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moodなmodeでネジを緩めるように

2024.11.07

渋谷CLUB QUATTRO

People In The Boxメンバープロデュースライブ『mood』


「右手奥、まだ空いておりまーす!」

整番は割と良かったが待ち時間が苦手なので、いつも時間ギリギリに入ってしまう。

誘導されるままに進むとそこに待ち受けるは例の柱

柱の後ろのスペースを、キャパシティに数えるな。

次こそは早めに行こうと決意を新たに、定刻通り始まったマンスリーライブ1発目。

人々の隙間から見える一瞬だからこそ、目に焼き付く光景がある。


[セットリスト] ※Twitterで流してくれる方、いつもありがとうございます。


比較的新しい曲で構成されたと感じる曲目。

驚いた(嬉しい意味で)のは『技法』。

アレンジで一番好きだったのは『新聞』。

後述。


1.懐胎した犬のブルース

ゆんわりとした、まろみのある音が会場を包む。

音源とは全く違うアプローチの前奏に、何の曲かと惑わされた。

これね・・・良かったですよ・・・。

ギターとベースだけで軽めに、優しく進行していく。

ドラムは1曲目休みなのかと、油断していたが故の勢いのある入りに驚いた。

テンションが一気に上がる。

背骨を何かが一気に駆け上がる。

心臓がワクワクと鼓動を打つ。

会場のボルテージが静かに上がった事を知ってか知らずか、ギターの可愛げある高音で締められた。

上がる歓声、1曲目から熱い拍手。

すっごいね・・・良かったですよ・・・。


2.戦争がはじまる

ちょうど切らしていたので助かる。

ライブで100回聴きたい曲。


犬の次はうさぎの歌。

いや、うさぎの歌ってのは自分が勝手にイメージしてる事。

小動物が小走りしているような、ちょこまかと可愛い音だからうさぎを連想している。


サビ前の「ラ、ラ、ラ」の低音コーラスが好きだから、選曲されて嬉しい。


3.自家製ベーコンの作り方

<心に闇などない>

この入りはいつもどきっとする。

心に闇が無いと言うならば、つまりその人は心が闇に侵食される事も知っている。

そんな哲学的な歌詞なのに、サビではベーコン燻してんだもんなぁ。

すげぇや。

ここまで比較的新しい曲かつ、チルな3曲。

穏やかさの中に力強い演奏で支える、"福井健太らしい"と感じた。


4.空は機械仕掛け

レア曲の意識は無いけれど、そういえばあまり聴かないかもしれない。

ちょうど切らしてたので助かる。

つまらないミームはさておき、マジで好きなので嬉しい選曲。

ピアノの連弾を思わせるギターのパートが好き。


<きみを根拠に生きていくから>

歌詞・・・良いですよね・・・。


<何が起こったって平気?>

<ぼくは強くなれたかな>

3人で歌うコーラスも大好き。

残念ながらステージは見えなかったので、12月と1月も演奏して欲しい。(強欲)


5.ミネルヴァ

いや~~わかるわかる。

ミネルヴァ良いよね~。

後方腕組み彼氏みたいな感想になってしまった。失敬。

別に他の曲が"そうじゃない"訳じゃないのに、ベースを堪能出来て、ドラムのノリ加減に踊りたくなって、力強い歌にテンションが沸き上がる『ミネルヴァ』が選曲された事が、観客と同じようにメンバーもこの曲が「好き」という1点で繋がっている気持ちになる。


観客も揺れ動いていた。

おかげで人の動きが少し出て、ステージを見られるようになった。

にも関わらず、青い照明に映し出された間奏でギターをかき鳴らしているであろう、波多野さんのシルエットが印象に残った。

影は揺れていた、楽しそうに揺れていた。


6.旧市街

馴染み深い、それでいて我々の大好きなベースのフレーズに歓声が上がる。

(ファン目線という意味で)キャッチーな選曲に、安心感すら覚える。

わしらは何百回でも波多野さんの「朝食に毒を密かに盛れ!長い土曜日を終わらせるために!」が聴きたいんじゃ。福井氏もそうなのかい?

