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amulapo 国境なきワクワク - 後編[都村保徳]

「宇宙をきっかけに科学の力で世の中を盛り上げる」という理念のもと、amulapoでは様々なプロジェクトが進められています。前編・中編では月面極地探査実験やつくばのテーマパーク構想について紹介してきました。取材を締めくくるこの最終回では、amulapoが手掛けるこれからの取り組みの数々に迫るべく、代表の田中克明様にSpace Seedlingsの都村がお話を伺いました。

星みくじ

あなたは日常生活の中で、どのくらい宇宙を身近に感じているだろうか?一度立ち止まって、夜空に輝く星たちを見上げることはあるだろうか?僕は香川県の琴平町という田舎町で育ったが、幼い頃は家族とよく公園に行き、満天の星を眺めていた記憶がある。しかし、年齢を重ねるにつれ、都会に身を置くことも増え、学業や責任に追われる中で星との時間も段々と減っていった。最後に星空をゆっくりと眺めた日はいつだかもう覚えていない。

意識的な問題だという。都会だからではなく、忙しいからでもない。単純に意識をするだけで宇宙は近くなるのだと田中さんは語る。都会でも場所によってはちゃんと星が見えるところがあったり、忙しい時こそ息抜きの時間は大切なのだ。そこで、星を見るきっかけをつくる「星みくじ」というプロジェクトが進められている。

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衛星データを使って星が綺麗に見える場所を探し、モバイルアプリを通して私たちに情報提供をする。1時間以内でアクセスできるローカルなエリアでの星見スポットを提示していくことで、誰もが気軽に星空体験ができるのだ。また、「あなたの今日の運勢的に〇〇で星を見よう!」などといった占い的な要素を加えることで、観光誘致やコロナ禍での娯楽にも繋がるという。このように、必ずしも地方の自然豊かな場所に行かなくても、都内でも身近な場所で気軽にきれいな星空を楽しめるんだという新しい星空観望の在り方をamulapoは押し進めていくつもりだ。

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食と宇宙

エンターテインメントというだけでも幅広くいろんな分野がある中で、amulapoは「食」という観点にも注目している。購買視点で見た時に、私たちは衣食住の中でも特に「食」に頻度良くお金を使っていることが分かる。これから宇宙を世の中に浸透させていく上でも、「食」というアプローチは欠かせないという。つくばのテーマパーク構想や鳥取の月面開発一大拠点化が進む中で、宇宙バーや宇宙カフェなどといった宇宙をテーマにした飲食店の導入を検討しているのだ。

大阪の一角に星カフェ®SPICAという「星空をエンターテイメントに」をコンセプトにしたカフェバーがある。そこでは決まった時間に観望会が開かれ、店舗の屋上で天体観測ショーが楽しめたり、メニューに星や探査機の名前が使われたりと、宇宙を身近に感じられる場所となっている。このように一般の人が宇宙と楽しく触れ合える飲食店というのは、日本ではかなり珍しく、田中さんが訪れた際に「食」が秘める可能性というものを再確認したという。もちろんamulapoが宇宙カフェを展開するにあたって、いろんな人の力や助けが必要になってくる。その過程の中でも、沢山の人をどんどん宇宙に巻き込んでいきたいと願っている。

国数英理社宇?!

amulapoは教育の将来も見据えている。宇宙の授業を作ってしまおうというのだ。公立高校ではまだ難しいものの、鳥取や茨城の私立高校から導入していく話も進められている。まずはモデルケースとしてやりつつ、この活動が大きくなれば、文部科学省の認知も得られ、国の予算が割り当てられるということに繋がるかもしれない。

また、学校の在り方が変わりつつある中で、生徒が触れる教科の多様化にも期待をしている。現状、科学技術の発展に伴い、あらゆるもののコード化が進む中で、「一体先生はどこまで教えなければいけないのか?」という問題が浮上している。学校の先生が全てのことを、網羅的に徹底的に教えることが難しくなっていくこれからは、ファシリテーターとしての先生が主流になるだろう。授業では、研究者や専門のエキスパートたちが、宇宙に限らずいろんな分野で最先端の情報を披露してくれる。このような流れの発端として、amulapoが宇宙の授業を作ることには非常に大きな意味があるのだという。まさに教育改革を起こさんとばかりのamulapoの姿勢に感服した。僕の未来の子供にも、この宇宙の授業を受けてほしいと強く思った。

この構想も含め、教育に対する田中さんの熱意も垣間見えた。日本の教育はゼネラリストが育つと言われていて、世界から評価されている。しかし、蓋を開けてみると、みんなイヤイヤ勉強していたり、学びが進学目的になっていたりするのが不思議でしょうがないという。一般的に幼い頃はみんな好奇心旺盛で、探求心が育まれるものだが、義務教育に突入するや否や勉強嫌いになるという矛盾が生じているのだ。この問題を解決するためにも、最終的なところをどんどん開示して、学びの末にできることを見せ、学びに内発的動機を与える必要があると語る。amulapoが目指す教育改革には、宇宙や科学技術といった分野で、今の生徒たちに学びのきっかけと目的を与えたいという想いが込められていた。

最後に

amulapo田中さんとの取材を通して感じたことがある。宇宙に近づくにつれて県境、そして国境が薄れていく気がするのだ。

地方創生のための宇宙、
観光資源としての宇宙、
娯楽としての宇宙、
教育のための宇宙。

宇宙に行く価値を考えさせられたり、学びの目的をもらったり、科学技術の楽しさを教わったりする中で、そのどれもに共通してワクワクが存在するということ。amulapoが拡げる宇宙エンターテインメントの世界は人を繋ぐ力がある。ワクワクは人から人へと伝染していく。それは知識であり、体験であり、感情でもある。コロナが蔓延するこの現代社会において、その感染力をも上まわる宇宙のワクワクが今、あなたのもとに届く。今夜の星空はきっと、いつもより美しく見えるだろう。


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取材の様子:amulapo田中さん(中央下)、SS都村(右上)



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田中克明(たなかかつあき)

宇宙ロボットの専門、博士(工学)。(株)amulapoの代表取締役としてxR、ロボット,AI等のICT技術で宇宙体験コンテンツの制作を行う。(株)ispaceのロボティクスエンジニアとして月面探査車のモビリティの設計にも従事、その他、経産省ELPISから派生のELPIS NEXTの理事、早稲田大学の招聘研究員、TECHNO-FRONTIERの航空宇宙委員、日本かくれんぼ協会の研究員などを兼任。2050年に向けて宇宙を中心に科学技術を促進。最高峰の宇宙体験の開発を目指している。


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都村保徳(つむらやすのり)
英ブリストル大学 航空宇宙工学科 4年

【専門・研究・興味】
軌道力学、宇宙機ダイナミクス、プログラミング



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