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十人十色なマンダラチャート[都村保徳]

宇宙飛行士を目指しているSpace Seedlingsメンバーの僕(都村)と江島さんは、第5期宇宙飛行士選抜試験のファイナリストでもある内山さんに模擬面接をしていただくという貴重な機会をいただきました。今回は、その面接に備えて作成された僕たちのマンダラチャートについて語り合いました。

マンダラチャートって何?

そもそもマンダラチャートとは何なのかを説明しよう。まず大目標である「宇宙飛行士」に必要な8項目を設定する。その8項目それぞれを達成するために必要となる8つの要素をさらに設定する。すると全部で64項目の小目標が設定でき、そのひとつひとつを達成していくことで夢に近づいていくという目標設定チャートなのだ。ここで内山さん自身が作成したマンダラチャートを紹介しよう。

マンダラチャート

内山さんの宇宙飛行士マンダラチャート

見ての通り64の要素が大目標である宇宙飛行士を支えるように取り巻いている。意外だなと思った項目が、啓発啓蒙活動の「ジョーク・持ちネタ・宴会芸」である。宇宙飛行士といえば真面目で冷静沈着だと思われがちだが、自分がした貴重な経験を世界に発信する上でもエンターテイナー的能力は大事なのだなと感じた。このマンダラチャートについては、内山さんの著書「宇宙飛行士選抜試験 〜ファイナリストの消えない記憶〜」やnoteの「宇宙飛行士挑戦エバンジェリストマガジン」で詳しく紹介されているので、是非読んでいただきたい。それでは続いて僕と江島さんのマンダラチャートを順に見ていこう。

何とも言えない何か

このカラフルなマンダラチャートから内山さんとの対談企画にどれだけ気合が入っていたかが見て伺えるだろう。

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SS都村の宇宙飛行士マンダラチャート

内山さんのチャートを参考にしたため被っている要素がたくさんあるが、個人的に特別な想いを込めた項目もある。世間一般的には「信頼される人」が高く評価されるが、僕は「信じる力・頼る力」も同じくらい大事だと思う。人を信頼することで生まれるチームワークがあれば、人に頼ることで生まれる協調性もある。人に頼ることがあまり得意ではない僕は、なんでも自分でやろうとして時たま躓くことがある。だから受け身になるだけではなく、積極的に周りの人を頼っていこうと思う。もう一つ大切だと思っているのが「Je ne sais quoi」、フランス語で何とも言えない何かという意味がある。その言葉通り、自然と人を惹きつけてしまう魅力、この人ならやってくれそうだなと期待させてしまうような筆舌に尽くし難いこの素質は、宇宙飛行士特有のものだと思う。

ここでTHE VOYAGE編集長の梅﨑さんから「“未来想定力”とはなんなのか?」という質問があった。これはある事象が起こったとき、その次に何が起こるのか、どういう連鎖反応が起こるのかということを頭の中でイメージしながら、未来をみるという力である。不確定性の高い未来ではあるが、この能力を備えることで緊急事態にも柔軟に対応できるようになるだろう。

付いていきたくなる

次に江島さんのチャートを見ていこう。

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SS江島さんの宇宙飛行士マンダラチャート

数ある項目の中で、江島さんは「研究力」に焦点を置いた。月探査はサイエンスが大きなモチベーションの一つであり、地上からの支援がISSよりも限られる月では、自分の力で考察したり実験を工夫したりといった研究の素養がさらに求められるだろうと語る。そしてもう一つ注目したのが「付いていきたくなる」という項目だ。江島さんは、アメリカで何人かの宇宙飛行士と共に仕事をしたことがあるそうだが、どの飛行士に対しても「この人に付いていればなんとかなる」「この人と一緒に仕事がしたい」と思ってしまう不思議なオーラを感じたそうだ。そのように周りから慕われるような人になることが、宇宙飛行士に近づく一歩だと信じている。

ここで梅﨑さんから「“雑談力”がコミュニケーションと人間性の両項目で挙げられているが、それほど重視しているのか?」という質問があった・この雑談力という話題からたちまち話が広がった。

