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映画「Wicked」の感想と変更点について(Playbill引用) 前編

韓国での公開に引き続き、アメリカでも映画が公開され、映画「Wicked」がついに本格的に観客に届き始めました。私も一足早く(日本の公開遅すぎる!)映画を見てきたので、その感想と、Playbillの記事「10 Changes the Wicked Movie Made to the Broadway Musical(映画「ウィキッド」がブロードウェイミュージカルに加えた10の変更点)」を引用しながら変更点についても見ていこうと思います。

※ネタバレあり注意

1. Ozian Designs

『ウィキッド』舞台版のファンなら、スチームパンク調の美学や動く「タイムドラゴンの時計」は強く印象に残る特徴でしょう。舞台版『ウィキッド』が1939年の映画『オズの魔法使い』とは全く異なるビジュアルになったのは、法的な制約によるものです。舞台版のクリエイティブチームは、映画『オズの魔法使い』のビジュアル要素を一切使用することが許されていませんでした。使えたのは、グレゴリー・マグワイアの小説『Wicked』の権利と、パブリックドメインであるライマン・フランク・ボームのオズシリーズの要素のみだったため、ルビーの靴やピンクのバブルドレスは登場せず、ドロシーは影でしか描かれませんでした。また、舞台美術のユージン・リーは、ファンタジックではなくスチームパンク風のデザインを選んだのです。

しかし、新しい映画版『ウィキッド』では、ワーナー・ブラザースが『オズの魔法使い』のデザイン要素を使用する権利を製作陣に与えたようです。そのため、この映画には1939年の映画を思わせるビジュアルが数多く散りばめられています。例えば、ルビーの靴(グリンダが「ポピュラー」でエルファバに投げるシーン)、マンチキンランドの渦を巻く黄色いレンガ道、グリンダのピンクのバブルドレス、エルファバが後ろにかごをつけた自転車に乗る姿(ミス・ガルチ風)、そしてドロシーとその仲間たちのカメオ出演など。ドロシーの三つ編みや青いギンガムチェックのドレスも忠実に再現されています。

とはいえ、グリンダが映画の冒頭で一瞬「タイムドラゴンの時計」に触れるものの、ユージン・リーが手がけた象徴的な赤い目のドラゴンを観ることができなかったのは残念です。舞台版ファンにとって、あのドラゴンが最も恋しい存在かもしれません。

10 Changes the Wicked Movie Made to the Broadway Musical

1939年の映画「オズの魔法使い」を知っている状態でミュージカル「ウィキッド」を観劇すると同じ登場人物でもビジュアル的に多くの部分で異なります。記事でも語られているようにそれらは法的な問題だったのですが、今回の映画版ではミュージカル版のビジュアルはそのままに、「オズの魔法使い」の代表的な要素を小ネタとして入れ込んでいます。

何がどう隠れているのか、映画を見ながら確認してみてください!!

1.ルビーの靴

「オズの魔法使い」の中でドロシー(主人公の女の子)が履いている靴。
ライマン・フランク・ボームの原作では銀の靴ですが、映画「オズの魔法使い」の中では視覚効果を狙ってルビーの靴になりました。結果、映画を象徴する小道具となりましたが、ミュージカル「ウィキッド」ではルビーではなく「オズの魔法使い」の原作通り銀色の靴として登場します。(エルファバが魔法をかけると照明の効果で赤く見える演出にはなっている)。

今回の映画「ウィキッド」でも銀の靴として登場するのに変わりはないのですが、小ネタとしてこのルビーの靴がエルファバとグリンダのナンバー「ポピュラー」で一瞬登場します。視覚効果のために銀からルビーにするだけあり、一瞬しか出てきませんがとても目にとまるのですぐに見つけられると思います!

2.黄色のレンガ道

映画「オズの魔法使い」

竜巻で飛ばされてきたドロシーに対し南の良い魔女(グリンダ)が、"家に帰りたいならこの黄色いレンガの道を辿ってエメラルドシティにいる偉大なオズの魔法使いのところに行きなさい"と言うこの黄色のレンガの道。

予告編を見てもわかるように映画版「ウィキッド」には黄色のレンガの道が登場します。エルファバとグリンダがオズの魔法使いに会いに行った後、この道は何色がいいか話す、そんなシーンもありました。

3.グリンダのバブルドレス

今回の映画「ウィキッド」のグリンダの姿としてよく見られる姿にピンクのドレスがあります。

映画「ウィキッド」

ですが、実際のミュージカルではこのドレスが出てくるシーンはピンクのドレスではありません。

ブロードウェイミュージカル「ウィキッド」初演

ミュージカル版では水色のドレスとシャボン玉という組み合わせなのですが、そもそもなぜシャボン玉なのかもご存じない方も多いのでは?

