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【ドイツバレエ留学】ホームシックは突然に1

学校では、クリスマスの公演へ向けてリハーサルが始まり、
家では自炊と節約を楽しんで、なんとかドイツでの一人暮らしに慣れ始めていた。

クラスの子たちは皆優しいけど、せっかく話しかけてくれるのに うまく言葉がでてこなくて愛想笑いでごまかしてしまうことが多く、情けなくて申し訳ない気持ちになってしまうと、娘はよく嘆いていた。
日本人の子とは話せるけど、年上の先輩ばかりでなんとなく気遣ってしまう。いまいち溶け込めないもどかしさも抱えていたようだった。

そう、日常生活に慣れてきたら、次はコミュニケーションや人間関係という壁が立ちはだかった。


そんな頃、再度コロナの感染者が世界中で増え、日本の入国時に隔離措置が必須になってしまった。
年末年始の休みに帰国することが困難になってしまった。
思えばドイツに行くタイミングも、ちょうど渡航制限が解除された時だったし、ある程度は覚悟していたはずだが、やはりショックだったようだ。

さらに、ドイツでも楽しみにしていたクリスマスマーケット、娘が留学して初の舞台になるはずだった冬の公演が中止決定に。

娘が心の拠り所にしていた「楽しみ」がことごとく失われてしまった。

この頃の、娘からのLINEが残っていた。
「来週のテスト勉強もやらないといけないし、音楽の課題も全然進んでない。
その上、明日は朝から日本の高校の講義があるのに、(ドイツの)学校のクラスの子たちが「朝早く学校に集まって一緒にみんなで勉強しよう!」って誘ってくれて。クラスの外国人の子達と全然話せてないし仲良くなれてないから行きたいけど。断ってハブられたくないし。
私が話せてないからか、帰る時も外国人の子は目を合わせてバイバイって言ってくれないし、それだけでメンタルボロボロちゃんなのに、家に帰ってからも1人でひたすら食材が腐らないように作り置きをして、それが終わったらすぐ洗い物をして、その後またすぐ勉強して…って考えるだけで頭爆発する。泣きたい。
1人でずっと反省しちゃうし、一緒に勉強できなかったら、後でめっちゃ後悔してずっとそのこと頭から離れなくなるし。」

と、かなりいっぱいいっぱいな状態になってしまっていた娘。

あらー。母心配…。と言っても、こちらは日本。
母は話を聞くことしかできない。
とりあえず、落ち着いて。先のことを考えずに、まずは目の前の ひとつひとつをやっていけばちゃんと終わるから。
クラスの子は、その時にうまく話せなくても言いたいことは紙に書いてがんばってあとからでも伝えるようにしようと、ありふれた提案となぐさめることしかできなかった。

そんな中、娘が風邪をひいて、味も臭いもわからなくなった。

これがダメ押しとなった。

「今、食べることだけが唯一の楽しみなのに。私から食べる幸せを奪わないでっ」

と、堰を切ったように泣き出してしまった。モニター越しに。

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