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【料理×化学】材料2つで作れるチョコレートムースのふしぎ①

材料2つでつくるチョコレートムース。工程も溶かして混ぜるだけと一見するといかにも簡単そうなのだが、どうにも安定して作れない。ググってみてもどうにも痒いところに手が届かない。そんなわけで勘所を自ら探るべく、レシピの原理を調べた記録をここにまとめる。

材料2つでつくるチョコレートムースとは

よくあるレシピは2種類ある。

  1. チョコレート+卵
    溶かしたチョコに卵黄と泡立てた卵白を混ぜるだけ、というまさかの生卵そのままレシピ。卵感ゼロ。滑らかでおいしい。

  2. チョコレート+水
    溶かして固めるだけ。こちらのムースはずっしり固め。正統派チョコ系レシピだと溶かしたチョコに水入れるなんて禁忌として書かれてるのに。

いずれもカカオ70%以上のチョコレートを使えだの、温めろだがしかし温めすぎるな、冷やしながら、うんぬん作り方に対する注文がまぁまぁ細かい。チョコレートの微妙な配合の差異や温度管理に依存する、簡単だが繊細な料理らしい。その割にちゃんと再現できるように厳密な指示はしてくれないばかりか理由も書いてない。雰囲気でレシピ書くのやめてほしい

仕方ないので自分で調べてみる。後者はフランスの物理学者が考案したレシピらしい(?)ので今度じっくりソースをあたることにして、今回は前者の卵のふしぎから。

チョコレート×生卵のレシピ

本題の前に前提知識を共有するためレシピをご紹介。作るためには見ないけど(プロっぽいから)、見るだけなら好きなこちらの方のチャンネルで。

自分が見た限り、ほとんどのレシピでその配合はチョコレート25gに対し卵1個。カカオ70%以上のチョコレートを使え、という点も共通している。

さて、このチョコレートを溶かして混ぜる過程、失敗するする。自分はちゃんと計量するし手先は器用な方だ。それなのになんかボソボソの固形物でてきたんだけど…とかザラ。
卵黄1に対して溶けるチョコレートは10gが限界、とか、分離しちゃったら15gの牛乳を足して、とか、温め直せ、とか、ググる限りみんな好き放題。原則から対処法を説明してほしい

そこで見つけたヒントとなる説明。どうやらこのレシピでは卵黄で乳化させるというのがポイントらしい。ほぅ。こちとら卵黄投入した瞬間分離した経験があるんだが?

とりあえず調べるヒントは得たので化学いってみよー。

チョコレート×生卵の化学

乳化 ~チョコレートの油分と水分を混ぜ合わせる

乳化とは本来混ざり合わないもの同士が、どちらか一方に分散し、均一な状態となっていることを言います。

太陽化学株式会社/食と健康Lab/乳化剤講座

あー、乳化剤とは界面活性剤のことなのね。洗剤のCMでよく見る人生ゲームのピンみたいなやつ。油脂汚れに疎水基がくっついて親水基を外向きに取り囲む事で、油脂の塊が水に溶ける、というやつ。

ちなみに、チョコレートはきちんとした温度管理の元作られたおかげでいい塩梅に油分(いわゆるカカオバター)と水分が混ざっているが、適当に溶かすと割と簡単に分離する。

水の中に油が粒子となっている場合を水中油型=O/W型(Oil in Water)と言い、反対に油の中に水が粒子となっている場合を油中水型=W/O型(Water in Oil)と呼びます。O/W型乳化の例が牛乳、アイスクリーム、マヨネーズなどで、W/O型の例がバター、マーガリンなどです。

太陽化学株式会社/食と健康Lab/乳化剤講座

だから「乳化剤」って言うのか。その仕組みを表す界面活性剤という言葉の前に現象として先に知られて名がついたパターン?
ちなみに英語だとEmulsifier。乳化した液体はEmulsion。

Emulsionは「乳を搾る」という意味のラテン語からきた言葉であり、ナッツなどから抽出した乳液を指した。

Wikipedia

日本語は語源に忠実に訳したのだろうか。同じく日本においても同様に命名されていたのだろうか。脱線したくなる気持ちをぐっとおさえて本論を続ける。卵黄って乳化剤として機能するの?

乳化剤 ~卵黄に含まれるレシチン

卵黄にはレシチンが多く含まれていて、レシチンは水溶性と脂溶性という反発する2つの性質を繋げてくれる働きがある。

パティシエWiki/卵黄・卵白の性質

なるほど。レシチンね。名前だけなら聞いたことある。疎水基と親水基持ってるってことよね。"レシチン"・"構造"、検索!

なにやら効能がたくさんあるけどキャパオーバーになるので今はスルー。
ベンゼン環にOH基が5個。このこが親水基で他は全て疎水基ぽい。と、高校化学の知識で判断してみた。確証がほしい。画像検索!

あー、マヨネーズね。乳化あるあるでマヨネーズ作るときに油と酢まぜるでしょ!って説明に使われるもんね。作ったことないんで知らんけど。キューピー買うし。それはさておき、これ見る限り、リン酸部分が親水基で、脂肪酸(炭素の鎖の端っこにカルボキシル基がついていて、極性が小さい)が疎水基という表現の方がそれっぽいか。

結論

というわけで、卵黄に界面活性剤として働くレシチンが含まれているため、卵黄はチョコレートとよく混ざるということでした。
チョコレートはカカオからできているし、カカオはカカオバターと言われる油分を多く含むはずだから、油分多めでそこに砂糖とか水溶性のものが混ざった水分との混合物のはず。なんかうまいこと油分と水分を混ぜて固めたのであろうこのチョコレートにヘタに水分投入しれたら分離してしまうところ、界面活性剤入りの卵なら大丈夫!ということなのだろう。
とは言え限界があるから分量にセンシティブ。だからカカオ70%以上を使えやら少しずつ入れろやら注文が細かいのね…。

まだまだ気になること

定量的な指標は?

もう少し定量的に知りたい気もする。カカオ◯%のチョコレートに対し乳化剤これだけ必要だからチョコレートと卵黄の比率でこの範囲なら溶ける、とか。失敗せずに作る上ではその知識のほうが重要なんだもの。それを最適化した答えがレシピの配合だろ、と言われればそうなんだけども。ただそこを理解したい。

水でどう溶けるの?

今回紹介しなかったもう一つのレシピ、チョコレートと水で作るムースは乳化剤なしでどうして溶けるのか?チョコレートを作るときと同様温度管理でうまいことやっている?何やら水の分量も厳密に計量しろということらしいが、だったらチョコレートの成分にだって依存するのでは?

分離したチョコレートはどうやったらよみがえる?

分離する理由がタンパク質が変性するとか不可逆な反応が理由ではないなら、一度分離しても復活させる術はあるのでは…と、思ったら、むしろ積極的に分離させてこうぜ式の乳化法があった。

一度乳化してしまえばあとはいくら水分を加えても大丈夫…ということはこれはO/W型(油が水に溶けてるタイプ)。自分は高確率で分離させてるからむしろこれでいいじゃん。

加熱しすぎたら何が起こる?

溶かすために再加熱させろ、なんて対処法もちらほら見かける。でもレンジでチョコレートを溶かすレシピには、加熱しすぎると元に戻らなくなるから気をつけろ、と大体書いてある。温度帯によってまた違う物理現象だか化学現象だかが起きる模様。焼いてガトーショコラか何かにする場合はそれが大事だったりするのかな。そっちは単に卵のタンパク質の変性で固まってるだけ?

疑問は尽きない…

つづく

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