エイハブの六分儀-2023.11月号 西 香織
【今月の星空案内】
そろそろ今年の総括と来年への準備など、何かと気ぜわしい頃でしょうか。
まだあと1か月はありますが、今年はどんな一年でしたか?年末には、露天風呂につかって星を見上げながら振り返るのはいかがでしょう?
リラックスしてあったか~い気持ちで星を見ていると、感謝が溢れてくるかもしれません。
ついでに、ふたご座流星群も私の中では露天風呂案件です。他の流星群と比べて早い時間帯から明るい流星が多く見えますので、ぜひ一度挑戦してみる価値はあるかと。
ただし、寒いですのでくれぐれも湯冷めして風邪を引いてしまわぬようにご注意くださいね。
12月14日(木)の宵時から15日(金)明け方にかけて、特に午前4時にピークを迎えます。新月のすぐ後ですので、おススメです。
北極星は、年中夜空で輝いているわりにそれほど見上げられない星No.1?当たり前すぎて注目されることが少なめかもしれませんが、北に正確にナビゲートしてくれる大切な星です。
そんな北極星を導きだすには、この時期は、高く昇ってきた北の空のカシオペヤ座が頼りになります。5つの星を結んで描くWが目をひきますね。
両端のラインをのばして二つの山を、富士山のような高い一つの山にします。その山頂と谷間を結ぶ線を、山の下方に5倍伸ばした先に北極星が輝いています。
もう一つの簡単な北極星の見つけ方は、天頂からやや西に傾き始めた秋の四辺形を利用する方法です。2等星と3等星でできたペガスス座の胴体にあたる四角のうち、南を向いて立って見上げた時、縦の東と西のラインを後方に向かって思い切って「えいやっ」とのばして二本の線が交わるあたりに2等星の北極星が見つかります。
カシオペヤ座の東となりには、アンドロメダ座があります。秋の四辺形の北東の星、アルフェラッツから北東方向に伸びた細長いアンドロメダ姫の頭文字アルファベットのAという文字が目じるしです。
星座絵では、古代エチオピア王家の美しい姫君の両手首が鎖で縛りつけられていますが、そのような趣味ではなくて国の民を救うためにいけにえになっている姿です。
古代エチオピア王家の物語は、プラネタリウムの晩秋の風物詩です。ぜひ色々な館に聴きに行ってみてほしいです。解説員として最初に覚えて語った神話だ、という人も多いのではないかな、と思います。
天の川銀河に最も近い渦巻銀河であるM31、アンドロメダ銀河は、アンドロメダ姫の右の脇腹のあたりに位置しています。
盲腸のエリアですが、当然Мは盲腸の頭文字ではなくて、18世紀に活躍したフランスの天文学者シャルル・メシエのМです。
彗星観測の邪魔になる恒星以外の天体を1からナンバリングしたもので、それらはメシエ天体と呼ばれています。メシエカタログのラストはM110で、実はシャルル・メシエが亡くなった後に登録されていて、正しくはメシエ天体ではないとも言われたりしますが、M31のお伴の銀河でアンドロメダ銀河のすぐ近くにある天体です。
アンドロメダ銀河は、250万光年彼方のお隣さん。双眼鏡や望遠鏡などを使わなくても肉眼で楽しめる、最も遠くにある天体です。
星がよく見える場所で、もしもアンドロメダ銀河の淡い光のシミを見つけたら、人類がお猿さんと進化の道を分かったはるか昔にあの銀河を旅立った光が、あなたの目の網膜にふわりとたどり着いたことになるのです。
ささやかな、しかし限りなく壮大な遭遇を楽しんでくださいね。
真夜中過ぎには、冬の星座たちが夜空のステージへ躍り出ます。今年からしばらくの間、夜中の明星とよばれる黄色くて明るい木星が近くで輝いて、より華やかですね。地上のイルミネーションに決して負けていません。
それでは最後に、月と惑星の動向をお伝えします。
12月9日(土)はスピカと有明の月と金星が一列にならび、翌10日(日)には、繊月と明けの明星の金星がかなり接近します。
明け方の東の空、おとめ座での出来事はシャッターチャンスです。12月18日(月)の夕方、南西の空で月と土星がみずがめ座で寄り添い夜空をドラマチックに演出。
12月22日(金)23時24分、冬至の夜におひつじ座のエリアで、夜空で屈指の明るさを誇る2つの天体、月と木星が近づきます。
どうぞ、空で繰り広げられる身近な天体ショーを楽しまれますように。
さて、星の輝きに見とれている時、現状を憂いたり未来を思いわずらったり過去を後悔することから、ひと時離れることができるような気がしませんか。慌ただしい時期だからこそ、心と体をピタリと一致させて、星の光とともに豊かな今というその瞬間を味わって過ごしていただけたらと思います。
西 香織
コスモプラネタリウム渋谷「星を詠む和みの解説員」。幼い頃からプラネタリウムに通う。宇宙メルマガTHEVOYAGE 「エイハブの六分儀」で毎月の星空案内を担当。そそっかしく、公私ともに自分で掘った穴に自分でハマり(ついでに周囲の人も巻き込んで)大騒ぎしながらも、地球だからこそ楽しめる眺めを満喫する日々。