アサーティブなコミュニケーションについて考える
【アサーティブ assertive】 という言葉は、そのまま翻訳すると「断定的な」「断言的な」という訳が当てられることが多いことばです。
しかしこれを「コミュニケーション」とつないで、「アサーティブ・コミュニケーション」とした場合、それは「自分も相手も尊重した自己表現」という意味になります。
アサーティブ・コミュニケーションについては、コーチングを学び始めたときに、初めて耳にしました。
そして、それを実践できれば、実生活においてもかなりパワフルだということが説明を聞いてよくわかりました。
それと同時に、自分がそれを実際に行うにはまだ心理的抵抗が若干あるのは
幼少時から「人から言われたことは断ってはいけない」ということや、
親しい間柄にある人に対して「まともに理由を説明して断ると角が立つ」という刷り込みが相当強いからだということにも思い当たりました。
ある日、頼まれた仕事を断ってみたら
そんな中、先日わたしは、初めて上司に「頼まれた仕事を断る」ことをしました。
私は今の職場に来てまだ2年経っていません。これまで同じ職場でキャリアを積んできたことがなく、転職回数も多いので役職を持ったこともありません。今の仕事場も、派遣で来て契約社員になったばかりですので、ヒラ中のヒラ、駆け出しもいいところです。
今の仕事はある程度任せてもらえるところと、関わる先がエネルギッシュなので楽しみながら仕事ができていますが、時期によってはオーバーワーク気味になります。そのような状態で、ある上司が「〇〇の記事を書いておいて」とスケジュール外のことをポンと言ってきたのです。
当時私は調整すべきタスクをいくつも抱えており、毎日「わんこそば状態」で仕事をこなしていたので、元々計画されていた業務以外で、工数のかかることをすると、さらに残業だけが増えていくという場面でした。
「申し訳ないですが、いついつ締切でAとBとCとDを今同時に進めていますので、そのような工数がかかる記事作成は急に依頼されても、今はできません。」
それを言ったあとのスッキリしたこと!
さすがに勇気はいりましたが、それでもやれ、と言われるならやってもいいし、それで評価が下がるなら下げてみたまえよ。という気分でした。
それが「自己責任」というところだったのだと思います。
そのあと、どうなったと思いますか?
さらに上の上司が「みきさんは忙しいんだから、あなたが書いて」と件の上司に命令して、その暇な上司(すんません)が記事を書いていました。
私はそれをリビューして、「受動態主体でわかりやすい記事ですね」とほめてあげましたよ!
実は、その上司は時間に余裕があって、情報チェックや各メンバーへのアドバイスが業務の中心みたいな人だったので、「記事を書く」というタスクをするのにはピッタリだと私は踏んでいたのですが、その通りになったのです!
それからは彼は「タスクは何でも下に頼む」という態度を改めて、まず自分がする方がよいかどうかを考えるようになったようです。
アサーティブ・コミュニケーションとは
アサーティブなコミュニケーションとは、「自分も相手も尊重したうえで、相手のいう事を傾聴し、自分の言いたいことも主張する」というコミュニケーションの方法です。
(1)Aggressive アグレッシブ 攻撃的自己表現 (他者を尊重せず、自分の考えだけを優先)
(2)Non-assertive ノンアサーティブ 非主張的自己実現 (自分よりも他者優先し、自分を尊重しない)
(3)Assertive アサーティブ 自他尊重的自己表現 (自他ともに尊重。相手の話をよく聴き、理解し、そのうえで自分の望みを伝える)
3つのコミュニケーションのスタイルを上げましたが、ポイントは「相手の話をよく聴き、理解した上で伝える」ということです。
いくら自己主張が大切といっても、相手の主張や気持ちに耳を傾けることなく自分の言いたいことだけをぶつけていては、それはただのわがままになり、(1)のアグレッシブな自己表現に陥ってしまいます。
そして、子どものころから「親のいう事、先生のいう事には従う」といった価値観を刷り込まれてきた日本人に多いのが、(2)の「自分の言いたいことは我慢して、理不尽だと感じても相手のいう事に従う」という自己表現です。これは一見、自分一人が我慢すれば摩擦が起きないので、コミュニケーションがうまくいくように見えますが、実は我慢することによって溜まった怒りやストレスが、第三者への愚痴となって表れたり、より弱い立場の人への当てつけになる原因になることもあります。
そして理想とされるのが、(3)の「相手の主張、感情もよく聴いた上で、自分の望みを伝える」というアサーティブ・コミュニケーションです。上の「上司に追加の仕事を頼まれた」という場面においては、上司の要求を一度詳しく聞いた上で、「自分の今のタスクの状況、いつならば新しい仕事ができるようになるのか、またはなぜできないのか」という説明を理由とともにすることができれば、コミュニケーションは次の段階に進むということです。
アサーティブ・コミュニケーションに必要な4本の柱
しかしながら、「上司に頼まれた仕事を断る」という場合には、それによって「心証を悪くしないか」「評価が下がらないか」などの結果を自分で引き受ける覚悟が必要です。
そのような点からも、アサーティブなコミュニケーションには「誠実」・「対等」・「率直」に相手に対応する、というポイントの他に「自己責任」を考慮することも必要となってくるのです。
「アサーティブ」ということばが、日本語に翻訳しにくいのは、ひとつはそういった概念やふるまいの習慣が存在しなかったから、ということもあるのかもしれません。
しかし近頃では、親と子、教師と生徒、組織での「フラット化」が進んだり、コーチングをはじめとした新たなコミュニケーションの方法が浸透するにしたがって、「アサーティブ」という考え方が身近になってきたようにも思えますね。
対人関係の中で、
・いつも自分が我慢して言いたいことを言えていない
・相手の言う事に、とりあえずは従うが、納得はできていない
という気持ちを感じている方は特に、相手とのコミュニケーションの傾向を見直してみると同時に、
「誠実」、「対等」、「率直」、「自己責任」という4つの観点からも振り返ってみることをお勧めします。
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