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格闘家のHIITて効果あるんかい?

どうもアスレティックパフォーマンスコーチのタケダイグウジです。

以前有料記事で格闘家の為のピーキング戦略を書きましたがおかげ様で多くの方に読んでいただけているようです。その中でもHIITのプログラム作成や頻度など詳しく記載してます。

HIIT(High Intensity Interval Training=高強度インターバルトレーニング)て今は皆さん当たり前の様におこなってますが、15年以上前から僕は様々なプログラムを心拍測りながらおこなってきて効果は実感出来てます。

そこから、HIITの細分化を学び他の競技にも活かしながら選手のパフォーマンス向上に寄与しています。

理想をいえば試合がない時期でも週1くらいは追い込まれてほしいのですが、中々試合が近付かないとやりたくないのが心情ではないでしょうか。

さて今回は様々論文の結果からどの様な効果が期待できるのかを探ります。

僕のアイディアパートでは有料級のこと書いてますので参考にしてみてください。


格闘家におけるHIITの効果とは?

高強度インターバルトレーニング(HIIT: High-Intensity Interval Training)は、多くの格闘技選手にとって効果的なトレーニング法であることが近年の研究で明らかになっています。HIITの効果を複数の研究を通して解説しどのように格闘家のパフォーマンス向上に寄与するのかについて紹介します。

HIITの有効性についてのシステマティックレビュー

Vasconcelosら (2020) は、複数の格闘技を対象にしたHIITの効果に関するメタ分析を行い、HIITが有酸素能力の向上と乳酸除去能力の向上に寄与することを示しました。この2つの能力は、試合中の持久力と短時間での回復能力を向上させるために重要です。特にラウンド制を採用するMMAやボクシングなどの競技において、これらの効果が選手のパフォーマンスに大きな影響を与えると報告されています。

打撃系と組み技系競技における数値の差

打撃系競技(ボクシング、テコンドーなど)と組み技系競技(柔道、レスリングなど)では、HIITの効果に違いが見られます。Franchiniら (2019) の研究によれば、
打撃系競技の選手はVO2maxの向上が平均で約8〜12%と高い一方、
組み技系競技の選手では6〜10%の向上に留まる傾向が見られました。
これは、打撃系の競技においてより高い有酸素能力が要求されるため、トレーニングの成果として顕著に反映されやすいことを示しています。また、乳酸除去能力についても、打撃系の選手が組み技系の選手よりも高い向上を示すことが多く、特にラウンド間の回復の速さが強調されています。

オリンピック格闘技選手における適応

Franchiniら (2019) の研究では、オリンピック格闘技(柔道やテコンドーなど)の選手を対象に、HIITのトレーニング効果を検証しました。彼らは、HIITが選手の最大酸素摂取量(VO2max)を平均で約6〜10%向上させ、試合中の動きの効率を高めることが示されているとしています。VO2maxの向上は、持久力だけでなく、試合の最後まで安定したパフォーマンスを発揮するために必要な体力の維持にも繋がります。

格闘家に最適なHIITの処方

これは僕がおこなっているのではなくあくまでも論文ベースですが、Franchini (2020) は、格闘技選手に最適なHIITの処方について提案しています。彼の研究によると、1:2もしくは1:3のワーク:レスト比率が最も効果的であり、この比率は選手が短時間で最大限のパワーを発揮し、その後に十分な回復を得ることができるように設計されています。具体的なHIITの内容としては、30秒の全力運動(例:スプリント、バーピーなど)に対して60秒から90秒の休息を繰り返す形式が推奨されています。この処方に基づいたトレーニングは、ラウンド中の爆発的な攻撃とラウンド間の効率的な回復をシミュレートするのに適しています。

思春期アスリートへの適応

Seoら (2022) の研究では、思春期のアスリートに対して最適なHIITプロトコルを特定しました。この研究では、短時間の高強度運動と長めの休息を組み合わせることが、疲労耐性の向上に有効であるとされています。特に、若年の格闘技選手にとって、適切な疲労管理と回復の戦略は、成長期のパフォーマンス向上に不可欠であるため、HIITはこの年齢層においても有効な手段であることが示されています。

HIITをおこなうべき期間や頻度

  • 試合の4~6週間前から開始し、少なくとも3~4週間実施

  • 調整期間: 試合の1~2週間前にはトレーニング量を減らすことで、疲労を最小限に抑える

  • 頻度: 週3~4回が適切

いわゆるファイトキャンプといわれている期間おこない、そしてテーパリングして量を調整するのは僕と一致しております。頻度に関しては多いですね。僕が最大で3回、最近は2回にしてます。

