見出し画像

amulapo 世界一の宇宙テーマパーク - 中編[都村保徳]

「宇宙をきっかけに科学の力で世の中を盛り上げる」という理念のもと、amulapoでは様々なプロジェクトが進められています。前編の月面極地探査実験に引き続き、今回はamulapoが思い描くつくばのテーマパーク構想について、代表の田中克明様にお話を伺いました。

未来の国、つくばランド!?

世界的にも人気が絶えない夢の国、ディズニーランド。夢に浸れることはもちろん素敵だけれども、未来を身近に感じることもまた心躍るものだ。と言わんばかりにamulapoが手掛けている構想、それが科学版ディズニーランドである。とは言ってもテーマパークを新しく作るのではなく、町全体に既に存在するものをテーマパーク化していくという構想なのだ。「宇宙x科学技術」というテーマのもと、amulapoは研究学園都市であるつくば市に目をつけた。

あまり一般の人には知られていないが、つくば市の研究所は世界最先端で、展示物も非常に興味深いのだ。そこがツアーパッケージ化されていないこと、一般の人との連携が取れていないことが現状課題だという。宇宙という切り口をもとに、町全体にその魅力を溶け込ませることがamulapoのテーマパーク構想の真髄でもある。駅前の公園にARゴーグルの体験アトラクションを導入したり、筑波宇宙センターに行くまでのローカルバスにアトラクションを仕込んだりと、様々なのプロジェクトが並行して進められている中でamulapoが大切にしている心得がある。

デジタル技術にアナログ体験を組み込むこと。
エンターテインメントに教育を取り入れること。
そして、科学にアートを添えること。

amulapoはより一般の人たちに寄せていくという意味でも、いろんな要素を融合することに価値を見出している。この理念があるからこそ、出来上がっていく「未来の国 つくばランド」は、きっと私たちにとって親しみやすく有意義な空間となるのだろう。そんなテーマパークのアトラクションの一つでもあるバーチャル宇宙飛行士選抜試験が今、注目を集めている。

バーチャル宇宙飛行士選抜試験

メインビジュアル_バーチャル宇宙飛行士選抜試験

今秋、13年ぶりにJAXAが新たな宇宙飛行士を募集する。それに先行して、小学生向けにバーチャル宇宙飛行士選抜試験がamulapoにより開催された。ネーミングのインパクトはもちろん、コンテンツもまた科学技術を駆使したamulapoならではのものだ。一体どのような試験内容になっているのか、順に見ていこう。

1. 船外活動実験

画像2

第一関門の船外活動試験では、グラビティチェアと呼ばれる特殊な椅子とVRゴーグルを利用して、無重力を擬似体験しながら宇宙飛行士のミッションに挑戦する。ゲーム感覚で楽しめつつも状況把握能力が試されるコンテンツ設計となっている。

2. 宇宙実験試験

画像3

ここでは宇宙で起こる様々な現象をARグラスを通して観察する。「国際宇宙ステーションの中で炎はどう燃えるのか?水はどうなるのか?」といったことを、体験を通して学べるのだ。

3. 宇宙食試験

画像4

そして、最後に待ち受けているのが宇宙食試験。AIロボットによるクイズ形式で進むこの試験では、宇宙食がどのようなものなのかを子供たち自身が考えることで、思考力や課題解決力を育むことができる。

(この選抜試験の様子はYouTubeのちゃおチャンネルにも掲載されているので、ぜひご覧ください!高評価、チャンネル登録も忘れずに!)

このバーチャル宇宙飛行士選抜試験の末には一体何があるのだろう。「合格、不合格」と突きつけてしまうと、子供たちの夢を壊してしまうかもしれない。「あなたは〇〇タイプ!」と決めつけてしまうと、失望させてしまうかもしれない。人を評価することの難しさがある中で、子供たちの将来像を損なわないためにも、試験を突破したことを素直に称えるという意味でも、子供たち全員に修了証を授与している。「状況認識力、理解力、そして課題解決力を発揮できた君こそが、宇宙飛行士にふさわしい!」そんなamulapoからのメッセージが込められている。

まさにエンターテインメントとエデュケーションの狭間に潜む可能性を、最大限に活かしたアトラクションだ。バーチャル宇宙飛行士選抜試験がテーマパーク構想の一角を担うことで、つくば市にもより一層魅力が出てくることだろう。

観光地としてのポテンシャル

地方創生に力を注ぐamulapoがつくば市に着目したのには、もう一つ大きな理由があった。

2018年の統計によると、日本に来ている観光客の数は約2000 万人。コロナ禍で状況は一変したものの、2030年には倍の4000万人までのぼると予測されている。現在は羽田と成田の二大空港がフル稼働で首都圏に来る観光客を受け入れているが、今後著しく増加するであろう観光客を受け止めきれる見込みはない。

そこで関東第三の空港、茨城空港の存在が大きな可能性となってくる。あまり知られてはいないものの、土地が安い分、離発着にかかるコストも都心の空港と比べて低くなるという。つくばエクスプレスの東京駅から茨城空港までの延伸計画が進めば、安価で便利な茨城空港の利用者も増えるだろう。エンターテインメントが少ないつくば市をテーマパーク化することで、観光客や他県民を含めより多くの人の誘客を図っている。

つくば市が持つ研究学園都市としての一面も忘れてはいけない。研究機関や国際会議場を有するため、学会の開催地として候補には上がるものの、最終的には選ばれないというケースが多いという。やはり都市としての魅力がないことが原因となっている。もし、つくば市自体がテーマパークと化し、十分な娯楽が提供できるようになれば、学会の候補地となり、1週間で数万人という人が訪れることになるかもしれない。つくば市はそれほどのポテンシャルを秘めているのだ。

近未来都市をつくばから

このようにamulapoはさまざまな角度から、つくば市を盛り上げていくための活動に取り組んでいる。研究学園都市という魅力を最大限生かしきれていないこの現状を打破するために、宇宙という切り口を元にテーマパーク構想を広げるamulapoの今後の展開には目が離せない。

科学版ディズニーランドの異名の通り、つくば市は世界的なテーマパークとなる。多言語が飛び交い合い、科学技術の恩恵を授かるつくば市で、宇宙を体験できる日もそう遠くはないのかもしれない…


画像5

取材の様子:amulapo田中さん(中央下)、SS都村(右上)


ここまではつくばのテーマパーク構想について紹介してきました。来月の取材最終回ではamulapoが手掛けるこれからの取り組みの数々に迫ります!


画像6

田中克明(たなかかつあき)

宇宙ロボットの専門、博士(工学)。(株)amulapoの代表取締役としてxR、ロボット,AI等のICT技術で宇宙体験コンテンツの制作を行う。(株)ispaceのロボティクスエンジニアとして月面探査車のモビリティの設計にも従事、その他、経産省ELPISから派生のELPIS NEXTの理事、早稲田大学の招聘研究員、TECHNO-FRONTIERの航空宇宙委員、日本かくれんぼ協会の研究員などを兼任。2050年に向けて宇宙を中心に科学技術を促進。最高峰の宇宙体験の開発を目指している。


画像7

都村保徳(つむらやすのり)
英ブリストル大学 航空宇宙工学科 4年

【専門・研究・興味】
軌道力学、宇宙機ダイナミクス、プログラミング

いいなと思ったら応援しよう!