J1最高のストライカーとは?【2020年版】
開いて頂きありがとうございます。
今回のテーマは題名の通り、
「2020シーズンのJ1の最高のストライカー」を
見つけることです。
2019シーズンでも同様のことをしました。
今回はそれを参考にした2020年版です。
ストライカーを評価するうえで、ゴール数を最重要視していることは間違いありません。ただ、この記事では様々なデータから多角的な視点で調査していくことで、過密日程で印象論でしか語れなかった選手たちの分かりやすい結果、これまでとは印象が変わった選手、深く調査したからこそ辿り着けた考察など、今年も多くの新しい気づきを得ることができます。
興味を持ってくれた方は、
是非最後まで読んで欲しいです。
【読み方のオススメ】
グラフと文章を見比べながら読むことが最も好ましいです。なので、できればタブレットを2台用意して頂き片方はグラフ、片方は文章という感じで読んでいただけるとより楽しめるのではないかと思います。
☑️対象選手の選出とルール
・1クラブ2人は必ず選出。
→常時1トップのクラブと常時2トップのクラブでは人数に差がある。
・今回の対象は54名。
昨年の48名を参考にしましたが、それではまとまりませんでした。
・ゴールを1点は決めていること。
基準の時間以上にFWとして起用された選手であっても、得点を決めていない選手は落選しました。
・最前線で起用されたときの成績限定で評価。
→オルンガや興梠のように最前線だけで起用される選手たち54人の集まりではありません。試合毎、同じ試合でもポジションをスライドさせることがあります。例として分かりやすいのは、セレッソ大阪の奥埜。奥埜のボランチとして起用された時のデータは今回の成績には反映されていません。あくまでFW起用されたときのデータのみです。なので、実際の成績と誤差がある選手もいるかもしれませんが、それは他のポジションで記録したものだとご理解ください。
・「この選手はストライカーなのか?」と疑問を持たれるかもしれません。その場合は得点数が多い為に選出された可能性が高いので、寛大な心で読み進めて欲しいです。また、「どうしてこの選手は入っていないのか?」については、指摘して頂ければ追加させることもできますので自分の贔屓のチームをよく確認してみてください。
では、始めます。
☑️得点能力
冒頭とは逆のことを書きますが、ストライカーには「ゴールを決める」ことが、最も求められていて評価されます。先ずは90分あたりのゴール期待値をX座標。90分あたりのゴール数をY座標として、最も基本的なデータを見ていきましょう。
1人だけ飛び抜けた好成績を残している選手を見つけることができます。川崎フロンターレの小林悠が90分あたりのゴール数でも90分あたりのゴール期待値でも対象選手の中で最多でした。素晴らしいです。しかし、小林を詳細に見ると、ゴール期待値0.98に対して0.89ゴール。これはチャンス(期待値)以上にゴールを決められなかったことを表しています。つまり、実際は14ゴールでしたが、ゴール期待値通り、もしくは期待値以上のゴールを決めることができていれば大台の20点は悠々と越えていたのではないでしょうか。小林に続いてゴール期待値が高いのが同僚のレアンドロ・ダミアンです。ダミアンもゴール期待値0.78に対して0.61ゴールで小林同様に期待値を下回る平均ゴール数でした。とはいえ、ゴール期待値の上位2人が川崎勢であることから、予想通り、チームとして圧倒的に多くの好機を創出していることが分かりました。これが優勝チームです。
90分あたりのゴール数が2番目に高かったのが得点王のオルンガ(柏レイソル)。ゴール期待値0.72に対して0.85ゴールということで、期待値以上のゴールを決めたことになります。つまり、得点の確率が高い状況では確実に仕留めて、得点の確率が低い状況でもゴールに結びつけていたことになります。チームを大いに助けました。
