上級者向けだった! 「ブランクーシ 本質を象る」展
2024年4月、アーティゾン美術館で開催中の「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」展に行ってきました。
前情報を勉強しておくことを覚えました
と言っても、ネットに書かれていたことを頭にインプットしておいただけなのですが、美術史を学び始めたばかりの私には勉強になりました。
勉強して印象に残ったこと3つ書いておきます。
1、この展覧会は日本でブランクーシの創作活動全体を紹介する初めての機会
2、ブランクーシはどこの流派にも属さなかった
3、卵の形の中に生命の根源を見出していた
会場はアーティゾン美術館です。
人生2度目の、というか今年に入って2度目のアーティゾン美術館です。
前回は「マリー・ローランサン」展の時に訪れました。
東京駅の八重洲中央口から外に出て、2ブロック歩くと右手に見えてきます。
さすがに2回目なので、ちょっと知ってる風に歩けるのが嬉しかったです。(誰も見てませんが)
アーティストの作品の変化を見ることができました
さて、早速展示室に入っていくと、すぐに事前に勉強しておいた「プライド」と「苦しみ」を見ることができました。
「プライド」↓は1905年の作品です。
ブランクーシが彫刻家アントナン・メルシエから受けたアカデミックな影響がうかがえる作品とのことです。写実性を観て取ることができます。
幼少期、毎週日曜日にテレビで見ていたハウス食品のアニメ「小公子〜」みたいです。目がとても綺麗で、鼻筋がスッとしています。
こちら↓は「苦しみ」です。1907年作。
「プライド」から2年後の作品です。「プライド」とは反対に、身体の具体的な形や表情よりも素材の特性を活かすことを重視しているとのことです。
「苦しみ」というタイトルですが、無表情です。首を捻ってるところがちょっと苦しそうではありますが。
印象的だったのは、この像の頭の形です。↓
めちゃくちゃ綺麗!つい撫でたくなるような形だと思いませんか。
もう一つ、こちら↓はロダンの作品で「カミーユ・クローデル」です。
会場では気づけなかったのですが、図録を読んでハッとしました。
1907年にブランクーシはロダンのアトリエに入りましたが、1ヶ月で辞めてしまったそうです。
ロダンのこの作品はかなり凸凹しています。
ブランクーシのツルッとした仕上げと比べるのも面白いです。(会場で気づけば現物を見比べられたのに、私はこれもブランクーシだと思って観てました。図録を買っておいて良かったです)
後世に残る作品からその子弟関係が垣間見れるのは面白いですね。
ロダンはブランクーシのことを高く評価していたのに、すぐに自分の元を去ってしまったブランクーシに対する心境は複雑だったのかなぁなどと考えます。
それから、昨年(2023年)のキュビズム展でも見ることができた「接吻」↓も入ってすぐにありました。
「久しぶりー」と心の中で声をかけるいう謎の友だち感覚です。(と思ったら、キュビズム展にいた「接吻」は彫刻の森美術館のもので、今回の「接吻」はアーティゾン美術館所蔵のもので、お初にお目にかかってました(・_・;すみません)
簡単だったのはここまででした。
今回の展示は作品に数字が添えてあるだけで順番はバラバラです。
(何かの順番に並んでいたのでしょうか?素人の私にはバラバラにしか見えなかったです)
どれがどれなのか、どうしてここにこれがあるのか?
もはやどれが何というタイトルなのか分かりませんが、とにかく滑らかで光っている作品が多かったです。
しかも、会場は少し薄暗いので、若干老眼入ってるアラファーの私の目には作品リストの文字が蟻にしか見えない。涙
ただ、要所要所これはかっこいいなとか素敵だなとか心惹かれる物も当然あり、タイトルだけでもチェックしようと頑張りました。
こちら↓は「世界の始まり」というタイトルです。
事前に「卵の形の中に生命の根源を見出していた」ということを勉強しておいたので、これのことかな!と思いました。
どこの流派にも属さないということでしたが、本質を追求するところはキュビズムっぽいなと思いますし、モディリアーニの絵はそのまんま!
こ、これも作品でいいんですよね?
アトリエの外観の写真がありました。これが私はとても好きでした。もはやジブリの世界です。
奥の展示スペースではブランクーシのアトリエを再現してあリました。
ブランクーシが撮影した写真↓を見ると、外からの光が降り注ぐアトリエだったことがわかります。
この外光をこの展示スペースでは大きなライトで再現していました。すごかった。写真を撮り忘れたのが悔やまれます。
そして、すごいなぁ。かっこいいなぁと思う中に一つ。え?これも作品?だよね。というのが、こちら↓笑
タイトルは「肖像」です。ブランクーシ自身と似てるような似てないような。いや、似てる!
