幸せなバカ舌
僕は美味しいものを食べるのが好きですが、いわゆるグルメではありません。B級グルメ的な食べ物やジャンクな食べ物も好きです。
それに関連して、自分は得だなぁと思う事の一つに、何でも美味しく食べられるという事があります。
有名店の老舗蕎麦屋で手打ちの美味しい蕎麦を食べたら、それは誰でも美味しいと感じると思いますが、僕の場合は駅の立ち食い蕎麦やスーパーのフードコートの蕎麦、果てはカップ蕎麦でも美味しいと思えるのです。
並べて食べ比べてどっちが美味しいですかと聞かれれば、もちろん手打ち蕎麦の方ですが、フードコートの蕎麦を食べた時に、どこそこの蕎麦と比べたら不味いという比較はせずに、この値段でこの時間で提供される事は素晴らしいし、これぐらいの味ならOKでしょうと思えるのです。
なので、どこで何を食べても文句を言う事はまずありませんし、常に美味しいと思えるので自分でも幸せだなと思います。
以前働いていた職場の上司が真逆の人で、一緒に食事をする機会が多かったのですが、それはそれは大変でした。
客先に一緒に行く時に、途中で昼飯を食べてから行く事が多かったのですが、田舎の山奥にある工場なんかだと、途中で食べる場所は限られています。ファストフードは絶対に嫌だとい人だったので、選択肢は限られます。
例えばあるお客さんのところに行く時に、選択肢がAドライブインとB食堂しか無く、それは本人も知っているのに「あのドライブインは味が濃すぎるんだよなぁ」「あの食堂は出汁の取り方がなってないんだ」と行く前から文句を言っていて、いざ入って注文する時もあれこれ文句を言って「不味そうだけど焼き魚定食にしとくか」と注文し、食べ始めると「不味いなこの魚」「この味噌汁は科学調味料のダシだろ」「煮物が甘すぎる」などと聞こえよがしに言うのです。
一緒に食べていて不快になる事この上なしです。
いや、これが何万円もする有名料理店ならわかるのですが、5~600円程度の田舎の食堂で不味いとか素材がとか言っても仕方ないだろうと思うのです。
お酒の好きな人でしたが、この調子なのでみんな一緒に行くのを嫌がり、飲めない僕も良くお供をさせられていました。
そういう時は自分で見つけたお気に入りの店に行くので、出て来る料理に文句を言う事も無く、確かに美味しいものが出て来るので、食べる方専門の僕には有難かったのですが、常日頃から食べ物にあんなにうるさいと、生きていくのがしんどくないかなぁ?と思ったもんです。
実は今日ちょっといいお肉でも食べに行こうかと目論んでいたのですが、先日うなぎなんか食べてしまったので、流石に立て続けに外食にそんなにお金はかけられないなとチェーン店の食べ放題の焼き肉屋に行ってきました。
向こうが透けて見えるような凍った肉を焼いている時に、あの上司はどうしているだろうかとふと思い出したのです。
僕より二回りは上の人でしたが、確か男の子が二人いて、当時はまだ小学生だったはず。あの子たちはファミレスとか回転寿司とか食べ放題の焼肉とか牛丼とかハンバーガーを食べさせてもらっていたのかな。
ひょっとして、小学生の頃からカウンターに座ってお寿司を食べてたりしてたのかな。
そんな事を考えながら、どこの部位なのか何肉なのかすらわからないような、ぼんやりした味の肉を濃いタレにつけて頬張り「美味しい・・よな」と、お腹一杯食べてきたのでした。