骨髄ドナー記録(末梢血幹細胞提供)
先日、骨髄バンク経由で血液疾患を抱える方のドナーとして自身の末梢血幹細胞(以下末梢血)を提供しました
提供には5日程度の入院を要するため、個人的に末梢血提供の入院や施術の流れについて調べましたが、インターネットには骨髄バンク公式サイトに書かれている以上の情報はあまり見つけられませんでした
というのも、骨髄提供に比べて末梢血提供は実施数が少ないせいで体験として書いている人が非常に少ないからなんですよね
そんな一方で実施数の多い骨髄提供の方は漫画からエッセイ、ブログに至るまで結構な数ヒットします
骨髄提供…全身麻酔の後、腰に針を刺して骨髄液を採取する方法
末梢血幹細胞提供…白血球を増やすG-CSFという薬を数日間ドナーに投与し、成分献血のように採取する方法
そこで、自身の体験を書くことで実際に末梢血のドナーとなった方が入院生活をイメージしやすくすることと、「主治医に質問できるけど何を訊いたら良いかわからない」といった状況に陥ることを防ぐ目的としてこのnoteを書くことにしました
しかし、これは私が入院した病院での経験に過ぎず、入院する病院によって対応は変わります。そのあたりは術前検診で訊くようにしましょう
持って行ったもの
紙コップ30個
寝巻上下セット×1
歯ブラシと歯磨き粉
入浴セット
バスタオル×2
フェイスタオル×1
ティッシュ箱×2
マスク(使い捨て)20枚くらい
ウェットティッシュ
身体拭き用のウェットタオル
取っ手付きゴミ袋
使い捨てのスポーク(スプーンとフォークが一体化した道具)×10
Nintendo switch
ネトフリに映画10本くらい入れたiPad
スマホ
財布
イヤホン
トートバッグ
リュックに上記の荷物を詰めたらパンッッッッッッッパンになったので病院の寝巻やコップ、タオルのレンタルを活用した方がしんどくないと思います。レンタルできるものや価格は病院によって異なるので確認しましょう
また、コロナ禍での入院ということもあり、面会&病棟外への外出禁止、差し入れの制限などがあったりして荷物が増えた感じですね
一日目(入院)
朝10時に骨髄バンクのコーディネーターさんと病院で待ち合わせ
入院受付の順番を待つ間に、提供を受けた患者さんたちのメッセージがまとまった冊子(骨髄バンクが発行している)と「採取後は転んだりする人多いから気を付けてね!」という注意の紙を貰う
入院受付で術前検診でも聞いた入院上の注意事項等の説明を再び受けてからコーディネーターさんと別れて病棟へ
病棟に着くと、ナースセンターはかなり忙しそうだった。受付の看護師の方に入院書類を提出して軽く病棟の案内をしてもらった後に病室に到着。病室は四人部屋となっており、ベッドの周りがカーテンで仕切られていて他の患者さんの様子はわからなかった
到着してすぐに術前検診を担当してくれた先生が挨拶に来た
「今回は本当にありがとうございます」とか、「病棟外に出ちゃうと強制退院だから気をつけてね~」とかの話をして先生は出て行った
その後、入院着(寝巻)に着替えて心電図とX線の検査を行った。待ち時間がそこそこあったので何か本を持っていけば良かったかもしれない
2つの検査が終わり病室に戻って血液検査を行った。これから毎朝血液検査をやるそうだ
さらに、主治医の先生がやってきて、挨拶と万が一の際に使用する薬品についての説明と同意書への記入が求められた
ここでいう薬品というのは、失血を防ぐための輸血剤や末梢血の採取に伴うカルシウム不足を補うための点滴のことである
主治医の先生の説明が終わるころにはちょうど昼食の時間になっていた
ちなみに、骨髄提供の患者は採取前日の夜から絶食があるが、末梢血提供の場合は食事制限は無い
スポークをテーブルに準備していると、運ばれてきたのは天ぷらそばだった。なんでも対応できると思って用意したというのに、初手で大穴が来てしまった…
苦戦はしたもののなんとか完食。味は普通で、決して不味くはない
検査結果が正常であることの確認後、15時くらいにG-CSFの投与が開始。投与は皮下注射で行い、それに伴って多少の痛みがある
また、投与の仕方について看護師さんに次のことを訊かれた
「1本で痛みが長いのと複数本で休憩あって痛いのどっちが良いですか?」
どっちも痛いんだ
じゃあ長いのでお願いします…
投与時の痛みは看護師さんいわくワクチン注射の痛みに近いらしい。確かに近い。つねられてる感じ。投与は30秒程度で終了
投与後10分経過すると打った左腕全体に締め付けられるような痛みを感じる。30分後には痛みはひいた
寝るまで特に症状は出ずに10時に就寝
いや全然寝れねぇ!!!!!!
