[短編]心の傷とシワの数に魅せられる
僕たちは、生まれてから活動を停止するまでに、多くの経験を重ねていく。
全ては均衡の中で、徐々に成長と言う形を取りながら、進化の過程を実感していくことになる。
そして、それは退化も同様のことである。
生きていく過程の中で、記憶に残るモノは、善悪に限らず、心が強く震える瞬間だった。
その中でも、僕たちが思考するネガティブな要素は、いつだって強烈なインパクトを残して記憶に居座り続ける。
悲しみの真ん中は深い。
世界の隅っこでいつも震えている。
そして、誰からも手を差し伸べられることなく、ほったらかしになっていた。
そんないくつもの悲しみや苦しみは、時を経てシワとして刻まれていき、僕らが大人になったことを教えてくれる。
心の傷とシワの数に人は何を想うのだろうか。
その中に魅せられる世界はなかったのだろうか。
私はこう考える。
もし、忌み嫌われるシワに人の輝きを見ることができたのなら、その人は救われるのかもしれない。
そして、あなたを救うきっかけになるのかもしれないと。
人の輝きは内なる力であり世界でもある。
あなたが人の輝きを見ようとした時、心の深い領域の中へ考察を進めて行く事になる。
そして、その過程が放つ輝きに魅せられ、心に「人が持つ本質」を見ようとする欲求が生まれる。
人が持つ本質は、表面上に浮かぶカッコ良さ・魅力といった類のモノが妖であると見抜き、あなたの解放を願う本能を呼び覚ましていく。
やがて、あなたの解放は心に変化をもたらし、囚われの人格は「自由意思」を手に入れ、本当の在るべき姿へ到達しようとする。
そして、心の傷とシワの数に魅せられた人格は、あなたをより崇高な高みへいざなう光となり人の輝きへと変わっていく。
そうやって、縁(えにし)は結ばれていく。
か細くもはかなくも雅に。
全ては均衡の中で、徐々に成長と言う形を取りながら、進化の過程を実感していくことになる。
そして、それは退化も同様のことである。