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サニーデイサービスの最高傑作。甘酸っぱさ」だけじゃ語れない、都会の憂鬱と希望が溶け合う奇跡のサウンド
サニーデイ・サービスの4thアルバム「サニーデイサービス」。
このアルバムを知ったのはリリースから少し経っての事だ。
サニーデイサービスの楽曲と出会ったきっかけは、たまたま本屋で立ち読みしたロッキングオンJAPANAのレビューだ。
「音楽を読む」事を覚えた頃に出会ったのがサニーデイサービスだ。
金もないのに試聴せずに「読んで買う」。
インターネットが普及する前の時代ゆえの購買行動だ。
それほど当時CDを買う事は大きな娯楽だったのである。
このアルバムを聴いた当初は衝撃と違和感を同時に覚えた。
それまで聴いていたB'zやL'Arc〜en〜Cielや安室奈美恵やSMAPの楽曲が普通のクオリティの楽曲だとするならば、まるでデモテープのまま発売された様な音源だと感じた。(後に緻密に計算され完成度の高いアルバムだと知る事になるのだが)
まるで作りかけの作品の様なサウンドに乗せて曽我部恵一の鼻にかかる生々しくも繊細な声の虜になるにはそう時間はかからなかった。
日本のロックシーンにおいて。日本語の美しさや日本人ならではの感性を最大限にロックに融合させる事に成功した最重要バンドが「はっぴーえんど」だとすれば、彼らの築き上げた土台をさらに強固な物にしたバンドがサニーデイサービスだ。
もちろん私がこのアルバムに惹かれるのは、単に音楽的な完成度が高いからだけではない。むしろ、その背後にある、彼らの紡ぎ出す、いや、吐き出す人間臭さ、葛藤、そして切実な想いが、筆者の心を捉えて離さないからだ。
1. baby blue
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、アコースティックなサウンドと曽我部恵一の優しいボーカルが、聴き手をゆっくりとアルバムの世界へ誘う。「さあ出ておいで」という歌い出しは、新しい旅への招待状のようで、どこか達観した視点と情熱が同居している。
万人が好む普遍的なメロディなのだが、曽我部にしか紡ぎ出せないメロディーだ。今でも決して色褪せない。
2. 朝
「baby blue」の静けさから一転して、エネルギッシュなロックナンバー。歪んだギターサウンドと軽快なドラムが印象的で、冬の朝の冷たい空気感を見事に表現している。歌詞には日常の一瞬を切り取った具体性があり、「新しい靴で通りへ出れば」というフレーズが新たな始まりを感じさせる。
3. NOW
爽やかなポップナンバー。アコースティックギターとエレクトリックピアノが織りなす温かみのあるサウンドが心地よく、恋人とのひとときを描いた歌詞には哀愁も漂う。
当時はロッテ「ガーナミルクチョコレート」のCMソングとして使用されていた。
4. 枯れ葉
ビートルズの「ノルウェーの森」にインスパイアされた様な出だしから始まる、物悲しい雰囲気の漂うこの曲は、アコースティックギターとストリングスが繊細に絡み合い、曽我部の憂いを帯びたボーカルが胸に迫る。
5. 虹の午後に
穏やかなメロディと、叙情的な歌詞が、午後の優しい光を描き出す。日常の風景の中に、ささやかな幸せを見つける喜びを、繊細に表現している。
曽我部の声質を最大限に活かした楽曲だ。
6. Wild Grass Picture
短いながらもキラリと光る曲。草原を思わせる牧歌的な雰囲気が漂い、アルバム全体の流れに一息つく間を与えています。草原の中にアコースティックギター持った青年が弾き方っている情景が浮かぶ。
7. PINK MOON
このアルバムのハイライトの楽曲であり、サニーデイサービスの数ある名曲の中でも「サニーデイ通」が好む秀逸な一曲だ。
ニック・ドレイクへのオマージュとも取れるタイトルのこの曲は、夜から朝へ移り変わる時間帯を描く。メロウなサウンドと幻想的な歌詞が融合し、不思議な浮遊感と幻想的な雰囲気を生み出す。
8. 星を見たかい?
真夜中の情景を描いたミディアムナンバーで、ヴィブラフォンの音色が神秘的な雰囲気を加えている。切ないメロディーと力強いギターサウンドが絶妙に調和し、夜の深みを感じさせる。
10. そして風は吹く
穏やかな風景画のような楽曲で、軽やかなアコースティックサウンドが印象的です。この曲では自然と人間との調和が感じられる。
11. 旅の手帖
アルバム全体のテーマ「旅」を象徴する楽曲です。列車旅や風景描写など詩的要素に溢れ、一種のロードムービー的世界観がある。
12. bye bye blackbird
アルバム最後を飾る壮大なバラード。
静かに始まりながらも後半にはストリングスやバンドサウンドが加わり、荘厳さが増していく。
「黒い鳥」のモチーフはアルバム全体を俯瞰する存在として機能しており、物語の締めくくりとして完璧な楽曲だ。
あとがき
4thアルバム『サニーデイ・サービス』は、その統一感ある構成と繊細で緻密な楽曲から、日本ロック史上でも屈指の名盤と言える。
2025年現在28年が経過しようしているが、ぜひ新たに音楽活動に携わろうとしている10代20代の方々にも聴いて頂きたいアルバムだ。
その中には甘美さだけでなく哀愁や孤独も含まれており、多面的な魅力がある。静かに心に染み入る傑作であります。
筆者の長々と拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございました。
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