嬉しくて人格がぶれました。

うーん、やっぱりPeopleのベースっていうと『旧市街』のインパクトはかなり強い。

嬉しい選曲。


7.技法

これはレアでしょう。

嬉しいですねー。

最近のまったりした曲も良いけれど、以前の攻撃的・ある意味暴力的な曲の方が好みっちゃあ好み。

<ぼくを叱る人はいないから>

<鼻血垂らしてワインにみたてて>

<固いパンで酷く打ちのめせ>

メロディーは軽くて可愛らしさすら感じるのに、歌詞の不穏さと意外とゴリゴリのベース・ドラムのギャップが素晴らしい。

あ~もう一度感想書きて~な(笑)

note.com

もうやってる。


<これは精神的不能のコメディーだ(笑)>

この歌詞初めて見た時衝撃でしたよ・・・。

その当時の勢いで作った物が、時を経て恥ずかしくなってしまう現象に身に覚えはあるけれど、自分のためでなく求めている観客のために、そういうショーとして作り続けて欲しい。

いや、これは感想というより自分への戒めだな。次いきます。


8.新聞

面白いアレンジ。

『懐胎した犬のブルース』ほど音の雰囲気とか、ムードががらりと変わっているわけではないのだが、意図的に崩されたリズムが面白い。

ワンテンポでも遅れたら「ずれ」になってしまうような、ギリギリまで崩された歌い方が心地よい。

ツアー前のグッズ紹介配信で波多野さんが「同じ曲を何度もアレンジして演奏し続けるジャズの凄さ」「ジャズを目指したい」といった事を呟いていたが、『新聞』のアレンジは即興性、その場限りのセンスで新しく生み出されるテンポ感がまさにジャズらしかった。

見当違いだったらごめんだけど。

あくまで、聴いている側はそのように感じたって話です。

何ていうか、"自由"を感じた。

自分がPeopleの音楽に求めてるものってこれだなと何となく再認識していた。

演奏者の手元から生み出される予測不可能な、それでいて気持ちのいい"音"が体を突き抜けて、背骨に刺さってゆく。

刺さった音は背骨と背骨の間に埋め込まれたボルト、ネジみたいなもんをゆっくり外していってくれる。

そのボルトやネジみたいなもんはほぼ繰り返しの毎日を生きている自分に埋め込まれた、"日常"や"会社"を動かすための部品で、生きていくためには無くてはならない物だ。

けれどあまりに深く埋め込まれると身動きが取れなくなって、やがて部品そのものになってしまう気がする。


最近はライブ盤をBlue-rayで買うようにしている。

DVDとは音が違う気がするからだ。

しかし1曲目『懐胎した犬のブルース』で「違うな」と感じた通り、いくら録音技術が発達しても、生の音、演奏者のエネルギーを肌で感じる事は、音楽の聴き方として全く違う。そしてライブの方が、はるかに凄い。

