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GRAPEVINE「HERE」静寂と激情の狭間で、轟音と繊細さが織りなす奇跡。深淵を覗き込む瞳の奥に、光を見た。
こんにちは。稲妻のぺぺです。
今回はGRAPEVINEのアルバム「HERE」。
GRAPEVINEというバンドは筆者にとって特別な思いのあるバンドだ。
筆者が音楽ジャンキー、ロックジャンキーになるきっかけを作った罪深きバンドの1つなのである。
初めてGRAPEVINEの音楽に触れたのは20数年前の20歳の大学生。
彼らの音楽と出会うまで筆者の音楽の選び方は、
①テレビや映画の主題歌で気に入った楽曲をレンタルor購入。
②友人とお薦めの楽曲をMDに録音してシェアしあう。
③好きな女の子が良く聴いているアーティストや楽曲がわかったらそれを聴く。
④当時の音楽番組、MステやHEY!HEY!HEY!などに出演しているアーティストで気に入った楽曲があればレンタルor購入
などなど、いわゆるありふれたリスナーだった。
そんな青年が友人とお目当てのアルバム(おそらくミスチルとかスピッツあたりだったと思う)を買うために、渋谷のタワーレコードに行った時だ。
当時の大手レコードショップには各ジャンル毎に視聴機が置いてあり色々な音楽が視聴出来る。
青春時代に、スマホやYouTubeやサブスク音楽が当たり前にある世代に理解して貰うのは難しいかもしれないが、2000年代初頭はタワレコやHMVに行く事が沢山の音楽に触れる最大にして唯一の手段と言っても過言ではない。
一緒に行った友人達と各自バラバラに、好きなジャンルのブースに行き視聴していた時に、たまたま出会ったのがGRAPEVINEのこのアルバムだ。
ミスチル、スピッツ、奥田民生などの楽曲が好きで聴いてはいたので、彼らの音楽を受け入れる土台は少しはあったのかもしれない。
それでも小室ファミリー、ビーイング系アーティスト、ビジュアル系バンドがテレビで溢れていた20歳の青年の感性に、今までにない衝撃が走ったのを今でも覚えている。
それまでは、ミスチル、スピッツや奥田民生含め、小室ファミリー、ビーイング系アーティスト、ビジュアル系バンドなどなど、サウンドやボーカルも多くの人に届けるために綺麗に処理され、音楽産業の中心にいるプロ中のプロ達により精巧に作られた楽曲を聴いてきたからだ。
決してGRAPEVINEをディスっている訳ではないと前置きした上で書くが
「こんな荒削りな状態でリリースして良いんだ」そんな感じがしたのを覚えている。
ミュージシャンを、カッコいい曲を提供してくれるカッコいい芸能人ではなく、「表現者」「アーティスト」として初めて認識したのが彼らだったのだと今になって思うのである。
長々となってしまったが筆者のGRAPEVINEの思いはこれぐらいにして、作品のレビューをしていきたいと思う。
GRAPEVINEの3rdアルバム "HERE" は、彼らのキャリアにおいて重要な転換点となった作品だ。
ザラザラっとした重厚感のある音の中に、時に切なく時に寂しさを感じるエモーショナルなヴォーカルが顔を出し、聴く者の心をブルンブルン揺さぶる。
各楽曲毎にレビューしていきたい。
1. 想うということ
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、静寂の中から湧き上がるようなギターのアルペジオが印象的。繊細なヴォーカルが、過ぎ去った日々への切ない想いを紡ぎ出す。
AメロからBメロそしてサビに入るまで、大きな強弱がなく、サビのザラついたギターと田中の甘く切ないヴォーカルが身体に染み込んでくる。
筆者のGRAPEVINEの推し曲TOP5入る曲。
片道50分かけて大学に通学していたがこの曲だけ聴いて学校まで行けた(笑)
2. Reverb (Jan. 3rd mix)
疾走感あふれるリズムに乗せて、感情の渦が爆発するようなナンバー。
重厚なギターサウンドとエモーショナルなヴォーカルが、聴く者の心を高揚させる。
2曲目にしてこのアルバムの第一のピークが来る。
4. 空の向こうから
どこか懐かしいメロディが、郷愁を誘うナンバー。
アコースティックギターの優しい響きが、心に温かい光を灯す。
「暖かさ」「光が差し込む」この曲を聴いている間この2つのワードが脳裏から離れない。
5. ダイヤグラム
複雑な構成と展開が、聴く者を飽きさせないプログレッシブな楽曲。
荒削りな様でいて彼らが優れたミュージシャンだという事を認識させられる曲。
緻密なアンサンブルと叙情的なメロディが、ドラマティックな空間を作り出す。
6. Scare
疾走感のあるロックナンバーに乗せて人間の内面に潜む恐怖や不安を描き出す。
一見投げやりなギターサウンドと、狂気に満ちたようなヴォーカルが、聴く者を圧倒する。
7. ポートレート
60年代70年代のサイケを彷彿させる美しい出だしで始まる。印象的なバラードナンバー。
切ない歌詞と繊細なヴォーカルが、聴く者の心を締め付ける。
8. コーヒー付
こういう楽曲も作れるのが彼らアーティストとしての幅の広さなのだろう。
日常の何気ない風景を切り取ったような歌詞が、共感を呼ぶナンバー。
優しいメロディと温かいヴォーカルが、心を和ませる。
アルバム全体を聴き込む上でキラリと光るナンバー。
9. リトル・ガール・トリートメント
軽快なリズムとポップなメロディが、心を躍らせるナンバー。
遊び心あふれる歌詞と、キュートなヴォーカルが、聴く者を楽しませる。
10. 羽根
力強いギターサウンドと、突き抜けるようなヴォーカルが、希望を歌い上げるナンバー。
困難を乗り越える勇気をくれる、力強いメッセージソング。
力をくれるナンバーだが切なさを感じさせる田中のヴォーカル。GRAPEVINEの真骨頂と言える作品。
12. 南行き
11曲目の「HERE」を持って来ずにこの曲をラスト持って来た事で「TO BE CONTINUE」を感じさせてくれ次回作に対する期待を持たせてくれる。
旅に出る前の高揚感と、未来への期待感を歌ったナンバー。軽快なリズムと、爽やかなメロディが、聴く者を旅へと誘う。
あとがき
重厚感のあるギターサウンドが織りなす独特のグルーヴは、まさにこのバンドでしか表現できない奇跡の産物。
時にぶっきらぼうでありながら繊細な言葉選び、そして荒削りでありながら、一つグルーヴとして纏まりのある初期GRAPEVINEの代表作だ。
筆者の長々と拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございました。
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