地元鳥取を宇宙で元気に!高校生たちの挑戦-完結編[鈴木 雄大]
「星取県」を名乗り、美しい星空や宇宙産業を武器に地域の活性化に取り組んでいる鳥取県。本記事では11月号から半年間にわたって、星取県の取り組みを紹介してきた。
メルマガの11月号・12月号では、宇宙イベントの企画を通して地元・鳥取県の魅力を発信しようと奮闘する高校生たちを取材し、伝統産業×宇宙産業のプロジェクト立ち上げの経緯と、「絵本」「名鑑」「お披露目イベント」というプロジェクトの3つの柱についてご紹介した。
1月号・2月号では、鳥取県庁産業未来創造課の井田さんを取材し、星空・宇宙産業を活かして鳥取県を盛り上げる「星取県」の試みについてご紹介した。
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2022年3月13日、1年間に及んだ高校生たちのプロジェクトはついにお披露目の日を迎えた。会場は鳥取市内のおしゃれなシェアスペース。そこには12月号の記事で紹介した、宙ちゃんが宇宙関連の場所を巡る絵本『宙ちゃんのえにっき /絵 きしまののか・文 しみずちひろ』・県内で宇宙に携わって活躍されている方を紹介した名鑑(カード)・因州和紙を用いたカラフルな手作り照明などが所狭しと並べられ、因州和紙でできた絵本や名鑑を手にとって読みながら、和紙の触感をお楽しみいただいた。開催時間は2時間。学校の先生、友人、名鑑に載っている方ご本人などが訪れた。「来てくださった方々に挨拶をしているだけで終わった」というくらい、お披露目イベントはあっという間に終了した。準備から片付けまで4時間以上立ちっぱなしでフル回転。荷物も沢山あり、イベント終了後には流石に筋肉痛になったという。
作成した絵本は、公共施設への寄贈を予定している。既に、お披露目イベントにお越しいただいた県内の幼稚園の先生は寄贈を快諾してくださったとのこと。これから声をかけていくそうだが、将来的には絵本に登場する全ての場所でこの絵本を配布あるいは販売できたら良い、などと筆者は勝手に夢見ている。名鑑も鳥取県庁やさじアストロパークなどに寄贈予定である。鳥取県に行く機会があったらこれらの施設を訪れて名鑑を手に取ってご覧いただき、宇宙に関わる仕事・活動をされている「宇宙人」の方々の活躍と和紙の触感を是非お楽しみいただきたい。
感染症の流行により先が読めないこの情勢の中、2回も延期になるなど、お披露目イベントも多大な影響を受けた。山根さん自身も濃厚接触者になり自宅待機を余儀なくされたり、学校がオンライン授業や分散登校になるなど、準備も思うように進められなかった。それでも、補助金の都合上どうしても年度内にイベントを開催しなければならない。先生とも相談し、皆で絵本や名鑑の印刷などを最速でできる会社を探し、どうにか3月13日の開催に漕ぎ着くことができたのだった。
リーダーの山根さんも、主に名鑑の作成を担当した大下くんも、「大人の方とやり取りをするのは緊張した」と口を揃えて言う。しかし、「徐々に慣れてきたし、貴重な経験ができて楽しかった」と大下くんは言う。特に岡山大学惑星物質研究所では、探査機はやぶさ2が地球へ持ち帰ったサンプル分析の話などを詳しく伺うことができ、もともと探査機はやぶさが大好きだった大下くんは大興奮だったそうだ。多くの企業との日程調整などは大変だったと思うが、間違いなく高校生たちの糧になっただろう。
自分自身もリーダーとしてイベント企画を行った経験が何度かあるが、山根さんの言葉はどれも共感できるものばかりだった。「休憩している間も何か悪いことをしている気分」という山根さんの言葉からも、多大な苦労が伺える。
しかし、鳥取県や宇宙のことを広く・深く考えた経験は、今までに無かった発想も生み出している。「宇宙港とも絡めたら面白いかもしれない。」山根さんの目は早くも次の企画に向いている。1つ歳下の大下くんの代にも、新たに興味を持ってくれる人が見つかった。新しいメンバーを加え、本企画はこれからも発展していくいくことだろう。
1月号・ 2月号の記事で取材をさせていただいた鳥取県庁の井田広之さんにも今回の高校生の取り組みについての感想を伺ったところ、「地元を盛り上げたいと、鳥取の高校生が学校を超えてチームを作り、作品の企画・制作やイベント運営をされたプロジェクトで、とても素晴らしいと感じました。星取県の取組みがこうやって地域に広がっていることも、嬉しく思います。」との回答をいただいた。世の中に宇宙のプロは沢山いるかもしれないが、皆さんが住んでいる地域に一番詳しいのは他でもない皆さん自身だ。これからも、全国各地で同じような活動が広がっていけば良いと思う。
最後に、改めて井田さんに鳥取県の魅力を伺った。「鳥取県は、星空の美しい星取県であり、今回のようなイベントをはじめ、星空観光メニュー、星取県にちなんだお土産などもあります。ぜひ、遊びに来てください!」気軽に旅行ができる情勢でないのが残念でならないが、もし読者の皆さんが鳥取県に行く機会があったら、星取県の星空MAPなどを見ながら名所を巡り、星取県にちなんだお土産を購入していただきたい。
山根衣羽(やまねいゔ)
青翔開智高等学校3年。鳥取県出身。星取県宇宙魅力発信プロジェクトで活動中。マイブームはアニメ鑑賞とアイスクリームとシャチ。
大下知輝(おおしたともき)
青翔開智高等学校2年。青翔開智中学校高等学校でメディア委員会委員長を務める。専門は生物。本の虫。多趣味で好奇心の塊。好きな人工衛星はボイジャー2号。
井田 広之
鳥取県庁産業未来創造課。鳥取県の星空と宇宙をテーマにした地域活性化構想を提唱し、地域内外に共感者を増やしながら県公式プロジェクト「星取県」を立ち上げ、展開中。Forbes JAPANからスーパー公務員に選ばれる。これまでに、全国知事会「先進政策大賞」、グッドデザイン賞、「読売広告大賞」優秀賞、「日本プロモーション企画コンテスト」地域キャンペーン特別賞を受賞。神戸大学経営学部卒。山陰合同銀行を経て、鳥取県庁入庁。中小企業診断士。
鈴木 雄大(Udai)
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士2年
すいせい(水星・彗星)の大気や探査機に搭載するカメラの開発に関わる研究を行う一方で、「惑星の探検家」としてYouTubeチャンネル「宇宙冒険隊」など多様な媒体で活動中!
Webサイト: http://spaceadv.wp.xdomain.jp
YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/c/uchuuboukentai
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