そのオルンガがあまりに大きな存在すぎて、出場機会を失っていて横浜F・マリノスへ移籍したジュニオール・サントスがゴール期待値は4位、90分あたりのゴール数は3位にランクイン。0.71のゴール期待値に対して0.73ゴールで僅かに期待値を上回る成績。ゴール期待値5位は同じくマリノスのエジガル・ジュニオですが、ゴール期待値0.65に対してゴール数は0.39。昨季この項目最高成績者は、期待値を大きく下回るゴール数という成績でした。またオナイウ阿道も同様にゴール期待値(0.57)がゴール数(0.34)を下回る成績でした。優勝した昨シーズンは期待値を上回るゴール数を記録していましたが、今季は逆の結果になる選手が多くなってしまい、昨季と今季の順位の差は、このあたりも少なからず影響があったのではないでしょうか。とはいえ、川崎に続き早くも複数人がランクインしたということで今季も攻撃的なスタイルは健在だったことは証明しています。
昨季この企画で最もインパクトを残した鹿島アントラーズの上田綺世は今季も好成績を残しました。90分あたりのゴール数では日本人2番目の高さ(0.71ゴール)。ゴール期待値(0.61)を上回るゴールを決めており、終盤の手に負えない活躍ぶりが印象的でした。逆に同僚のエヴェラウドは、ゴール期待値(0.64)に対してゴール数(0.53)が大幅に下回る結果に。得点ランキングは18得点の2位でしたが、さらにゴールを量産できるに相応しい決定機があった選手だったということができます。
ゴール期待値が対象選手の平均値以下でも、90分あたりのゴール数が高い選手がいます。それは清水エスパルスのジュニオール・ドゥトラです。ゴール期待値0.36に対してゴール数は0.67。ストライカーの成績はチーム事情に影響されますから、この成績は大きく評価してあげて欲しいです。
最後に我が浦和レッズです。
チーム最多得点のレオナルドがゴール期待値0.45に対して0.51ゴールで、期待値以上のゴールでチームに貢献していたといえます。興梠はゴール期待値0.42に対して0.43ゴールで僅かに上回る。
武藤はゴール期待値0.16の少なめに対して0.12ゴール。杉本はゴール期待値0.30に対して0.12ゴール。武藤は僅かに、杉本は大幅に期待値を下回るゴール数だったことが分かります。昨季に比べてチーム全体の得点数は増えましたが、この項目だけに限定すると、杉本への物足りなさがよく反映されている結果になったのではないでしょうか。
☑️シュート回数と決定率
次は90分あたりのシュート数をX座標。ゴール決定率(ゴールコンバージョン)をY座標として見ていきます。どのくらい多くシュートできているのか。ただ、シュートを沢山打った方が勝つのではなく、ゴールの数で勝敗の優劣を決めるスポーツなので、どのくらいゴール前で冷静になってゴールを決めることができているのかを調査していきます。
1~6位のクラブを黒色表記。
7~12位のクラブを黄色表記。
13~18位のクラブを赤色表記。
ここではこのように分けてみました。
先ずゴール決定率が飛び抜けている選手を見つけることができます。それは浦和レッズの興梠慎三です。シュート数は対象選手の中の平均値を大きく下回る平均1.47回ですが、ゴール決定率は29.4%で最高です。昨季のこの項目の興梠は、平均シュート1.37本に対してゴール決定率30.0%で、これだけ高い決定率の選手にもう少しシュートを打たせる状況まで全体で作って欲しいと言及しましたが、今季もほぼ同じ成績でした。シュート数が少ないのは残念なのですが、とはいえ、昨季30.0%、今季29.4%の決定率は浦和にとって本当に貴重な存在であることを証明しています。
興梠に続いて決定率が高いのは、湘南ベルマーレの中川寛斗(27.3%)です。中川は出場時間が多い訳ではないので真に受けていい成績なのかは難しいところですが、同僚の石原直樹が全体で4番目のゴール決定率(22.2%)ということで、湘南勢は平均シュート数が少ないにもかかわらず、決定率は高いということが分かりました。逆に対象選手に含めるか最後まで迷って入れた指宿洋史とタリクは2人よりも平均シュート数が多いにもかかわらず、ゴール決定率が低いことが読み取れます。特にタリクは決定率が著しく低いです。この項目だけで評価するなら、助っ人としての活躍ができたとはいえそうにありません。
エリキは全体で3番目の決定率で昨季同様にゴール前での冷静さを証明しています。
また、最終盤の活躍が印象的だった豊川雄太のゴール決定率は22.2%で好成績。同じくセレッソのブルーノ・メンデスは21.4%、奥埜博亮は16.3%で全員が対象選手の平均を上回っていました。セレッソの特徴としては、シュートこそ多い訳ではないが、最前線で起用された選手は総じて高い決定率である。ロティーナ体制の色々が凝縮されているような成績ではないでしょうか。来季は果たして?
