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私の映画鑑賞録2021(ネタバレ感想文)

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2021年新作映画のマイベストは『トムボーイ』。いや、日本公開が今年だっただけで本当は2011年の映画だけど。
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2021年5月の記事一覧

映画『愛のコリーダ』大島渚的近松心中(ネタバレ感想文 )

修復版を鑑賞。無修正版とかあるからややこしいけど、修復版ね。いわゆるデジタル・リマスター。無修正ではない。そして、実は初鑑賞。だって世代じゃないんだもん。 制作は1976年(昭和51年)。大島渚46歳頃の作品。 映画の舞台はそれより40年遡った1936年(昭和11年)。言わずと知れた実話で、阿部サダヲの芸名の由来。 クインシー・ジョーンズの世界的大ヒット「Ai No Corrida」の由来でもありますが、実はカヴァー曲なのでクインシー・ジョーンズ御大はそんなことは知らない(

映画『戦場のメリークリスマス』過去の呪縛からの解放(ネタバレ感想文 )

4K修復版を鑑賞。公開時以来37年ぶりの再鑑賞。それほど好きな作品ではなかったんですが、今回観たら面白かった。観てよかった。 私にとってこの映画は、2つの「過去の呪縛」があります。 当時「11PM」という番組があり、年に1度「日本アカデミー賞予想」の日がありました。その年のゲストは『戦メリ』大島渚と『家族ゲーム』(83年)森田芳光。「古典小説だって面白い映画にできる」と主張する森田君に対し「そんなはずはない」と否定する大島渚。「いいえ、面白くなります。僕が映画化すれば」と

映画『祈りの幕が下りる時』笑っちゃうほど「砂の器」(ネタバレ感想文 )

もはやアレですな、『砂の器』は松本清張の原作よりも野村芳太郎の映画『砂の器』(74年)の方が正統派『砂の器』になっちゃってる気がしますね。 なにせ中居正広でリメイクした『私は貝になりたい』(08年)ですら、橋本忍が自身の手で脚本をリライトして『砂の器』にしちゃってんだから。故橋本忍大先生も当時御年90歳で耄碌してたんですよ。 それくらい『砂の器』は金字塔なんでね、東野圭吾が影響を受けたとしても仕方がありませんね。 ん?待てよ。同じ監督? もはや『砂の器』wでおなじみリメイ

映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』胡蝶の夢、文系男子の夢(ネタバレ感想文 )

『花束みたいな恋をした』の劇中、押井守(本人)を見かけた菅田将暉が「神がいた!」と言うシーンがあります。一緒にいた女子大生(有村架純)まで「押井守がいましたよね」と言い出します。顔を見て押井守を判別できる女子大生がこの世に存在するのか、そもそも押井守が深夜に明大前の喫茶店で何をしているのか、多くの疑問は残りますが、この『ビューティフル・ドリーマー』が押井神を崇める多数の信者を生み出したことは間違いありません。 だって、当時高校生だった私もその一人ですから。 ただ実際には、