宇宙小話(5)〜彗星の一生と流星群
今晩はふたご座(ざ)流星群(りゅうせいぐん)の夜ですね。明るい流れ星が多く、都会(とかい)からでも簡単(かんたん)に見ることができます。
そこで、流れ星を待つのが少しだけ楽しくなる小話をしましょう。
実は、流星群の流れ星の生まれ故郷(こきょう)は、海王星よりも遠い太陽系の果てにあるって知っていましたか?
遠く遠く、海王星よりも遠くには、小惑星(しょうわくせい)がたくさんあります。火星と木星の間にある小惑星帯(しょうわくせいたい)よりもずっと多くの小惑星があります。
小惑星といっても、だいたいは氷でできています。砂や石も混ざっていますが、ほとんどは氷です。水や、アンモニアや、メタンなどの氷です。
水は太陽系の外側ではとてもありふれた物質(ぶっしつ)です。太陽系の内側では熱で蒸発(じょうはつ)してしまうから珍(めずら)しいだけなのです。このような小惑星を「カイパーベルト天体」と呼びます。
カイパーベルトよりもさらに外側、太陽から1万天文単位くらいの距離(きょり)には「オールトの雲」と呼ばれる、氷でできた小惑星が無数にある領域(りょういき)があるようなのですが、遠すぎて詳しいことはわかっていません。
カイパーベルトやオールトの雲に浮かんでいる氷のかたまりが、何かの重力で軌道(きどう)を変えられ、太陽系の中心に落ちてきたものが、彗星(すいせい)です。太陽の近くにくると氷は熱で蒸発(じょうはつ)します。それが、彗星の尾です。
ほとんどの彗星は、一度太陽の近くを通ると、またはるかかなたに飛び去ってしまいます。次に戻ってくるまでに何万年もかかったり、二度と戻ってこないかもしれないものもあります。これを「長周期彗星(ちょうしゅうきすいせい)」と呼びます。
しかし、中には太陽系の惑星の重力でさらに軌道を曲げられて、太陽の比較的(ひかくてき)近くを回りつづける彗星もあります。
代表的(だいひょうてき)なものがハレー彗星です。太陽に近づくたびに氷が溶けて蒸発して尾になり、彗星はだんだん小さくなっていきます。
氷が完全になくなってしまったら、熱に溶けない岩石だけが残ります。そして尾を引かない普通の小惑星になるのです。
彗星の中には、その軌道が地球の軌道と交差(こうさ)しているものもあります。
氷が溶けて尾になるときに、一緒に砂や石などの粒も吹き出します。それが地球に飛び込んで明るく光ると、流れ星になるのです。
明日見えるふたご座流星群はファエトンという小惑星が残していったチリです。ファエトンはほぼ氷を失ってしまった彗星。きっと昔はカイパーベルトかオールトの雲からきたのでしょう。
明日の夜空に輝(かがや)く流れ星は、太陽系の遠く遠くからやってきて、寿命(じゅみょう)がほとんど尽きてしまった彗星の置き土産なのです。
そう思いながら夜空を眺(なが)めたら、きっとイマジネーションが膨(ふくら)むのではないでしょうか。
(トップ画像:NASA/JPL)
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