10回以上目が覚める。一睡もできなかった
二日目
朝6時に起床。倦怠感が尋常じゃない
採血と血圧と体温測った後に朝食をとったが倦怠感のせいで箸が全然進まない。完食はした
試しにベッドの角度をつけて昼寝してみたら爆睡して体調が完全に回復した
病院のベッドでうまく寝れない人は角度調節を活用するといいと思う
私は頭をほんの少し上げるようにしてみたら寝られるようになった
病棟の別階にコンビニがあり、人の多くない時間帯であれば行って良いとのことだったのでカフェラテを買って飲んだ。おいしい!
朝の血液検査より白血球が通常4500程度のものが35000に増えていることを知る。順調~
2回目の投与は14時くらい?注射が上手かったのか、全然痛くない
投与後は暇なのでネトフリにとっておいた映画を観る。ポケットWi-Fiを含むWi-Fiの使用が不可だったためスマホで動画を観るのはやめておいた
また、看護師さんから
「採取後はカルシウム不足になったりするので、チーズやポカリ、ヨーグルトなどを用意して採取室に持って行ってください」
と頼まれる。自分で用意するのか。何買おうかな
夕食を食べた後に予約しておいたシャワーを浴びる
ドライヤーは借りられた。ただ、使ったタオルを乾かす場所が無かったのでゴミ袋に入れて保管することにした
この辺りもレンタルの方が良かった点だと思う
夜10時に消灯で就寝。ベッドを調整したおかげでぐっすり眠れた
三日目
いつも通り起きて採血と血圧、体温を測る。明確に薬による体調の変化を感じる。具体的に言うと急に起き上がったりすると頭と胸が痛むような症状
他には特に気になる症状は無い。
コンビニでコーヒーを買うついでにポカリとヨーグルトと6Pチーズを買っておいた。買ってきたものを冷蔵したいときは用意してあるマジックペンで名前と日付を書いて共用の冷蔵庫に保管するシステムだった
3回目の投与は長めの時間でゆっくりとやってもらったおかげで全然痛くなかった
しばらくすると段々と腰が痛くなってきたような感じがしてきた
担当医の先生と看護師さんからは
「痛みに耐えられないと思ったら薬出しますからいつでも言ってくださいね」
とは言われているものの、薬を貰うほど耐えられない痛みではない
白血球も46000くらいで順調に増えており、次の日には採取することになった。当日は早起きして採血と投与を行い、9時頃から採取するらしい。採取に際して看護師さんに
「採取中は手動かせないのにヨーグルトとかどうやって食べるんですか?」
と訊いたところ
「ちょっとわからないですね…」
わからないなら仕方ないな!後で確認してくれるとのことだったが、結局採取するまでわかることは無かった
普通に就寝
四日目
5時に起きる。眠い。採血と投与して朝食食べて輸血室へ。買っておいたポカリやiPadを持って行く
採血担当の方と挨拶してベッドに寝かされたと思ったら大きな電気毛布や湯たんぽで身体を温められる。手際が良すぎて面白かった
採血時に血液の通りをよくするために行う処置だそうだ。体温が37.0℃になる。暑い
足に血圧計、指に脈拍系?のようなものを付けられる
その後担当医の先生が来て腕に麻酔を塗った後に針を刺された
針を刺される感覚としては粘土にボールペンの芯を刺すような、抵抗のある刺さり方だった。ボールペンの芯を刺される粘土の気持ちがよくわかった
採取は大体3時間半くらい。身体は熱いし頭はボーッとするしでかなりしんどかった
