試みる。ところが、一瞬指についてしまったうえ、肝心の磁石も本来の場所にスッポリ収まる前に固定されてしまったので、一部分だけ浮いた形になってしまった。
その後、仕事をしていたら今度は隣の寝室から大きな音が響く。何事かと思って見に行ったら、天井に突っ張るタイプのキャットタワーが倒れていた。ネジが緩んでいたところに、シグマが激しく昇り降りして倒したらしい。
そのせいで賃貸なのに壁紙の一部に小さなキズがついてしまった……
キャットタワーを再び立て直していると、もう色々と限界が来てしまう。そもそも、このキャットタワーの立て方も一人では出来ないのを無理くり一人でやっているのだから、作業していると著しく辛い。
軍手をはめて、キャットタワーのネジを締め直しながら、思わず呻き声を上げながらメソメソと泣いてしまった。なんと情けない。
加えて昨晩、できれば距離を置きたいなと思っている人から食事に誘われるLINEがきており、これも頭を痛くする原因となっている。
もう放っておいてくれよ……
生きていればこんな一日もある。
こんなクソみたいなことが立て続けに起こって、スマホもPCもクソみたいなミスタイプといつもの調子が出ないクソみたいな予測変換ばかりでどんなに私がイライラしても、世界に変化は訪れない。
昼頃、既に疲弊しきった頭でぼんやりしていたら外からお囃子の音が聞こえてきた。
外に出てみると、家の近くをお神輿が通っていくのがチラッと見えた。
私が受難にまみれた日の傍では、楽しいお祭りに心を踊らす人々もいる。世界は、残酷なようで不動の安定性を持って回っているようだ。