夫と私 レスからオープンマリッジに至るまで
夫と最初にこの問題について話したのは、コロナの頃だった。この問題を除いては、何ら不満のない結婚生活だと思う。でも、このまま一生と考えると辛い。
夫は苦しそうにそう言った。それなら、他の女性と関係するのを容認すると、私は、その時曖昧な返事をしたと記憶している。
今年の初め、私は仕事のことで悩んでいた。対人関係だ。つい自宅にいても愚痴が出る。だから夫も私の精神状態を理解してくれていると思っていた。
ところが何を思いついたのか、またあの問題を持ちかけて来た。私は煩わしくて、では、これで終わりにしましょうという内容の返事をしたと思う。
夫は慌てた。私が離婚を切り出した?ようにも取れたからだ。それは全く予想外の展開だったに違いない。彼はまるで腫れ物に触れるように私に接した。
夫は離婚など全く考えていなかったが、このような提案をすれば、相手は当然離婚も考える。言い訳をすればするほど泥沼に嵌っていった。
私は話す気力も体力もなく、メールで返事をした。私のメールはかなり感情的で、攻撃的で、夫を追い詰めるものだった。夫は何かを言おうとするけれど、会話にならなかった。子どもたちに聞かれたくないのもあって、話し合いは難航した。どこか静かなところで、ゆっくり話そう。と持ちかけられたが、私にはそんな気力も忍耐力も残ってなかった。
夫から丁寧なメールが届いた。10日後のことだった。
20年以上同じ屋根の下に暮らし、お互いのことを知り尽くしている。友として、家族としてこのまま関係を続けたい。今住んでいるところも子どもたちが巣立つまで、現状維持出来たらベストで、離婚は望んでいないことが書かれていた。
自分勝手なのは承知だとも。
文章を書くのが好きでない人らしい簡潔な内容だったと記憶している。
そのメールが私を落ち着かせたのは確かだが、何かが壊れた。私は夫に愛人が出来た時どんな反応を示すのだろうと考え始めた。私は自分が無価値に思えて、気持ちが沈んだ。その頃から、目に見えて痩せ始め、夫をはじめ周囲を心配させた。夫は自分が原因であるため、多くは言わないが、後悔しているらしかった。タイミングが悪かったことを。
そう、タイミングが悪かった。つまり、私たちは終わったのだ。
その後、元彼に出会って関係するまで、大した時間は要さなかった。女であることが有利な市場なのだと、苦笑した。元彼は私に何か大切なものをくれた。平たく言えば、私の承認欲求を完全に満たしたのだ。別な投稿で書いた通り、関係は破局に終わったものの、得たものも多かった。
元彼と終わってすぐに今の彼に出会うのも驚くほど簡単だった。彼は多くを語らず、単刀直入で、ステータスを見ても理想の相手。
夫と同類と言えば、そうなのだろう。
夫に愛人が出来た気配はない。けれど、以前よりも明るくなったし、時々親友として私を信用しているような言葉をかけてくれる。
私は私の恋愛について一切語っていない。レスは私が拒むことが原因だったから、他の男性とこうあっさりと関係を持ったと知ったら、夫は傷つくかもしれないと私は恐れている。私なりの配慮なのだ。
夫にこの件を相談されてから、私は限界を感じた。仕事と家庭という、私が信頼しきっていた居場所が、急に崩壊し始めたように感じた。私はストレスで痩せ、目に見えてやつれた。
各週数か月のカウンセリングと、元彼のおかげで私は立ち直れたと思う。
話す相手が必要だった。
元彼は、私たちの結婚がこのような結末を迎えたのは、夫の大失敗だと言った。私はそうは思わない。
私と夫はもう出会った頃には戻れないと思う。別な関係を築くしかない。それがどういうものかは後になって分かるだろう。
夫とはそれ以来良好な関係を保っている。一緒にコーヒーを飲んだり、散歩をしながら会話を楽しんでいる。私たちはとても気が合う、理解者同士なのだ。それはそれで、素晴らしい事だと思う。
いずれ、機会が訪れたら、私の恋の話も出来るだろうか。夫に早く愛人が出来るといいと思うようになった。そうしたら、それでおあいこだからか、それとも夫の幸せを願うからなのか、今の私には分からないけれど。そして将来、もし、夫がその女性を選ぶというのであれば、彼らを祝福出来る強さがほしいと、心から思う。