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脱皮後
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『投擲』から再登場のメロディ。
疾走感があってロックだった『投擲』とは異なり、ミドルテンポにダウナー感が滲む。
こちらもとてもよい。
『脱皮中』からのノイズをバチンと切って、全く違う音楽が始まったのかと思った。いや、メロディは一緒なのだが。一瞬バグる。
ワルツのような3拍子に鳴るギターと、短いノイズを破裂させたような打音のリズムが心地よい。
まどろむ蛹(さなぎ)の内側に切れ込みが入って、覗く外の世界は朝日色。
『Wether Report』のジャケット写真を眺めながら聴くと、そんなイメージが沸き上がる。
現実と夢の境目の楽曲という感じがする。
<あしたはどこへ行こう>
<孤立無援のまま>
<それだけできみは腰抜けではない>
短い曲だが、この歌詞がとても好きだ。
力強い歌い方では決してない。
むしろ淡々としている。
だけど、色々な瞬間にこの歌詞をふと思い出して前へ進めた事が幾度かある。
ひとりきり(孤立無援)でどこかへ行くという選択をする事。
「それだけで腰抜けではない」と言ってくれる歌を知っている事は、自分の人生においてとても幸せな事だと思う。
<きみが乗る戦闘機のなか 花 敷き詰めて 贈るよ>
<はじめから抜け殻だったら もっと世界が好きになれたかな>
こちらもとても好き。
何故か切なさが漂う。
そんな事を考えた事は無かったけれど、言われてみれば非常にしっくり来る。
初めから抜け殻だったらもっと世界が好きになれたかな。
そんな事を考えた事は無かったけれど、言われてみれば「分かる」と思ってしまう。
初めから空洞だった者と、詰まっていた物を失くして空洞を得た者。
『脱皮後』。
そんな切なさを感じながら、<それだけできみは腰抜けではない>と再び歌う。
それはもはや応援歌に聴こえる。
『船』で『大陸』を離れたらどこへ行くんだろう?と思考した。
まだ、まだどこにも辿り着いていない。
まどろむ蛹から体を剥がして、あたたかい細胞液を乾かして。
抜け殻にはなれなかった己を自覚して、脱皮後の生身でしか辿り着けない所へ、歩き出した。