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プラネタリウム版「宇宙の話をしよう」制作秘話 vol.1-[西 香織]
いよいよ月、そして火星へ人類がさらに歩みを進め、宇宙への大航海時代といえる時代を迎えています。実際に人類が宇宙へ漕ぎだしていく、本当にわくわくするような時を生きているのですね。
アルテミス計画をはじめ宇宙開発が熱い盛り上がりを見せていますが、宇宙へ向かう時に同時に大切になるのが、内なる世界、哲学や精神性であると思います。より遠くまで踏み出していくには、より深い内観を伴う必要がある。その内なる宇宙への旅に、プラネタリウムが果たす役割は決して小さくない気がしています。
そんなプラネタリウムは来年、誕生100周年を迎えます。
さて、宇宙開発の最前線に従事する方々、宇宙を目指す若者、宇宙を夢見る少年少女の皆さまに毎月、この宇宙メルマガをお届けしていますが、このメルマガ船長の小野雅裕さんと利根川初美さん原作「宇宙の話をしよう」のプラネタリウム版の番組が鋭意制作中です。
公開直前にこの場をお借りして、番組制作現場の裏話をリレー形式で伝えさせていただきたいと思います。来年3月号までお付き合い頂けましたら幸いです。
ところで、ひと言でプラネタリウム番組といってもご存知の通り様々な様式があります。当日の星空をたっぷりライブで解説するスタンダードないわゆる生解説と呼ばれるもの。それから、映画のような完璧なパッケージになっている映像番組。この二つが一緒になっているタイプが最も一般的でしょうか。中には、映像と解説が入り混じっているタイプもあります。小野さんとの第一弾、レッドフロンティアはこの形式の番組でした。
今回は25分間の完全な映像番組です。全国の館が導入しやすいという点も考慮して、より多くの小野さんファンの方々に届けられるよう制作しています。当館では前半に当日の星空を解説して、後半に番組をお楽しみいただく予定です。
制作にあたり、監修を小野さんと利根川さんにお願いして、お忙しい合間をぬって何度もミーティングやメールでのやりとりを重ねていただきました。小野さんも利根川さんも初めての事で、興味津々といった感じで楽しそうに参加して下さって、私たちのモチベーションアップにつながっています。こうして、いよいよ、2Dのミーちゃんとパパ、そしてのっそりくまが今、ゆっくりと3Dの世界に立ち上がりつつあります。
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打ち合わせのたびに感じたのが、小野さんが共同制作者である子どもさんたちをいかに大切に思っているかということ。私たちも、その想いをしっかりと番組に込めていきたいです。
今回制作をご一緒していただいているのは、合同会社スターライトスタジオさんというプラネタリウム番組の制作会社の皆さんです。ドーム映像のプロフェッショナルな少数精鋭のスタッフとともに、限られた時間と予算の中でどうやって原作の魅力をドームに展開させようかと、アイディアを出し合っています。今現在はクライマックス、CG映像の制作真っ只中です。また、SB新書、株式会社コルクの皆さまにもご協力いただいています。
直接目にする映像の他にも、声優さん、その声優さんのコーディネート、またBGM/SE(サウンドエフェクト)、広報関連など多岐にわたって、チームプラネタリウム版「宇宙の話をしよう」のスタッフの皆さまのご尽力が欠かせません。
今回、新たに利根川さんにたくさんのイラストを描き下ろしていただきました。背景、美術全般はご存知ミツマチヨシコさん。お二人のあたたかみのあるイラストと風景を駆使して、スターライトスタジオのオードレッド マーク氏が3Dの世界へと作り込んでくれています。通常の映画やTVとの大きな違いは、何と言っても迫力あるドーム映像。平面で四角の映像にはない没入感は、ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、制作段階でもその違いを最大級に考慮して進めていきます。
番組制作ではいつも、ドーム内で試写して初めてその迫力を実感することができます。それまでは、PCの画面上で想像を膨らませるしかありません。そこがプラネタリウム番組制作の最も難しい点であり、最もエキサイティングな点でもあります。公開直前にドームで完成映像を目にした時の感動は言葉にできないほどです。
小野さんと利根川さんお二人のイマジネーションから生まれた物語が、共同制作の皆さんのアイディアや情熱をへて、たくさんの読者の方々へと想いがつながりました。そんな「宇宙の話をしよう」プラネタリウム版がカミングスーン!
今、まさにパパとミーちゃんとのっそりくまに命の火が灯ろうとしています。どうか、プラネタリウムのドームでいきいきと飛び回る彼らの姿を楽しみにしていて下さいね!
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公開は、2023年1月28日(土)です。
公開の際には、コスモプラネタリウム渋谷の展示ロビーにて、利根川さんとミツマチさん、マークさんのイラスト・使用画像の原画展も予定しています。ぜひ、足を運んでみてください。ご来館を心よりお待ちしております。
来月のコラムは、イラストレーター利根川さんにバトンをお渡しします!お楽しみに…。
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西 香織
コスモプラネタリウム渋谷「星を詠む和みの解説員」。幼い頃からプラネタリウムに通う。宇宙メルマガTHEVOYAGE 「エイハブの六分儀」で毎月の星空案内を担当。そそっかしく、公私ともに自分で掘った穴に自分でハマり(ついでに周囲の人も巻き込んで)大騒ぎしながらも、地球だからこそ楽しめる眺めを満喫する日々。