天気予報のはなし
学校帰りの友達と散歩に行こうと思って、彼女の帰りの電車の時間をめがけて最寄り駅に向かった。
窓から見た外は真っ青だったのに、外に出てみると私から見て右半分は真っ黒だった。
引き返して折りたたみの傘を取る。午後5時。
夏が近づくと聴きたくなる曲があってイヤホンをつける。私は半袖を着ていた。
少し歩くと、私と同じ色の服を着たおばあさんと目が合ったから、夏曲を聴くのは後にしようと思ってイヤホンを外した。
「駅ってこっちかしら」
私も行くから一緒に行きましょうか、と答えてから、なんか図々しかったかもしれないと思った。
1人が好きなタイプだったらどうしよう。
でも今更撤回できないから、片道5分、我慢してもらうしかない。ごめんなさい。
「雨、降っちゃいますかね。天気予報だと40分後にゲリラ豪雨って」
会話に困ったときは大体天気の話って決まってる。てかそうしてる。
「降らないでしょ。天気予報は当たらないから」
はっきりと言い切る形だったのが妙に気持ちよくて、なんか好きな感じ。何がと聞かれたら、上手く答えられないけど。
私は調子に乗って、今日何してた?とかどこ住んでるの?とか荷物持ちましょうか?とか喋って、気持ち悪かったと思う、ごめんなさい、つい。
私が友達と合流すると、ありがとね、と笑って改札に入っていった。
友達とおしゃべりしながら、母校のほうまでゆっくりと歩いた。当時の部活の顧問がちょうどミーティングをしていて、私たちも少し後ろで話を聞いた。天気が悪いからはやく生徒を帰すように、と放送が入って、私たちもすぐに学校から出た。
家の方に歩き始めると、顔に雨粒が当たって、そのあとすぐに強く降り始めた。おばあさんの嘘つき!
折りたたみ傘はすぐ裏返るし、治そうとしたら全部自分に水飛沫がかかって、それが面白かった。
雨も止まないから、友達と別れて、またイヤホンをつけた。さっきの続きからお気に入りの夏曲が流れたけど、私は寒かった。私は半袖を着ていた。
天気予報で、降水確率が何%だとしても、どうせ降らないでしょ、の日と、なんか降る気がする、の日がある。
おばあさんは今日、50年以上前からの友達の家に遊びに行ってきた、と話していた。
楽しかった日は雨が降らない気がする。実際に、降るか否かは全く別の話で、降らない気がする。
帰り道、私の履いていたデニムの裾は既に冷たくなっていた。
雨は降っていたけど、今日は雨が降らないような気がしていた。
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