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エイハブの六分儀-西 香織

【早春の星空案内】

まだ肌寒い夜が続きますが、ふと夜空を見上げると、冬の星たちが少しずつ西へと傾き、春の星座が顔をのぞかせていますね。オリオン座冬の大三角がゆっくりと星のステージを降りて、代わって東の空からしし座おとめ座が昇ってきます。星々も、季節とともにそっと歩みを進めているようです。

しし座おとめ座の下にはにょろろろろーんと、88星座の中で最も長く巨大な星座も姿を現します。うみへび座です。それはアミモーネの森の怪物ヒュドラの姿です。怪力のヘラクレスに退治されて星になりました。助けに飛び込んで一瞬で星になった親友の化け蟹カルキノスのかに座とともに春の空で伸びきっています。端から端まで全部昇るのに8時間ほどかかる大物であります。2等星のアルファルド、孤独なものという名の孤高の星の別名はコル・ヒドラエうみへびの心臓です。ちなみに、ヘラクレスは夏の星座ヘルクレス座となっています。

そういえば今年はへび年ですね。他ににょろろん系には、二分割されたへび座みずへび座があります。みずへび座については、星空で見つけられる自信がありません。大航海時代以降に作られた南半球の星座です。

ところで、去年は望遠鏡で土星の環はご覧になったでしょうか?なんだか串刺しのお団子のようでしたね。約29.5年ごとに土星の環が地球から見えなくなる時期がありますが、これは、土星の自転軸と地球の公転軸が特定の角度になるためで、2025年3月24日(月)には、真横から眺めるため環が完全に見えなくなります。また、5月7日(水)頃にも土星の環を真横から見て、数ヶ月間観測が難しくなります。 この現象は「環の消失」と呼ばれ、前回は2009年に観測されました。次回は2039年。2025年のこの時期は、貴重な観測チャンスとなります。ただ、太陽が近くにあって条件はあまりよくありません。挑戦したい方は、夜明け前の東の空に注目です。

金星は3月上旬、夕方の西の空で輝いていますが、日を追うごとに高度を下げ、観察が難しくなります。4月以降は明け方の東の空に移動します。
火星ふたご座で、宵時0.3等級の明るさを保ち、木星おうし座に宿り宵の南西の空でマイナス2.3等級と非常に明るく輝きます。

3月はまだ空気が澄んでいて、冬の星座と春の星座が共演する貴重な時期です。皆さんが寝静まる真夜中近くには、しし座の1等星レグルスが高く昇り、おとめ座のスピカとともに春の訪れを感じさせてくれます。これにうしかい座アルクトゥールスを加えて、春の大三角が結べます。

日ごとに寒さが和らぎ、春の空気が満ちてくる4月。星空もすっかり春の装いとなり、冬の名残は西の空の低いところにわずかに残るのみ。夜明け前の東の空に夏の大三角の星々も姿を現し始めます。

さぁ、最後は流れ星の話題です。4月22日(火)に極大を迎えること座流星群は、下弦の月ですが晴れれば多くの流星を観察できる見込みですよ。22日の早朝が楽しみですね♪
天候が安定してくる4月後半は、星空散歩も心地良いもの。春の訪れとともに、夜空もまた新たな物語を紡いでいきます。ぜひ、星空を見上げ、季節の移り変わりを感じてみてください。ただし花粉対策はぬかりなく…。

西 香織
コスモプラネタリウム渋谷「星を詠む和みの解説員」幼い頃からプラネタリウムに通う。宇宙メルマガTHEVOYAGE 「エイハブの六分儀」で毎月の星空案内を担当。そそっかしく、公私ともに自分で掘った穴に自分でハマり(ついでに周囲の人も巻き込んで)大騒ぎしながらも、地球だからこそ楽しめる眺めを満喫する日々。
コスモプラネタリウム渋谷 https://shibu-cul.jp/planetarium

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