採取時は暇なのでiPadで猫のドキュメンタリーを観ていた。イヤホンや動画再生のセッティングは採血担当の先生がやってくれた
「その猫の番組再生してもらっていいですか…」と頼むのは少し恥ずかしい経験だった
最初は猫の可愛さに癒されていたが、前述の通り体調が悪いので内容が全然頭に入ってこない。途中2時間くらい寝た
採取中は頻繁に体調を訊いてきくれたり、ベッドの角度調整や暑いことを伝えたら布団の中を換気してくれたりとかなり配慮してもらった
特に頻繁に訊かれたのがカルシウム不足による口内のしびれで、しびれがあると伝えるとカルシウムの点滴が行われた。点滴し始めて10分程度でしびれは引いた
猫のドキュメンタリーが一周したくらいでちょうど終了。猫がかわいかったことしか思い出せない
針を抜いた後に持ってきたポカリを一瞬で飲み干した。おいしい!こんなに汗をかくとは思っていなかった
輸血室の看護師さんにカルシウム補給としてミルキー(飴)を3つ貰う。1つは食べたが残りはポケットに入れたまま忘れて洗濯して無残な姿で先日発見された。申し訳ない
結局チーズやヨーグルトは食べなかった。食べ物はわからないが飲み物は言えば飲ませてもらえるのでペットボルストローがあれば便利だろう。
止血をして車椅子で病院に運んでもらった。
寝巻が汗でビショビショになったため、病院に来た時の服に着替えた。ここでもレンタルしなかったことを後悔した
体調はかなりしんどい。頭が少し痛い
遅めの昼食をとる。おやつとして買っておいたチーズとヨーグルトも食べた。おいしい!
急に立ち上がると胸と頭が痛くなり、腰に至っては痛いというよりも力が入らなくなって前屈みになってしまう。入院の時に貰った注意はこういうことか。ぎっくり腰がこんな感じだと友人に聞いたがそうなんだろうか。ゆっくり立つと腰の症状は出なかった
病室でダラダラしていると担当医の先生が来て、必要量が採れていたため翌日で退院が確定。やったね
コーディネーターさんと電話して体調や退院の旨を伝え、夕食の頃には頭痛はひいた。しかし、急に立ち上がるとやはり痛い。シャワーを浴びる分には問題なし。
五日目(退院)
採血して朝食食べて午前中に退院
帰宅後
2,3日後くらいまでは急に立ち上がった時の痛みはあった。それ以降はとくに問題なし。3週間後に受けた術後の健診でも異常なし
提供を終えて
今回の提供ではかなり暇な期間に入院できたので良かったんですが、またやるとなると仕事との兼ね合いで予定を開けるのは難しいと感じました。そうは言っても結構楽しかったので仕事が落ち着いた状態で通知が来たら多分またやると思います
提供先の患者さんからの手紙はまだ私の手元には届いていませんが、別に手紙はいらないので元気で居てくれればそれで良いです。私が提供したことで必ず助かるわけでもありませんしね
また、今回の提供にあたり、以下のアノニマスダイアリーの末梢血幹細胞提供ドナーの方の体験談を参考にさせて頂きました
https://anond.hatelabo.jp/20210425210135
上記の投稿では、実際に提供した方の入院生活や投与した薬の副作用、施術の内容についての体験が述べられており、こちらを読んだことで提供への不安をある程度取り除くことができました。ドナーとなった方はこちらを参考にするのも良いでしょう。投稿者の方、ありがとうございました(おしまい)