プロトコル


「これめっちゃ素敵じゃない?」
「めっちゃかわいい。」
「いや可愛いは解釈違いだわ。」
「大変だな。」
「え?」
「あ、いや。いいね、それ。」
「でしょ。まりちゃんにもらった。」
「へえー。」

「なんかあった?」
「え?」
「大変なことあった?」
「ん?あいや、別に。そういう意味じゃない。」
「え、どういう意味?」
「え?」
「大変に別の意味ってあんの?」
「え、なにそれ、例えば?」
「いや、別にそういうのは無いんだけど。」
「???いいや。なんでもない、なんでもない。」
「変なの。」
「………………。」

「あー、好きな女とビビアンのライターお揃いとかしたかったな〜」
「ブランドのチョイスに世代感じるなー」
「マフラーとか、イロチでお揃いとかしたかったな〜」
「理想のカップル像が高校生の感性で止まってんなー」
「キーケース」
「しつこ。そんなに言うならそうすりゃいいじゃん」
「いや、もういいかなって。すぐモノ無くすし。身の程弁えようと思って。」
「なんだそれ」
「あの頃の理想とはかけ離れた、しがないフリーターじゃん。」
「仕事探せば?」
「いや、もういいかなって。今んとこはこの生活で満足してるし。」
「ふーん。じゃあいいんじゃない。」
「ああ、片割れのマフラーだけが手元にある…」
「じゃあそのマフラーまりちゃんとお揃いにしたらいいじゃん。お返ししたら?いろち。」
「いやも…。いや、まりちゃんは別に。」
「いいかなって?」
「いやいいかなというよりまりちゃんのことは別にそんなに」
「まりちゃんに謝れ」
「まりちゃん」
「ずっとお前のこと応援してくれてたんだろ」
「まりちゃん」
「うだつの上がらないミュージシャンやってるお前を」
「(二度見)…。まりちゃん」
「高価なものを差し入れしてあわよくばと思っているまりちゃんに」
「あかねさん」
「謝れ」
「あかねさん」
「謝れ」
「あやまる、はい。あやまります。ごめんなさい。」
「絶対許さん」
「あかねさんも謝ったほうがいいですよ」
「そこんとこどうなん」
「…」
「実際」
「…」
「その沈黙はYESだな」
「…」
「なにがダメなん。」

「で相談ってなに」
「いや、そうですね」
「…」
「…。マフラーお揃いにしようって話?」
「え いやいやいや、」
「ははは」
「あはは」

「自分の選択に納得してない人ってさあ」
「はい。」
「こっちが聞いても無いのに言い訳を述べてこない?」
「んー、ああ。確かに。」
「間違ってるかもってちょっとでも思ってる人ってさ、聞いてもないのになぜ自分がそうしたのか説明してこない?」
「あー、確かに。なんでなんだろうね」
「さあ、自分に言い聞かせてんじゃない。」
「ああー」
「自分はこれでいいんだって。」
「なるほど。」

「本当にそれでいいの?」
「なにが?」
「さあ。」
「…」
「…」
「…なにが?」
「自分で考えなよ。」


おわり

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高校生で止まってるのは私だよ ばくわら

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