ということでまずは下の動画をご覧ください。(ボタンを押すだけで該当箇所からの再生がされるようになってますが、再生されない場合は21分からご覧ください。)

映画「オズの魔法使い」で北の良い魔女(「ウィキッド」でのグリンダ)が登場する際は、シャボン玉に乗りピンクのドレスで登場するので、「ウィキッド」でもシャボン玉の演出がされています。今回の映画「ウィキッド」では水色ではなく、映画「オズの魔法使い」と同様にピンクのドレスになったことが原作を思い起こされるとともに変更点となりました。

4.かごをつけた自転車に乗るエルファバ

「オズの魔法使い」をご覧になったことがある方はご存じかと思いますが、この物語の結末は夢オチでしたよね?オズの国でドロシーが経験したすべてのことは夢だったというわけなのですが、オズの国に行く前の、夢ではなく現実の世界ではミス・ガルチという人がドロシーの飼い犬トトを連れ去れさろうとします。ミス・ガルチとオズの国での西の魔女(ウィキッドでいうエルファバ)は同じ俳優が演じていることからもオズの国での出来事が夢である伏線となっているのですが、そのミス・ガルチを思い起こすような場面が映画「ウィキッド」に出てきます。まずはミス・ガルチがどんな姿なのか見てみましょう。
(ボタンを押すだけで該当箇所からの再生がされるようになってますが、再生されない場合は10分20秒からご覧ください。)

トトを後ろのカゴに入れた自転車に乗るミス・ガルチの特徴的な姿を映画「ウィキッド」では、エルファバがオマージュをします。
フィエロと一緒に子ライオンを逃しにいくシーンで、同じような自転車が登場し、ミス・ガルチがカゴにトトを入れたように、エルファバが子ライオンをカゴに入れるディテールまで再現されています。実際、「オズの魔法使い」ではミス・ガルチ=西の悪い魔女(エルファバ)と言っても過言ではないので、エルファバがオマージュをしているという繋がりを考えると面白いですよね。

その姿をすでに予告編で少し見れるので気になる方は下の映像から確認してください!(1分3秒〜)


5.ドロシーたちのカメオ出演

ミュージカル「ウィキッド」では権利の問題で影でしか描かれなかったドロシーとその仲間たちが黄色いレンガの道を歩いている後ろ姿を映画の序盤で見ることができます。一瞬しか映りませんが、「オズの魔法使い」でのあの姿が誰が見ても分かるように描かれているのを見るととても感動します。


6.「オズの魔法使い」に対するリスペクト

これは、Playbillの記事には言及がありませんでしたが、「オズの魔法使い」でのタイトルの表示の仕方に似せたビジュアルでウィキッドも始まりました。

この時代独特で特徴的なタイトル表示の仕方をこの作品で再現したというところが「オズの魔法使い」をとてもリスペクトして制作されたんだと改めて感じる場面でした。

2. エルファバの子供時代

舞台版『ウィキッド』では、エルファバの幼少期はわずかに触れられる程度ですが、映画版ではマンチキンランドで彼女がどのように育ったのかを実際に描いています。「誰も悪を悼まない (No One Mourns the Wicked)」のシーンでは、幼いエルファバとネッサローズが登場し、姉妹の関係性や、エルファバが肌の色のせいでいじめに遭っていた様子がしっかりと描かれています。

さらに、エルファバ誕生のシーンでは、注目すべき声の出演があります。オリヴィエ賞受賞女優シャロン・D・クラークが助産師役で登場しますが、その助産師はなんとクマ! そして舞台版で助産師がエルファバを形容する際のセリフ「ひどいわね (It’s atrocious)」が、映画版では「異様ね (It’s uncanny)」に変更されています。このため、続く父親のセリフ「これは不快だ! (It’s obscene!)」がより一層残酷に響く仕掛けとなっています。

3. 楽曲の変更点

楽曲の変更について触れると、今回の映画版『ウィキッド』第1部には、「Wizomania」のシークエンスを除けば新曲はありません。ただし、既存の楽曲にいくつかの変更が加えられています。