反対に、90分あたりの平均シュート数が最多なのは、鹿島アントラーズのエヴェラウドで4.65本です。ボックス外からのシュートがリーグで最多なのは今回の調査では入っていない名古屋グランパスのマテウスですが、2番目に多いのがエヴェラウドです。積極的にボックス外から打っていること単独でもシュートまで持っていける特徴が、飛び抜けてシュート回数が多くなった要因なのではないでしょうか。
続いてシュートが多いのが小林悠(4.31本)、オルンガ(4.26本)、L・ペレイラ(4.02本)、上田(3.98本)、J・サントス(3.82本)の順番で、この5人とも対象選手の平均値よりも高い決定率であることが分かります。これには驚きました。昨季はシュート回数が上位の選手は比較的決定率が低かったのですが、今季はトップのエヴェラウド(12.9%)こそ平均を下回っていますが、続く5人は全員高い決定率を残しています。ストライカーがシュート数が多く、決定率も高いというのは、チームとして理想的なことではないかと思います。
興梠が最高成績であることは言及しましたが、最後に同僚の3人を見ていきます。レオナルドは平均シュート数2.72本でチーム最多でゴール決定率も18.6%の好成績。杉本はシュート数ではレオナルドとほぼ同じ2.64本ですが、ゴール決定率はまさかの4.7%。また、武藤はシュート数1.41本で、決定率も8.7%でこちらも低い成績。興梠の好成績を見てしまうと、2人はゴール前の冷静さを欠いていたことが顕著に証明されています。もう過去のことなので、来季どのように変わっていくのか見守っていくしかないです。
☑️アグレッシブな動きのあるストライカー
最後は90分あたりの前方への走りがX座標。90分あたりのボックス内のタッチ数をY座標としました。「前方への走り」とは、対象選手が継続的なボールコントロールによって、相手チームのゴールにかなり近づけようとしたプレーの回数を指しています。今回の調査対象外で例を挙げると、川崎の三苫薫や横浜FCの松尾佑介が「前方への走り」が多い選手で理解して頂けるのではないでしょうか。
「前方への走り」と「ボックス内のタッチ数」の関係性は明確にはありませんが、ストライカーにはボックス内以外でも多くの仕事を求められます。その指標の1つとして今回は「前方への走り」をチョイスしました。
前方への走りが飛び抜けて多いのがFC東京のアダイウトンであることが分かります。昨季ジュビロ時代の約2.50回に比べて今季は2.87回で増加。一方のボックス内のタッチ数は対象選手の平均値を少し下回る3.8回です。とはいえ、同僚のディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑のボックス内のタッチ数も4.01回、3.57回で平均値と同じくらいです。つまり、FC東京の3人のボックス内のタッチ数はほぼ同じですが、アダイウトンはボールコントロールによってチームの前進を助けているダイナミックな選手であるといえます。
前方への走りが多くて、ボックス内のタッチ数も多いのは、横浜FMのエリキとJ・サントスの2人です。ボックス内で多くのプレー関与しながらもチームの前進も助けるという役割でマリノスのアタッキングフットボールを支えていたことが分かります。
北海道コンサドーレ札幌のドウグラス・オリヴェイラはここまでゴール数も少なく、ゴール期待値と決定率ともに低いと、いいとこなしの成績でしたが、前方への走りは2.27回で上位にランクイン。アンデルソン・ロペスも前方への走り1.96回で上位。これはシャドーとして起用されていることが多い⁇のが要因なのかもしれません。反対にジェイは前方への走り0.25回で対象選手の中で3番目の少なさ。これはイメージ通りの成績ですよね。札幌で補足しておくと、夏場にベルギーへ移籍した鈴木武蔵は4試合の出場で、ゴール数1.42、ゴール期待値0.88、シュート数5.09本、ボックス内のタッチ数5.66回、前方への走り1.7回とそのままシーズン最後まで維持できれば全て上位フィニッシュの圧巻の成績を残していました。鈴木選手が抜けた分、新しい取り組みが始まったとはいえ、穴は中々大きかったようです。
最後に我が浦和レッズ。
前方への走り最多はレオナルドの1.29回で平均を上回っています。ボックス内のタッチ数も4.52回で唯一平均を超えています。独力で前進する場面が4人の中では多かったので予想通りです。逆に前方への走りが4人の中で最低なのは興梠で0.26回。武藤も同様に0.73回で平均を下回り。2人はチームとのコンビネーションで前線と後方の繋ぎ役になっていた選手です。前方への走りはあくまでボールコントロールで運ぶことによって前進を助けた回数がカウントされていますので、これが少ないというのは今季の浦和にとってはさほど問題ないと思います。
しかし、興梠、武藤、杉本の3人がボックス内のタッチ数の平均を下回っていたというのは寂しさを感じます。先程、興梠のゴール決定率が断トツだったことを考えると、チームとしてもっとボックス内でプレーに関与させられる好機を作ることができれば、あとは高い確率でゴールに結びつけてくれる選手がいるので・・・と昨季も同じようなことを今季も書くことになってしまいました。これが現実です。
ボックス内のタッチ数上位20名を集めてみました。
