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ゆらゆら帝国「ゆらゆら帝国Ⅲ」平成ノイズ・ポップの最高到達点。社会の歯車が軋む音をディストーションで美化した傑作
2001年2月21日にユニバーサルミュージックからリリースされた『ゆらゆら帝国Ⅲ』は、メジャー移行後初の全曲新作という転換点で生まれた。
カラフルなジャケットが示す通り、これまでのインディーズ時代のドロドロした作風から最も遠ざかったポップ路線の傑作だ。7分超のオープニング曲が象徴するように、単純なコード進行を延々と繰り返す手法が聴覚トリップを誘う。
都市の雑踏でふと立ち止まった時に聞こえるノイズのようでもあり、人工甘味料過多の現代社会への痛烈なパロディのようにも響く。
1. でっかいクエスチョンマーク:GとCの2コードで7分間の催眠術
2. ラメのパンタロン:60年代ガレージロックのリフをディストーション越しに再解釈
3. 幽霊の結婚式:森の深奥で営まれる永劫の儀式をパーカッションが彩る
4. 待ち人:歌謡曲の仮面を被った不毛な日常讃歌
5. ゆらゆら帝国で考え中:アウトロの独白が現代社会への問いを突き刺す
6. 男は不安定:クラウトロック的リフが不安定な労働環境を暗示
7. 砂のお城:潮風に消える子供時代の記憶
8. 頭異常なし:医療的診断をロックンロールで風刺
9. 頭炭酸:思考の泡が破裂する瞬間の音響化
10.少年は夢の中:80年代アニメBGMを想起させるノスタルジック・チューン
あとがき
このアルバムがリリースされた2001年は、ITバブル崩壊と同時多発テロが世界を震撼させた年だ。
カラフルなパッケージに封じられた不協和音は、まさに世紀末的混乱を予見していたかのようである。2024年に亀川千代が他界した今、改めて聴き直すと、楽曲に散りばめられた「虚構の明るさ」が現代のSNS社会を先取りしていることに驚かされる。
ゆらゆら帝国の解散から15年、彼らが描いた「へんてこな世界」はますます加速している。アルバムタイトルの『Ⅲ』が示すように、これは単なる数字ではなく、無限ループする資本主義社会への警鐘なのだ。聴けば聴くほど、我々が砂のお城の住人であることを思い知らされる。
色彩豊かな音の洪水に身を委ねながら、ふと気付く——このアルバムこそが21世紀日本のループする現実を最も鋭く切り取った社会派ロックの金字塔だと。
筆者の長々と拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございました。
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