例えば、「ポピュラー (Popular)」のラストが少し長くなり、連続する3回の転調と「ラララ」の繰り返しが追加されました。また、「私じゃない (I’m Not That Girl)」の冒頭部分には新しい編曲が施され、「エメラルド・シティー (One Short Day)」にはより長いイントロが追加され、コーラスが"If you only had…"と歌うパートが含まれています。さらに、「自由を求めて (Defying Gravity)」では"unlimited"のフレーズが2回多く繰り返されるようになっています。

最も大きな変更があったのは、「エメラルド・シティー」の「Wizomania」部分(詳細は後述)と「センチメンタルマン (Sentimental Man)」です。「センチメンタルマン」では、新たにバレエシークエンスが追加され、タップダンスを披露する魔法使いや影絵人形劇が登場します。この曲がもっと長ければいいのにと思っていた方々にとっては、まさに願いが叶いました!

4. Wizomania

舞台版『ウィキッド』では、「Wizomania」のシークエンスは「エメラルドシティー (One Short Day)」の中で登場する、劇中劇のような短いパートです。これはグリンダとエルファバが初めてエメラルド・シティを訪れる際に披露され、オズの魔法使いについて歌います。舞台版ではわずか1節だけで、「エメラルドシティー (One Short Day)」のメロディーとはまったく異なるメロディーとバーレスク風のスタイルのため、アルバムで聴くと少し唐突に感じるかもしれません。

しかし映画版では、このシークエンスが大幅に拡張され、グリムリー(禁断の書)や魔法使いの歴史を詳細に描いた、まさに曲中曲と呼べる内容になっています。新たな歌詞が追加され、視覚的にも豪華な演出が施されています。

映画を観ているときには、以下のカメオ出演もお見逃しなく:作曲家兼作詞家のスティーブン・シュワルツ、脚本家兼共同脚本家のウィニー・ホルツマン、そして舞台版のオリジナルキャストであるクリスティン・チェノウェスとイディナ・メンゼル! メンゼルがエルファバとして披露した象徴的な「叫びのリフ」も登場するので、要注目です。

映画全体を通して、ちょこっとした変化はあらゆるところにありますが、ほとんどが原作通りに作られている中で、唯一新曲として入れられているパートを「エメラルドシティー」の中で聞くことができます。映画をまだ見ていなくてもサウンドトラックを聴くとすでに確認できますが、ブロードウェイオリジナルキャストの2人が結構な分量で登場します。原作ミュージカルファンにとってはとても歓喜ですよね。

また、楽曲に関して個人的にとてもうわ!と思った部分をご紹介します。
作曲家スティーブン・シュワルツがすでに本などで語っているように、エルファバのテーマとして特徴的な"Unlimited"のフレーズは映画「オズの魔法使い」の劇中歌「Somewhere Over the Rainbow」の最初の7音をオマージュしていることは有名な話です。(詳細知りたい方は下のブログをご確認ください。)

しかし今回映画版で新たに「オズの魔法使い」でのフレーズがオマージュされていました。

映画「ウィキッド」の1曲目「No One Mourns the Wicked 」のイントロでそれは確認できます。オマージュされた曲は「Ding Dong! The Witch Is Dead」という曲でこの場面はドロシーによって東の悪い魔女が死んだことをマンチキンの人々が喜ぶ場面ですが、「No One Mourns the Wicked」も西の悪い魔女(エルファバ)が死んだことを喜ぶ場面となっています。似たようなシーンの曲をオマージュとして新たに入れたことが粋ですよね。

(下の動画は「Ding Dong! The Witch Is Dead」(3:25~))

気になる人はすでに配信されている映画「ウィキッド」のサウンドトラックで聴き比べながら確認してみてください!!

5.  シズ大学でのエルファバ

舞台版『ウィキッド』では、エルファバが初めて登場するのはシズ大学の制服を着ている場面です。しかし映画版では、エルファバは学生ではなく、父親からネッサローズの世話をするために留まるよう頼まれています。この設定変更によって、エルファバがグリンダのルームメイトになる理由がより自然に説明されます。

舞台版では、二人が同じ部屋になるのは事務的な手違いによるものですが、映画版ではよりドラマチックな展開が描かれています。また、エルファバが最初に登場する際に身につけている美しい黒いコートが、彼女の強い印象をさらに引き立てています。


今回は10ある変更点のうち5個を紹介してみました。
ぜひ、原作も観ながら映画版と色々と比較し楽しんでください!

後編はまた出します!


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