多分いちばん親しみやすい作品です。でも、正直分かりません。これのどこがすごいのか、教えてください。
(図録によると、ブランクーシは木材に愛着を持っていたようです。もと家具職人だったことも影響しているとのことです。この作品はアフリカの原初的な仮面を表している。)
「空間の鳥」を目の前にして初体験
先ほどの「肖像」もそうですが、絶対に私には分からないし、「ふーん」としか思えないと半ば諦めの気持ちも持ちつつも「空間の鳥」という作品の前にやってきました。
よく勤め先の美術館の学芸員の方に「実物を観ると違うよ」ということを言われます。
とは言っても、自分は美術史を学び始めてまだ浅いし、芸術家の気持ちなんて分からないと信じていました。
けれど、「空間の鳥」を目の前にした私は、その作品に釘付けになってしまいました。全部持っていかれた!という感じです。
すごく綺麗で、堂々としていて、その立居姿に見惚れてしまいました。
写真で見た時にはただの細長い棒のように見えていたのですが、どっしりとした重々しさと、上から私たちを見下ろしているかのような神々しさを感じました。
ブランクーシのアトリエを訪ねて行ったとして、ゆっくりと外光に照らされたアトリエの中の作品を見せてもらい、最後、部屋の奥に佇むこの鳥を見つけたら、その気高さに固まってそこから動けなくなりそうです。
そんな経験を初めてしました。
やっぱり芸術は私には分からないと半ば諦めモードでいたのですが、この作品を目の前にしたときの自分の感覚を祝福したい気持ちになります。
この「空間の鳥」は「空間の中の鳥」シリーズのうちの一つらしく、ブランクーシはこのシリーズの作品のことを「エーテルの中の鳥」とか「天界の中の鳥」と呼んでいたそうです。
とてもスピリチュアルなんですね。(エーテル体というのをインド占星術でも習いました。)
モデルもルーマニアの民話に出てくる伝説の鳥「マイアストラ」なんだとか。かっこいいです。
何枚も写真を撮ってきました。でも、写真では伝わらない。実物をぜひ観て欲しいです。
まとめ 上級者向けだけど、行く価値ありです
これまで絵画の展覧会にしか行ったことがなかったので、こうして立体の作品をいくつも比較して観るということがとても新鮮でした。
作品には番号だけ振り、解説もタイトルもない状態ということで、
観る人にもアーティスティックな態度というか感覚で観ろということを求められているようで、上級者向けの展覧会だと思います。
けれど、作品から作者の心意気みたいなものはすごく伝わって来ます。それからブランクーシが撮影した写真の展示から、彼が自分の作品にいろんな面を見出していたということも分かります。
頭でっかちになるより、心で受け止めろというこの展覧会の主催者からのメッセージかもしれません。
実は、昨年の夏に美術館巡りを始めて、今回のこのブランクーシ展が私の20番目の展覧会でした。
記念すべき20番目の展覧会ということで、作品を目の前にして心が動く体験ができたことはこの展覧会に好意を抱いてしまう要因の一つです。
アーティゾン美術館では石橋財団コレクションの展示もありました。
有名な画家たちの絵が本当にたくさんあります。
前回はゆっくり観ることができなかったのですが、今回はじっくりゆっくり堪能させていただきました。
ただ、どの絵も素晴らしいものばかりで、できればその絵とその作者とだけじっくり向き合いたい気持ちなのですが、隣の絵もすごいとなると何と言うか、麻痺してしまう感じでした。
次回はコレクション展になるみたいなので、その機会にnoteに書けたらいいなと思います。
最後にこの日の朝ごはんとお昼ごはんの紹介
前日にパナソニック汐留美術館で「テルマエ展」を観てきました。
新橋に泊まって、朝立ち寄ったのがこちらの珈琲大使館 新橋店さんです。店内はタバコOKのお店なので、そこは要注意です。
レモンが添えてあるツナサンドです。めちゃくちゃ美味しかったです。また行きたい。
こちらはタイ料理 サイアムオーキッド ヤエチカ店さんのパッタイです。
前回来た時に気になっていたヤエチカに行ってみました。
私は魚介は食べれるベジタリアン(ペスカタリアンと言うそうです)なので食べれるところが限られてしまうのですが、タイ料理店があって良かったです。
とてもボリューミーで少し残してしまいましたが、生のもやしがシャキシャキしていたり、エビもプリップリでとても美味しかったです。