具体的なアイディア

ここでは僕がおこなっているプログラムデザインやデータの活用方法を解説します。次のような点を考慮して、新たなトレーニング戦略やアプローチを提案することができます。

1. リアルタイムデータの活用
ウェアラブルデバイスを使用して、トレーニング中の心拍数、パワー、乳酸レベルをリアルタイムでモニタリングし、各選手のその時の状況に応じた最適な強度と休息時間をその場で調整することでよりパーソナライズすることが可能です。

2. トレーニングのモジュール化
打撃系と組み技系の異なる特徴に対応するため、HIITプログラムをモジュール化し、個々のアスリートのニーズに応じてカスタマイズします。たとえば、打撃系の選手には瞬発力を強化するモジュールを多く含み、組み技系の選手には持久力と回復能力を高めるモジュールを追加することで、格闘技といえども各競技に特化した最適化が可能です。

3. バイオメカニクス及びムーブメントトレーニングの応用
競技特性の動作分析を行い、格闘技特有の動きにおける効率性を高めるトレーニングを設計します。例えば、打撃時の足の踏み込みやパンチの体重移動を最適化するための動きを取り入れたり、タックルや投げの動作における筋出力のタイミングを改善することで、競技の効果をさらに高めることができます。これはゲームベースHIITのプログラムで活用出来ます。

4. 認知トレーニングとの統合
ラウンド中における意思決定の速さや判断力の向上を目指し、HIITに認知トレーニングを組み合わせることで、フィジカルとメンタルの両方を鍛えます。たとえば、運動中やインターバルの短い休息時間中に視覚的や聴覚でパターン認識や反応速度を鍛える課題を入れることで、判断力を強化することが可能です。

5. グループダイナミクスの活用
複数の選手達が協力するセッションを取り入れ、互いの競争心を引き出すと同時にチーム全体のモチベーションを高めます。
特にグループ内で役割を分担し攻撃と防御のシミュレーションを交互に行うことで、実戦に近い状況でのトレーニング効果を向上させることが可能です。

6. エコロジカル・ダイナミクスアプローチ
環境要因を積極的に取り入れ、変化する状況に対応する能力を鍛える。たとえば、不規則な時間設定やランダムな強度の変化を取り入れたHIITを行うことで、試合中の予測不能な状況に対応するための柔軟性を養うことができます。

これらのアプローチを20秒⇔10秒のプロトコルや3〜5分の間で試合形式プロトコルをおこなうのでも組み込めます。

まとめ:HIITは格闘家にとって必須のトレーニング手法

これらの研究からも明らかなように、高強度インターバルトレーニングは格闘技選手にとって非常に有効なトレーニング手法の1つです。有酸素能力や最大酸素摂取量の向上、疲労耐性の強化、個別の技術的適応など、様々な効果が期待できます。格闘技、特にMMAという競技の特性上、短時間での爆発的な動きと、その後の回復が繰り返されるため、HIITはそのニーズに非常にマッチしています。

今後も、トレーニング内容を選手個々に合わせて最適化しながら、HIITを効果的に取り入れることでより高度なパフォーマンスを発揮できる様にサポートしていきます。

参考文献

1. Vasconcelos et al. (2020)

Vasconcelos, B. B., Protzen, G. V., Galliano, L. M., Kirk, C., & Del Vecchio, F. B. (2020). Effects of high-intensity interval training in combat sports: A systematic review with meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. リンク


2. Franchini et al. (2019)

Franchini, E., Cormack, S., & Takito, M. Y. (2019). Effects of high-intensity interval training on Olympic combat sports athletes' performance and physiological adaptation: A systematic review. Journal of Strength and Conditioning Research, 33(1), 242–252. リンク


3. Franchini (2020)

Franchini, E. (2020). High-intensity interval training prescription for combat-sport athletes. International Journal of Sports Physiology and Performance, 15(10), 1–10. リンク


4. Seo et al. (2022)

Seo, M. W., Lee, J. M., Jung, H., Kim, J. Y., & Song, J. K. (2022). Identification of the optimal HIIT protocol for fatigue resistance in adolescent athletes. Kinesiology, 54(2), 10–20. リンク


5. Ojeda-Aravena et al. (2021)

Ojeda-Aravena, A., Herrera-Valenzuela, T., Valdés-Badilla, P., Cancino-López, J., Zapata-Bastías, J., & García-García, J. M. (2021). Inter-individual variability of a high-intensity interval training with specific techniques vs. repeated sprints program in sport-related fitness of Taekwondo athletes. Frontiers in Physiology, 12, 766153. リンク


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