塔(エンパイアステートメント)
アメリカ合衆国、ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区5番街350号。
1931年-1972年まで世界一の高さを誇る建造物だった。
(ワールドトレードセンターの竣工により、記録が抜かれた。9.11同時多発テロ事件により崩壊したが、跡地に再建築されたワールドトレードセンターが再び、エンパイアステートビルより高いビルとなった。)
想像してみる。
<地下鉄のぼれば5番街 見上げた>
<都市を賑やかす大晦日 歩いた>
102階ある巨大なビルの中には大勢の人間が詰め込まれていて、それを全く外側から眺めている。
その圧倒的な質量に、都市の喧騒は遠く聴こえなくなる。
巨大な塔(エンパイアステートビル)と自分だけが存在する静謐な一瞬が、訪れるのではないだろうか。
静謐なギターはその一瞬を。
やがて都市の人々を感知するかのように、ドラムが動きを与えていく。
ドラムはとても軽快だ。
規則的なリフレインは、時計のような正確さを感じる。
低音のリズムが安定しているからこそ、差し込まれるギターのメロディが印象的に活きる。
歪んだエレクトリックなリフが軽さをもたらしているのと、ハズしたような機械音(びよーんみたいな音)がアクセントになっていて、先の展開が予想できない。
抑え気味の前半だが、安定感と予想できない音たちが楽しませてくれる。
<ハレルヤ!>
<ニューヨーク午前0時>
<ベトナムは正午過ぎ>
<ニューヨーク午前0時>
<ヴァレッタ朝の6時>
ボルテージが一気に上がる。
(助走が一瞬あるので、親切。)
ここの歌詞凄いですよね。
検証してみました。
日本を基準にした時、ニューヨークは:+14時間
同上、ベトナムは:-2時間
同上、ヴァレッタは:-8時間
歌詞と実際の時差は合ってました。
ところで、ヴァレッタがどこの都市なのか知らなかったので調べました。
マルタ共和国の首都だそうです。
・・・震えましたね。
リズムを取って、<朝の6時>に合う首都がヴァレッタだったのか。
それとも、『マルタ』の都市ヴァレッタを歌詞にした所時差が<朝の6時>だったのか。
意図は分かりませんが、『Familly Record』でも登場した『マルタ』というワードに、関連性や特別性をつい探してしまいます。
都市と時刻のコーラスは3人で歌うので、好きです。
ライブだと忙しそうだけど。笑
<みんな傷ついた羊飼い演じた>
少し皮肉が滲む。
好きな歌詞です。
<地下鉄のぼれば5番街>と同じメロディで歌われるけど、階段のように登って行くメロディラインが気持ちいい。
<エンパイアステートビルの屋上から>、地上の人々をそんな風に皮肉気に思いながら見ていたのかな。
誰がどう思うか分からないが、その若干捻くれた達観さには心当たりがあり、高い所に昇った時こういう事を思わなかった事も無い。
感覚の共通点に、少し嬉しく思う。
<ハレルヤ!>
<ニューヨーク午前0時>
<ベトナムは正午過ぎ>
<ニューヨーク午前0時>
<ヴァレッタ朝の6時>
<ハレルヤ!>
<新宿午前0時>
<ニューヨーク朝10時>
<新宿午前0時>
<ニューヨーク朝10時>
高らかに歌われる<ハレルヤ!>には、祝福以外の意味を見出したくない。
エンパイアステートビルを見上げて、世界を想う。
あらゆる時刻のあらゆる都市が繋がっている事を想い、各都市の人々が健やかであれと願わずにいられない。
感性の問題だと思う。
建造物を目の当たりにして、世界の事を考える。
きっと、そういう人が作った歌なんだろう。
<血で血を洗う>
<血で地を洗う>
ちでちをあらう―悪事には悪事で、暴力には暴力で対抗することで、殺傷に対しては殺傷で報復することをいう。 また、血族どうしが争って、自分の利益のために同族を陥れることにたとえる。
血で血を洗う | 会話で使えることわざ辞典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス
『皿(ハッピーファミリー)』を思い出す。
完璧な皿に一点の装飾がつけば、それは血と字が変わる。
世界に想いを馳せた後の、戒めのような締め。
ハッピーファミリーはわずかなきっかけで、血で血を洗い地を洗う事になる。
それでもどうか、世界中がハッピーファミリーであり続けますように。
いや、今ですら分断されているか。
いつかそうなるように。
ハレルヤ。
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久しぶりに頭の中のイメージ通りに絵が描けました。