1曲目で書き忘れた感想があった。

「音がエネルギーとなって、身体が吸収している感じがする。なんかこの感じ知ってるな。トリコだわ。トリコがメシ食って戦闘後の身体が超回復するイメージ。」

いや本当にコレなんですけど、なんか最初は書かない方がいいかなって思って書きませんでした。

次からライブ前に「全ての楽器に感謝を込めて・・・」って言いながら合掌する事にします。すみません嘘です。


9.新曲

「○○っぽい」と言えない、既存の曲に当てはまらない新曲。

どちらかというとロックっぽい、テンポの速い曲ではあったが、お得意の別展開していく曲構成に感じ、印象を一言で言えない。

音源楽しみです。


10.石化する経済

象よって呼ぶ声をちょうど切らしていたので助かる。

メンバープロデュースライブといっても、新譜からの登板が多いのは良心を感じる。

まぁ全曲好きなんで問題無いんですけど。

<公平性?都合いいね!あなたにはあげないよ>

<想像してゾクゾクしてもあなたにはあげないよ>

もう背骨のボルトは全部抜け落ちているので、脊髄に音がダイレクトアタックですよ。

ゾクゾクしますね。


11.マルタ

最近ライブで聴く事は多い印象。

何度でもやってくれ。

歓声が飛ぶ。


この時の照明が、水の色みたいな青色と、例えるなら明るめの褐色のような、形容の難しい黄色だったのが印象的だった。

その色の組み合わせを見たのは初めてだと思うのだが、なんだか『マルタ』の照明の解釈が一致した気がする。

クアトロでしか出せない色なのか分からないけれど、柱への恨みが少し軽くなった。

良いじゃん、クアトロ。


12.あの頃

あ~~

良いですね~~~

個人的にはあまりライブで聴かない印象。

『あの頃』のギター、めっちゃ好きなんだわ。

荒々しくはないがスピード感があり、落ち着いた雰囲気ではないが穏やかな、不思議なメロディ。

この言い方がふさわしいか分からないけれど、"技術が綺麗にまとまっている"と言えばいいだろうか。

安定感のある演奏とリズムは踊りたくなる。

ああ、良かった、音源でも同じ事を言っていた。


13.スマート製品

ラストスパート、ロックで攻める『スマート製品』

<ビリーヴァーズ>のコーラスが格好いい。

ここに来て人々の間隔が緩まり、難なくステージも見られるように。

頭を振って演奏する波多野・福井両氏の姿がアツかった。


14.逆光

おかげさまで生きております。

好きです『逆光』。

ベース、コーラスともに福井氏大活躍、選曲に入ってて嬉しい。


15.聖者たち

これも良心を感じる選曲。

そしてベース大活躍、納得の選曲。


16.水晶体に漂う世界

ありがとうございます。

ライブで100回は聴きたい曲(2回目)。

何度だって聴きたいね。

<ステイ 気づかないふりをしていろ>

背を押すでもなく、寄り添うでもなく、どこか遠くを真っ直ぐ見つめて宣告される。

我々はステージ上の演者を見ている。

そこから演者の視線の先に、誘導されていく。

それがメッセージそのものだとしても、時代、のようなものだとしても、音楽そのもの、のようなものだとしても。


●MC●

-自転車代行

ダ「お酒を飲んだ後、自転車に乗っちゃダメですよ。…自転車代行ってあってもよくない?バイクで2人で来て、片方がお客さんの自転車に乗って片方は…」

波「いや、軽トラで来て、後ろに自転車を乗せ、お客さんを(助手席に)乗せた方が…」

健「美しいね。

波「つい現行の代行に沿って考えてしまうけれど。」

ダ「こうなると、代行の代行も必要じゃない?代行の代行の代行。」

波「(笑)その世界観いいなぁ。」

"現実的"を"美しい"と表現するの、面白すぎる。


-犬トート(グッズ紹介)

ダ「イラストでやってけるんじゃない?それぐらい良いよ。」

健「こんなラクガキみたいなので?」

やってけるよ!笑


-蓄光アクキー(グッズ紹介)

アクキーが取り出された瞬間、会場が真っ暗になった。

波「いや、蓄光してないのよ。蓄してないから。」

徐々に明るくなる会場。

健太さんがアクキーを掲げて蓄光しようとしたら、スポットライトに切り替わり光が1点集中した。

アクキーを掲げたベーシストが浮かび上がり、神々しさすら感じる。

健「ライト、オフ!」

この時点でかなりおもろかったのだが、健太さんが急に発した合図でスポットライトも消え、今度こそ真っ暗になった会場でアクキーが光っていた。

会場「フゥーーーーーーーー!!!」

今日一番盛り上がる会場。

曲より盛り上がってごめん。

照明が点き、満足そうな健太さんの「もう一回やっていい?」という言葉にスポットライト再び。

健「ライトオフ!!」

真っ暗になる会場、盛り上がる客席。

なんだこれ(笑)

ダ「一応、青色(アクキーの光)なんだけどね。」

バッチリ光っておりました!


-残り4曲

健「最後までぶっころしてくんで・・・よろしく。(照)」

おかげさまで生きております!!

消え入りそうなぶっころ宣言、侘び寂びがありました。(?)



憎し柱、とは思いつつ、ベースとドラムの振動が柱を貫通してこちらに届くのには驚いた。

格好いい音楽と、心地いいメロディの濁流に圧倒され、人懐こいバンドにありがちな「また来てね」なんてメッセージも無く、ただその芸術を見せつけ、我々は鑑賞し、やり切った彼らは退場していく。

アンコールは無かった。

会場アナウンスに寂しさを覚え、欲を言えばもちろんもっと聴いていたいのだが、明るくなってしまえば我々は箱を出ていかなくてはならない。

箱の中から箱の外の、なんでもない人間へ。


なるべく外したネジが、ゆっくり戻るよう。

次のライブまで、なるべくネジが固く締まらないよう願いながら日々を生きる。

そしてまた、ライブへ足を運ぶ。


ありがたいことに3ヶ月ともチケットがある。

次の楽しみがあるのは、嬉しい事だ。

それが生きる理由といったら大袈裟だけど、日々を生き延びる根拠ぐらいにはしてもいいかな、と思う。