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太陽の空より vol.2 河村聡人
地球観測データの分析もしている太陽研究者が、気の向くままに宇宙の話をする連載の第2回です。前回に続 き、連載のタイトルである「太陽の空」に迫っていきたいと思います。
前回(太陽の空より vol.1)は地球の空と火星の空を並べました。
見上げた僕らの視線の先を全て空だと言うならば火星の空も地球の 空の一部のはずなのに、火星の空と地球の空は別のものとして扱っているというお話でした。
そして、地球の空と 火星の空の境目がどこかというのが今回への宿題でした。
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地球を飛び立ち火星に降り立った探査機を追いながら考えていきましょう。
ロケットに乗り打ち上げを待っている時、そこは地球の空の下です。
打ち上がり国際宇宙ステーションの横を通り過ぎました、まだ地球でしょうか?
月を通り過ぎました、そろそろ地球にいるとは言えなくなってきました。
火星までの中間点、近くに目立った天体はありません。
火星が見えてきました、逆噴射をして周回軌道に入ります。
ひとまず火星に到着と言っていいでしょうか?
それと もまだ入り口でしょうか?
火星の大気に突入します。着陸しました。
火星の空の下にいると誰もが認めてくれるでしょう。
この旅程のどこかに地球の空の果てがあり、火星の空の始まりがあるはずです。
地球の空は青いというイメージがあります。そのイメージを強調するのなら、地球の空は地球の大気と同義の様 な気がします。
地球の大気はどこまでかの話はまた今度にしますが、ここでは人間社会で慣習的に使われてい る高度100km(カーマンライン)をその境界としましょう。
その向こう、地球の空と火星の空の間には広大な宇宙 があり、国際宇宙ステーションや月は宇宙にいることになります。
これが一般的に受け入れられているイメージな のではないでしょうか?
ではひとまず空=大気として、次回は太陽の大気について考えてみましょう。
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河村聡人(かわむら あきと)
アラバマ州立大学ハンツビル校卒(学士・修士)、京都大学大学院退学。太陽・太陽圏物理学が本来の専門。最近は地球観測も。天文教育普及研究会2023年度若手奨励賞受賞。読書好き、特にSF。