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青山学院大学 ARICAプロジェクト☆学生からみた衛星開発☆

はじめまして。今回宇宙メルマガTHE VOYAGEへの掲載にあたり、青山学院大学 理工学部 物理科学科 坂本研究室に所属の畑が、研究室で進めているARICAプロジェクトについてお話させて頂きます。

ロケットの打上げ
皆さん、11月9日のイプシロンロケット5号機の打上げはご覧になりましたか?私は人生で初めて、生でロケットが打ち上がる様子を見ていました。実は今回、私は「打上げ関係者」として見学していました。なぜなら、今回の打上げは、私が初めて開発に携わった超小型人工衛星「ARICA(ありか)」の打上げでもあったからです。

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【打ち上げの写真】2021年11月9日、内之浦宇宙空間観測所より
イプシロンロケット5号機で打ち上げられた。

青山学院大学 坂本研究室
ARICAは、私の所属する坂本研究室で開発した衛星です。坂本研究室では、重力波源の電磁波対応天体を宇宙や地上の観測機器を用いて探査していくことを研究の柱としています。すでに宇宙で観測しているNASAのSwift衛星や国際宇宙ステーションのMAXIからのデータを用いた探査、広い視野をもつ可視光望遠鏡の開発、将来衛星ミッションの検討や開発などの研究を進めています。その中の1つがARICAプロジェクトです。

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【坂本研究室のプロジェクト】

ARICAプロジェクト
ARICAプロジェクトでは突発天体のひとつであるガンマ線バーストの速報を目的としています。ガンマ線バーストは、宇宙が誕生して間もない頃に瞬間的に明るく輝く天体現象です。そのため、ガンマ線バーストを宇宙遠方の明るい光源として利用することで、宇宙誕生時の情報を知る手がかりになるといわれています。また、現在までの研究で、太陽の10倍以上の星が崩壊しブラックホールが誕生した瞬間や、重力波を伴う中性子星同士が合体した時にガンマ線バーストが発生するとされています。しかし、その正体の多くはいまだ解明されていません!
天体からのガンマ線は地球の大気に遮られるため、地上での検出は困難です。そのため、観測は宇宙空間で行う必要があり、人工衛星に搭載した装置を使って観測します。そして、衛星が発見したガンマ線バーストの情報をすぐに世界中に知らせ、さまざまな望遠鏡でより詳細な観測を行います。
私たちは衛星上でガンマ線バーストを発見したという情報を、衛星が民間の通信衛星へ送ることで、速報を地上で受信可能になると考えました。この新しい速報システムを衛星上で実証するため、ARICA 衛星の開発を3年前にスタートしました。ARICAは、JAXA革新的衛星技術実証2号機の実証テーマのひとつとして、イプシロンロケット5号機によって打ち上げられました。

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【プロジェクトの概要図】

このARICAで実証する民間衛星通信を利用した突発天体の速報システムは、日本独自のガンマ線バースト探査衛星「HiZ-GUNDAM」や私たちの研究室で開発している次の衛星にも使うことが検討されています。つまり、今回のARICAによる実証実験は、将来の衛星から見ても、非常に重要な実験なのです。

速報実証衛星ARICA
ARICAは大きさが10cm角、重さが1kgのCubeSat(キューブサット)です。CubeSatは大きさが標準化されている超小型人工衛星のことをいいます。標準化されているため、CubeSat専用の機器や部品を販売する企業もあります。ARICAもバッテリーや太陽電池パネルなどは、専用の機器を購入しました。そのため、開発期間や予算を抑えることができ、大学の1研究室での開発が可能になりました。
ARICAは10cm角の空間の中に、2社の民間衛星通信端末とガンマ線検出器を搭載しています。また、ガンマ線のデータ処理や衛星内部の制御などはFPGAとよばれる集積回路を用いています。通信端末など搭載する基板や回路設計・開発を、私たち開発メンバーは3年かけて開発しました。

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【ARICAの内部の様子とARICAの写真】

ARICAを支えるメンバー!
衛星の設計・開発や地上での試験はもちろん、衛星の命名、広報活動まで私たち学生が行っています。現在、ARICAプロジェクトでは、坂本教授と芹野助教、そして私を含めた学生6名で開発を進めています。卒業された先輩方なども含めると、これまで12人のメンバーが力を合わせてARICAを完成させました。私たち学生のメンバーはそれぞれが別々の部分を担当しています。例えば、私は基板設計やセンサ制御部分の開発設計を行ってきましたが、今年研究室に入ってきた学部4年生のメンバーは衛星データを可視化するためのプログラム開発を担当しています。開発メンバーが少ないため、猫の手も借りたいことは四六時中おきていました。けれども共に困難を乗り越えたからこそ、先輩後輩関係なくとても仲が良いです。

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【メンバーとARICAの人文字を作って撮影】

困難の連続だった開発
完成させて、打ち上がるまでにはさまざまな問題や課題がありました。そもそも私たちは、大学で物理を学んでいるため、ものづくりは初めての経験というメンバーがほとんどです。私も漏れなくその1人でした。電気電子回路の理論は学んでいても、それを実際に作ったことはなかったため、本や他学科、他大学の友達を頼りつつ必要な知識を身につけながら開発を進めていきました。そのため、基板や部品を壊してしまうこともしばしば…(私だけかもしれませんが。)

もちろん私たちは学生なので、授業やバイト、就職活動、3月には卒業の時期がやってきます。先輩方の卒業前には引継ぎを行うのですが、先輩の担当箇所が多い上に、引き継がれる側も絶賛就活中で、時間がなかなか合わないなど、年度の変わり目は特に大変でした。
新型コロナウイルスの影響で大学に入れない中開発を進めなければならなかったり、地上試験を行うギリギリまで課題の解決に向けて取り組んだり、授業のない土日を使って1日中実験するといったこともありました。

こんなにも大変で難しいことに力を注ぐのは、未知の現象を解明したいという思い、小さな頃から憧れてきた宇宙開発に挑戦でき、その開発が謎を解くきっかけになることが嬉しいという思いがあるからです。

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【引渡し時の写真】青色のフライトタグもメンバーのアイデアで製作!

私たちのARICAプロジェクトに協力していただけないでしょうか?
現状、ARICAの運用にかかる経費が足りていません。そこで、2021年12月2日までの期間でクラウドファンディングをはじめました。衛星の不具合などでデータ受信が不可能な場合、いただいた支援金はARICAに続く次号機の衛星開発資金としたいと考えています。
詳細は、こちらのサイトに掲載しています。英語版もあるので、海外からでもご協力していただけたら嬉しいです。少しでも多くの方に私たちのプロジェクトを知っていただき、ご支援を頂けますと、将来の衛星や宇宙科学の探求へとつながっていきます。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

7クラウドファンディング

[12月2日までクラウドファンディング中]

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畑泰代
青山学院大学理工学研究科修士2年。学部時に宇宙開発フォーラム実行委員会で運営に携わる。学部4年から坂本研究室に所属し、研究で超小型人工衛星ARICAの開発を行いつつ、広報活動にも取り組んでいる。


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