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宇宙産業の与える次世代への影響

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図1(左) ウユニ塩湖で撮影した天の川銀河 撮影:森
図2(右) アイスランドでのオーロラ 撮影:森

宇宙といえば自然とロマンを感じ、様々な人が興味を持てる対象だと思います。実際に自然に触れる機会が多くきれいな星空を一度でも見たことがある方は宇宙は面白いと思う方が多いでしょう。

しかし、現代では最低限求められる教育や訓練、もしくは賃金を稼ぐための労働という“普通に”やらなくてはならないとことが多すぎて、そのような情緒的な体験・対象に興味を持つ心身の余裕がなくなってきています。その上、若い世代に求める教育も、大学受験のため、もしくは就活のため効率の良いルートを進むのが当然のような価値観が先進国であるように感じ、比較的負荷の多い理系、特に英語でいうHard Scienceといわれる物理、数学などの自然の根本原理を論理的・定量的に究明する分野がないがしろにされている感じがして悲しいです。


私自身、理論宇宙物理学が大好きで趣味のような感覚で大学へ行く前も楽しんでいて、大学にいるときもカリキュラム関係なく好きに学び、試験用の勉強などあまりしませんでした。なぜならただ知りたいという知的好奇心を持てたからです。バックパッカーとして世界を旅していたときによく綺麗な夜空を見るという体験をすることによって、宇宙とは何か?という根本原理を深く理解したいと思い立ったのが起点です。


現代の若い人たちには、受験とか就活とか狭い価値観にとらわれず、好きなことを見つけるために、できれば10代の間に、科学に限らず様々な”体験”をして欲しいと思っております。

インターンであったり、実験であったり、教室で教科書を読んでいるだけでは物事の本質が掴みにくく、本当は面白いことでもつまらないと感じてしまうかもしれません。体験することで興味を持ち、自然と自力で努力するようになり、一つのことを究めようとしていろいろな努力をする過程で様々な経験をし、他にも自分でやりたいということがどんどんと見つかると思います。

”体験”という重要なドライバーを提供し、英国でも日本と同様に課題となっているSTEM(科学、技術、工学、数学)離れに終止符を打つべく、若い世代の知的好奇心を刺激し、クリティカルシンキング力を鍛えるハンズオン施設としても使えるようにBlue Abyssの施設を計画しております。

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図3 Blue Abyssの教育事業のイメージ図

世界中の様々な都市にある科学館、天文台では実際に観測、実験に使われる道具を実際に見ることができるだけでなく、実際に実験をやってみたり、見せてもらったり、もしくは映像や画像という形で”体験”し、体感的に理解することができます。

また、ロケットや衛星の製造現場を見せてくれるという企業も稀にあります。このような経験をもとに若い世代が宇宙、もしくは科学全体に興味を持ってSTEMの道に入ったり、研究の道を選んだり、プロとしてSTEM関連の仕事に従事することになったという人がかなりいると思います。

これはやはり”体験”の与える効果が大きいことの証明です。宇宙産業全体としても人不足と日本では言われていますが、今後立ち上がっていくであろう有人宇宙産業にも一定数の人が必要になるのは当然で、そのために今のうちからそれらの分野に興味を持つ人を増やし、教育していく必要があると思います。

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図4 Homer Spaceflight Projectのイメージ

日本でも近年Homer Spaceflight Projectという有志による有人宇宙産業を広め、有人宇宙開発の知見を一般の方に教育・啓蒙している団体が存在します。彼らのような団体が出てきてくれるのはとても嬉しいです。

これはすでに一定数、有人宇宙産業に興味がある人がいることの証明でもあります。Blue Abyssとしては今後の宇宙産業における”人”の訓練・教育に興味がある人にハンズオン体験を提供していきたいと思っております。

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図5 Blue Abyssの”宇宙飛行士”訓練施設

具体的には、Part 1でも紹介したBlue Abyssの建設予定の有人宇宙訓練用の巨大なプールでスキューバダイビングやVR等を利用し、実際に宇宙遊泳や宇宙飛行士の訓練を体験してもらうコースを実施したり、見学プラットフォームを設置し実際に訓練を体験したり、附設のクラスルームで理論やその他の科学実験を行い、総合的に子供〜若手世代の知的好奇心を刺激できるような施設にする予定です。

宇宙に行く人(〜宇宙飛行士)というタレントが近くにいる状況で上記のような経験ができることは子供たちにとってとてつもなく大きな影響を与えるでしょう。

水中である程度自由な実験のできる環境を用意することも構想していますので、宇宙関連でなくても、水中環境を活用し生医学的実験を行いデータを取ったり、コントロールされた水域で海洋ロボティクスなどの精密機器のデータ取得もできるようにしてプロの研究者や企業の研究開発や研究所の研究支援も予定しております。そのほか、人気科学コミュニケーターの方に登壇してもらいイベントを実施するイベントホールも設立予定です。


5年近く前からCEOのジョンを中心に計画し、規模の大きい施設の設立ということで資金調達や計画で苦労してきましたが、”未来の先端技術への貢献”と”人類の未来を担う若い世代への投資”の2つをBlue Abyssのミッションとして活動し続けてきました。

近年の新型コロナウイルスの影響で未来への投資や先端技術への投資が減ってしまうことも懸念されていますが、同じ夢を持つ人が団結し、チームとして諦めずにこの長期戦を戦っていくつもりです。

2回にわたって宇宙メルマガTHE VOYAGEに寄稿させていただきました。

1回目は”ビジネスとしての有人宇宙開発”、2回目は”未来を担う若い世代への投資”をトピックに書かせていただきました。まだ実現までに時間がかかるかもしれませんが応援いただければ幸いです。今後ともBlue Abyssをよろしくお願いいたします。


2020-11月号-森裕和様プロフィール画像

Blue Abyss
APAC Business Development Executive
Hirokazu Mori
森裕和

世界初民間宇宙飛行士訓練事業Blue AbyssのAPACビジネスデベロップメントエグゼクティブ。英エジンバラ大学宇宙物理学部飛び級入学・首席卒業。エジンバラ王立協会から支援金を受け、理論宇宙論の研究(重力波・修正重力論)経験あり。大学入学前にプロダイバーとして地中海で活躍、バックパッカーの経験もあり、現在までに約80カ国訪問。経営コンサルタントとして、宇宙×グローバル×DXの新規事業創出と事業戦略をテーマに活躍中。オーストラリア政府主催の地球観測会議GEOWEEK2019のインダストリトラックや宇宙産業の若手有志によるイベントNEXTSPACE Vol4等で登壇。宇宙ビジネス産業プラットフォームSPACETIDEのGlobal Team 。趣味は沈船・海中洞窟ダイビング、飛行機操縦、ピアノ演奏、美術、宇宙物理等。

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