雑談力

雑談が苦手で、相手からうまく話を引き出せなかったり、調子を伺えなかったりすることがあるので、そのスキルを身につけたいと江島さんはいう。これには内山さんも強く賛同した。話しているときに一瞬シーンとなる間を作ってしまう内山さんは、もう少し自分に雑談力があればと度々思うそうだ。確かに雑談力を高めれば「信頼を得る」や「付いていきたくなる」などといった素質に繋がりそうだ。

話を進めていると、雑談が苦手だという内山さんと江島さんには意外な共通点があった。それは人にあまり興味がないということ。相手に興味があると次から次へと質問が出てくるし、逆に興味を持ってくれる人がいれば、自分も喋りだして会話が止まらなくなる。もちろん会話の技術は大事だが、それよりも雑談力は興味があるかないかに大きく左右されるという見解だ。そもそも興味を持つにはどうすればいいのかという新たな課題が垣間見えたところで内山さんから面白い裏話が出てきた。

星出宇宙飛行士は夜の打ち合わせに遅刻してくることが度々あるそうだ。悪気があるわけではない。普段は訓練で忙しいため帰国すること自体が珍しい星出さんは、タイトなスケジュールにも関わらず、会う人一人一人としっかりコミュニケーションをとるのだ。決して「打ち合わせがあって急いでるから、じゃあまたね。」といった感じはなく、人との時間を楽しみ重んじているからこその遅刻なのだ。相手に良い印象を残すということ、コミュニケーションを楽しむということ、会話を次に繋げるということ、その全ての元となる雑談力が宇宙飛行士に求められる資質の一つだということに改めて気づかされた。

マンダラチャート分析を通して、宇宙飛行士という夢への道が明確になった。それだけではなく全ての素質が相互的に結びついていることや、受動(信頼される)と能動(信頼する)に潜む表裏一体性など色々な気づきがあった。これからはこのマンダラチャートにあげた全ての項目を意識しながら自分を磨き、宇宙飛行士という夢に近づいていこうと思う。皆さんも是非自分だけのマンダラチャートを作ってみてはいかがだろうか。


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取材の様子:内山さん(左下)、SS江島さん(右下)、SS都村(右上)

今回は僕と江島さんのマンダラチャート分析会の様子をお届けしてきました。来月の最終編では、ついに第5.5期宇宙飛行士選抜試験模擬面接の全貌に迫ります!

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内山さんのエバマガとのコラボで、こちらにも模擬面接に向けて対談した様子をご紹介頂いてます!!エバマガに登録すると対談動画もご覧いただけます!

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内山崇
1975年新潟生まれ、埼玉育ち。2000年東京大学大学院修士課程修了、同年(株)IHI入社。2008年からJAXA。2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト(10名)。宇宙船「こうのとり」フライトディレクタ。2009年初号機〜2020年最終9号機までフライトディレクタとして、9機連続成功に導く。現在は、新型宇宙船開発に携わる。趣味は、バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)、ラーメン。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。

宇宙兄弟Official Webにて『宇宙飛行士選抜試験〜12年間 語ることができなかったファイナリストの記憶〜』2020.6.16より12.15まで連載(全27回)。2020.12.5書籍『宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶』(SB新書)発売。

Amazon(Kindle版もあり):https://www.amazon.co.jp/dp/481560522X/
Twitter(有人宇宙情報発信) : https://twitter.com/HTVFD_Uchiyama
note(宇宙飛行士挑戦エバンジェリスト活動) :


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江島 彩夢(えしま さむ)
米コロラド大学ボルダー校 宇宙生物学 博士課程2年

【専門・研究・興味】
環境制御/生命維持装置(ECLSS)の自律化に関する研究

【活動】
Homer Spaceflight Project
SGAC

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都村保徳(つむらやすのり)
英ブリストル大学 航空宇宙工学科 4年

【専門・研究・興味】
軌道力学、宇宙機ダイナミクス、プログラミング

【活動】
enfty - エンジニアリングをもっと身近に -

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