鯨を食べに(1/2)
先日、自宅から車で90分のところにある鮎川という小さな町へ行ってきました。
場所は牡鹿半島の先端あたりです。
ついでに女川町にも寄り道をしてきました。
鮎川という地名はあまり知られていませんが、ここはかつて捕鯨で栄えた町でした。
簡単に紹介すると、もともと藩政時代の頃から捕鯨を行っていた町でしたが、1906年(明治39年)に下関市の東洋漁業が鮎川に事務所を設けた事に端を発し、いくつかの捕鯨会社が設立されました。
1933年(昭和8年)には、捕鯨の本場、大地町から移り住んだ長谷川熊蔵によりミンククジラの捕鯨が開始されました。
鯨は捨てるところが無いと言われますが、鯨の廃棄物を利用して肥料製造が始まり、最盛期にはこの辺り一帯に28もの肥料製造会社があったそうです。
しかし戦後になると徐々に人口が減少し、一部の会社は鉄道の通じている女川町へ移転をしたため、町は衰退していきました。
そして1982年に商業捕鯨の全面禁止が採択されると、調査名目の捕鯨を細々と行うだけとなり衰退の一途をたどりますが、2019年に日本が国際捕鯨委員会を脱退した事で、翌年からミンククジラの商業捕鯨が再開され、今にいたります。
さて、そんな鮎川町ですが、残念ながらこれといった観光スポットがありません。
しかし一昨年「ホエールタウンおしか」という施設がオープンしました。
実はここには以前から「おしかホエールランド」という、世界でも珍しい鯨専門の資料館がありましたが、東日本大震災による津波で全壊してしまいました。
その時に流失しなかった展示品などをベースに、「ホエールタウンおしか」の中に、新たに「おしかホエールランド」が作られました。
紛らわしいのですが、「ホエールタウンおしか」という施設は大きく3つに分かれていて、1つが飲食店などが入るの商業施設、1つは学びの場としてビジターセンター、1つが鯨の資料館である「おしかホエールランド」です。
自宅を10時30分に出発して、丁度12時に「ホエールタウンおしか」に到着しました。
まずは今日の目的である昼食です。
飲食店は3店舗ありますが、以前も訪問したプラザサイトーという海鮮系がメインお店にしました。
息子は即座に「うに丼」。
僕と家内は「アワビ丼」と「金華山丼」で迷います。
「金華山丼」は、海鮮丼が8種類ぐらいの具なのに対して、簡単に言うと三色丼とでもいいますか、マグロ、うに、いくらの丼です。
結局家内が「アワビ丼」で僕が「金華山丼」にして、シェアする事にしました。
それに単品で鯨の刺身をつけました。
しばらくすると着丼です。
味噌汁と鯨の佃煮とマカロニサラダと漬物がついてきます。
いや美味しくてほっぺが落ちそうです。
特にウニはミョウバンを使っていないので、ミョウバンの苦みや独特の臭みが無く、甘くてコクのある美味しいものでした。
アワビの丼は初めて食べましたが、量もしっかりアワビ一個分が載っていて、食べるとコリコリした触感と磯の香が口一杯に広がり、これまた美味でした。
そこへ鯨の刺身が到着です。
たくさんの種類の盛り合わせなどもありますが、丼を食べるので刺身のハーフサイズを注文しました。
白いのと赤いのが見えますが、2つで1セットの5セット分になります。
ハーフサイズでなければ10セット分になります。
さてさて、この白いのと赤いのですが、この辺りの食べ方で紅白造りというそうです。赤身だけでも美味しいのですが、赤身には刺しが入っていませんので、皮の下にある皮下脂肪の部分と一緒に食べる事で、霜降りの様になるのです。
鯨を食べた事が無い人、もしくはかなり昔に食べたきりの人は、鯨って獣臭がするんでしょ?癖がありそう、脂身を食べるのはちょっと・・・等と思うかもしれません。
断言しましょう、臭いについては全くありません。
牛、豚、鶏は特有の臭いがありますし、魚もかすかな生臭さがありますが、鯨は無いですね。
そして、白い脂の部分はラードのようなイメージを持たれるかと思いますが、全然違います。
むしろ「白いのは貝を薄く切ったものです」と言われてもわかりません。全然脂っこくないのです。コリコリした感じで、噛んでいるうちに少し脂分が出て来るかなというぐらいで、見た目と違い全然あっさりしています。
特に癖のないミンククジラ(だと思います)という事もあり、余計に臭みを感じないのかもしれません。
赤身は、最近あまり食べる事のできなくなった、牛のユッケのような感じです。とにかく柔らかいのです。
また今度来たら、次は鯨の刺身定食にしようと心に誓うのでした。
思いのほか長くなったので、その2に続きます。
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