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エイハブの六分儀

【今月の星空案内】
 
外の酷暑と電車内や建物の中のクーラーの寒さ、この温度差についていけず疲労が続いていませんか?この夏、いかがお過ごしでしょうか。
8月7日(水)には二十四節気立秋を迎えて暦の上では秋ですが、まだまだ暑さは続きそうです。どうぞご自愛ください。
 
頭の真上近くには、お馴染みの夏の大三角がのぼってきていますね。こと座ベガわし座アルタイルはくちょう座デネブが大きな長細い三角を形づくっています。ベガとアルタイルが、七夕の織り姫星彦星です。
8月10日(土)伝統的七夕の夜には、宵時8時25分ころ半月近くの月おとめ座の1等星スピカを隠す現象、「」がみられます。天の川をはさんで輝く織り姫星と彦星を見上げながら、スピカの食の様子も双眼鏡や望遠鏡で覗いてみませんか?11年ぶりの天文現象ですが、今年は12月25日(水)クリスマスにも明け方に見られる予定で、チャンスは2回。
当日、コスモプラネタリウム渋谷でも伝統的七夕特別投影の後に屋上で星を見上げますので、よければ遊びにいらしてください。

https://shibu-cul.jp/event/25244

 翌週の12日(月)深夜から13日(火)明け方に、ペルセウス座流星群が極大を迎えます。今年は上弦の月とよばれる半月は、夜半過ぎには沈みます。毎年、たくさんの明るい流れ星が期待される流星群です。蚊に刺されないよう対策をしつつ夜空を眺めてください。ペルセウス座は秋の星座で、夜半過ぎから東の空に昇ってきます。ペルセウス座から流れ星が四方八方に飛び散るように見えるため、放射点のある星座の名をとって「ペルセウス座流星群」という名前がついています。でも、実際にはペルセウス座から離れてから輝く流れ星も多いので空全体を眺めつつ、東の空を意識すると良いでしょう。

流星群をもたらす彗星母彗星と呼ぶのですが、この流星群の母彗星はスウィフト・タットル彗星とよばれるほうき星です。彗星は、汚れた雪だるまと表現されます。数ミリから数センチ程度のチリを大量に含んだ氷の天体で、太陽に近づくにつれて溶けてトレードマークのしっぽが太陽とは反対側に現れます。溶け出したチリは、宇宙空間にばら撒かれますが、ダストトレイルというチリの道を形成するのです。毎年同じ日に、地球がこのチリの道を横切って、たくさんのチリ粒が大気中に降り注ぎ、大気中で一気に高温高圧となりプラズマ化して光を放ちます。これが流星群のメカニズムです。およそ130年の周期で太陽の近くにやってくる彗星のプレゼントなのですね。
 
流れ星のもととなる微細なチリは年間、4万トンから10万トンも地球に降り注いでいます。それらが、生命のもととなるものをこの惑星にもたらしたのでは?とも考えられています。チリも積もれば命となる?研究者たちの探求の旅は続きます。命のふるさとは宇宙なのでしょうか?
この夏、彗星の贈り物をたくさん受け取ることができるといいですね。
 
8月15日(木)明け方、木星火星大接近します。望遠鏡で一緒にのぞくことができる、明星と赤い星の共演が楽しみです。早起きして東の空に注目です。
また、8月21日(水)土星に、27日(火)には木星28日(水)には火星に、が惑星たちに寄り添うようにして輝くので、それぞれのデートをチェックしてみたください。
そういえば、土星。来年に真横から見る角度となり環が見えなくなる環の消失を迎えます。1年前の薄っぺらの線、のような環を望遠鏡で見てみませんか?おすすめの天体観測です。
以上、夏の楽しい予定と一緒にスケジュール帳に記入しておいてください♪

最後に、宵時に南の正面で見つけやすいお誕生日の星座、いて座をご紹介しましょう。荒くれもののケンタウルス族の中でも珍しい、賢く様々なギリシャ神話の登場人物を育てたことで有名な賢人ケイローンの姿です。星がよく見える場所では、6つの星で小さなひしゃくを結べます。南斗六星と呼ばれ、英語圏ではミルクディパーというカタチが目印です。中国では、北斗七星は「死」を、南斗六星は「生」を司るひしゃくだと考えられています。
夏の天の川にあるミルクディパーで、ひとさじ、星のミルクをすくってみましょう。
星がよく見えない時には、ひとつ西どなりのさそり座のアンタレスを頼りにいて座を探します。アンタレスは赤い1等星、さそり座の心臓で輝いています。さそり座は、いて座のケイローンに育てられた名医アスクレピオスの姿であるへびつかい座に踏んづけられています。気の毒なさそり座を背後から弓で狙うようないて座は、天の川銀河の中心方向に位置している、今が旬の夏の星座です。
 
みなさんの素敵な夏の思い出に、星の輝きが彩を添えることを願っています☆彡

西 香織
コスモプラネタリウム渋谷「星を詠む和みの解説員」。幼い頃からプラネタリウムに通う。宇宙メルマガTHEVOYAGE 「エイハブの六分儀」で毎月の星空案内を担当。そそっかしく、公私ともに自分で掘った穴に自分でハマり(ついでに周囲の人も巻き込んで)大騒ぎしながらも、地球だからこそ楽しめる眺めを満喫する日々。
コスモプラネタリウム渋谷 https://shibu-cul.jp/planetarium



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