驚くことに上位4名が横浜FMです。この4名を組み替えながら、ターンオーバーしながら起用していたことを想像すると、毎試合最前線に安定してボックス内でタッチしてもらう局面まで作れていたことを証明しています。中でも断トツなのがオナイウ阿道で7.95回。昨季のトップがエリキの5.68回なので飛び抜けた多さであることが分かります。
マリノス4人衆に続くのが川崎の2人。そしてエヴェラウド、オルンガの得点量産した2人と、各項目で成績上位の上田がランクイン。
その次にランクインしてきたのが林大地と金森健志の鳥栖コンビ。金森はSHとして起用されたときの成績は含んでいません。林はここまで一度も言及できなかったのですが、実はゴール期待値0.45に対して0.53ゴールで、期待値を上回るゴール数でチームに貢献。平均シュート2.96本、決定率18.0%はいずれも平均値超え。前方への走りも僅かに平均を超えていて、そしてボックス内のタッチ数は上位ランクインということで、ゴリゴリなイメージが先行しがちですが、データ的にもかなりの好成績者であることは言及しておきたかったです。
ボックス内のタッチ数上位20名のうち前方への走りが平均値を下回っているのは、エジガル、ダミアン、小林、金森、L・ペレイラ、ジェイ、土居、呉屋の8名。彼らはボールコントロールによってチームの前進を助けるストライカーではない代わりに、ボックス内で多くの仕事が求められている選手だといえます。興味深いのは王者・川崎フロンターレの小林悠とレアンドロ・ダミアンが2人ともここに入っていることです。つまり、ボックス内のタッチは多いにもかかわらず、前方への走りが平均を大きく下回っているということです。川崎の試合を観ればなんとなく想像できますが、このように図で可視化されると、より納得感を得ることができるのではないでしょうか。
☑️最終候補
ここまで54名のストライカーを様々な視点で調査・比較してきました。その中から最終候補8名を選出します。選び方は各項目上位5位にランクインしている回数が多い順です。
それでは、その8名を見ていきましょう。
【2項目ランクイン】
・レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)
(画像:サッカーマガジン)
・エジガル・ジュニオ(横浜F・マリノス)
(画像:超ワールドサッカー)
・レアンドロ・ペレイラ(サンフレッチェ広島)
(画像:Jリーグ公式サイト)
・上田綺世(鹿島アントラーズ)
(画像:サッカーマガジン)
【3項目ランクイン】
・小林悠(川崎フロンターレ)
(画像:サッカーマガジン)
・オルンガ(柏レイソル)
(画像:Football ZONE)
・エリキ(横浜F・マリノス)
(画像:Jリーグ公式)
【4項目ランクイン】
・ジュニオール・サントス(横浜F・マリノス)
(画像:Football ZONE)
※全項目「90分あたりの」計算。
最もトップ5に多くランクインしたのは横浜FMのジュニオール・サントスでした。自身の最低順位はゴール決定率の12位ということで、今回の調査では堂々の成績優秀者です。しかし、ナンバーワンを取った項目は1つもないことが特徴的です。その点、3項目ランクインした川崎フロンターレの小林悠は1位を2つ獲得しています。しかもかなり重要な項目のナンバーワンです。オルンガも3項目ですが、全ての項目でトップ10にランクインしています。これは全てを兼ね揃えている証拠ですし、この偉業はオルンガだけです。基本的にはこの3名が今回の調査を牽引してくれました。
川崎のレアンドロ・ダミアンとマリノスのエジガル・ジュニオとエリキと鹿島の上田綺世は昨季に続いて2年連続で最終候補にランクインしました。そして、広島のレアンドロ・ペレイラは初選出となりました。
最終候補上位8名に得点ランキング2位のエヴェラウドが入らないという展開になるのがこの記事の醍醐味です。エヴェラウドはシュート本数の1位だけトップ5でした。しかし、これは決して彼が劣っていると言いたい訳ではないのです。あくまで、ほんの僅かな情報量の中での評価にすぎないのです。
なので、昨季同様ですが「栄えある今季J1最高のストライカーは○○です」と決めつけることはしません。あとは読んで頂いていた皆さんが、この記事から色々なことを考えたり、想像を膨らませてみたり、楽しむことに使って頂きたいです。
最終候補にランクインした8名のストライカーはおめでとうございます。
☑️まとめ
J1全チームを扱っている以上、少しずつでも各チーム言及したいなという想いはありましたが、文字数が多くなりすぎてしまうので、やはり各項目象徴的な選手を言及することしかできませんでした。自分の贔屓のチームが言及されていないのに最後まで読んでくれた方は、本当に申し訳ございません。しかし、トップではなかった選手たちをクローズアップできてこそ本当の分析なのではないかという想いに今はなってきているので、また同じデータを用いての第2弾、第3弾を作ってみようかなと考えています。
今回の記事を通して、何か1つでも驚きを感じてくれたり、選手に対して新しい視点を持って頂けたら、作り手としてこれ以上ない喜びです。
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長文読んで頂きありがとうございました。
(データ情報源:wyscout)