だから僕は君に言った


『 ずっと、自分ひとりでどうにかしなきゃいけないと思ってきた。
誰かと居てもその考えは変わらなくて、頼れなくて、苦しいって言えなくて。
いるのに、側に。私を好きだと言ってくれる人が。なのに、ずっと孤独で。
そんな事も隠して笑ってたら、みんな私のことを幸せそうだって言う。みんな、私なら大丈夫だって、言う。
そう見える自分を作り上げたのは私自身なのに、その言葉を聞くと、私はそんなにキラキラしてる人間じゃないのにってまた傷つく。
何も、何も知らないくせに、…何も知らないくせに、って、嫌いな人ばかり増えていって、…違う。それを作ってるのは私なのに、そうやって人を恨んで、苦しくなって、またひとりぼっちになる…。

…嫌いだよ。私は私のことが嫌い。
知らないでしょ?こんな風に考えて生きてたなんて、何も知らないでしょ……。知らないくせに。
本当の私のことを知って幻滅したでしょ。……だから、何も知らないのに、私のことを好きとか愛してるとか、…言わないでよ…。』


ぼくはこれを聞いて黙り込んでしまった。
さっきまであんなにも、彼女のありのままが知りたいと、なんでも受け入れようと、そう思っていたのに。
先ほどまで抱えていた愛みたいなのが冷えていくのが自分で分かって、そんな自分が嫌になった。

ぼくはただ、彼女の次の言葉を待ってた。
助けてくれと縋って欲しかった。そう求められないと応えることができない。僕の彼女に対する恋の衝動なんてそれっぽっちのものだったんだ、と気付いてしまって、胸のあたりが痛かった。

でもぼくは彼女のことを嫌いになったりしないから、本当のことを言って欲しかった。嫌われてもいいんだから、ほんとうの気持ちを選んで欲しかった。でも、許されないから、彼女はこの狭い6畳の部屋を、水が溜まった水槽の中にいるみたいに生きて、深く潜って、生きてるんだ。

できれば何もわからないままがいい。
何も気付きたくない。


でも、気づいたら彼女に問いかけていた。
これを聞いて、ぼくはどうなりたいのだろう。
心臓がずっと痛い。
それでも僕は、彼女へ手を差し伸べる権利が欲しかった。
だから、



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