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私の映画鑑賞録2021(ネタバレ感想文)

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2021年新作映画のマイベストは『トムボーイ』。いや、日本公開が今年だっただけで本当は2011年の映画だけど。
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2021年1月の記事一覧

いにしえのアナログ技術が愛おしい男子映画。『ミッドナイトクロス』ネタバレ感想文

ブライアン・デ・パルマ監督1981年の作品。最近、旧作ばっかり観てるな。 主演は『サタデー・ナイト・フィーバー』と『ステイン・アライブ』の間辺りの若きジョン・トラボルタ。ヒロインは当時デ・パルマ夫人だったナンシー・アレン。 この40年前の映画を30数年ぶりに鑑賞(ほとんど忘れてる)。 だいたい『ミッドナイトクロス』ってキーボードで打つのも、録音技師が主人公だった韓国映画『春の日は過ぎゆく』のレビューで「この職業を観たのは『ミッドナイトクロス』以来だ」って書いて以来で、それだ

テレンス・マリックかと思った。映画『レヴェナント:蘇えりし者』ネタバレ感想文

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥって、「アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ」って声に出して言いたいよね。その昔「声に出して読みたい日本語」ってあったけど、そんな感じ。日本語じゃないけど。 公開当時日本では「デカプーやっと主演男優賞!」がウリで、普段そんなに映画を観ない人も映画館に足を運んで痛い目にあった(であろう)作品。 2021年にケーブルテレビで観たのですが、観るんだったら公開時にスクリーンで観るべきでした。観ないんだったら観ないままでよかったんだけど。 そ

まるでカイジ。ざわざわ。『おとなの事情 スマホをのぞいたら』ネタバレ感想文

普段この手の企画物はあまり観ないのですが(オリジナル版も観てないし)、岡田惠和脚本だったので映画館へ。 結論を先に言うと、岡田惠和らしくない設定だけど岡田惠和らしい着地点の話でした。 ちなみに岡田惠和は、我が家でそのテレビドラマを必ず観る5大脚本家の一人で(残り4人は宮藤官九郎、古沢良太、坂元裕二、野木亜紀子)、「若者のすべて」(94年)以来かれこれ四半世紀超ほぼ全作観ている長いお付き合いです。映画はスルーすることが多いけどね。「まだ恋は始まらない」(95年)再放送してくれ

私は「リスペクト」できない。映画『パラサイト 半地下の家族』ネタバレ感想文

地上波テレビ放送したそうで。それに便乗して、公開時に鑑賞したレビューを(少しリライトして)noteに転載します。 正直言って、私はあまり好きな映画ではありません。 「リスペクト」できない。どうやら私はポン・ジュノの「匂い」が苦手のようです。 5点満点で★3の評価を付けているのですが、正直、この映画が★3だったら世のほとんどの映画は★1か2にしなければいけなくなるくらい、アイディアも秀逸だし演出も上手い。完成度の高い映画だとは思うのです。 それでも私はこの映画が好きになれない

なかなかの喜劇。小津安二郎の遺作『秋刀魚の味』ネタバレ感想文

1962年(昭和37年)、小津安二郎59歳の作品にして遺作。 デジタル修復版を早稲田松竹で鑑賞。2011年以来何度目かの鑑賞になるのですが、スクリーンで観たのはたぶん初めて。 「おじさんって小津好きよね」とお思いかもしれませんが、おじさんだから好きなわけじゃありません。さすがにまだ産まれてませんし。おじさんを全部一緒にすんなよ。 ああ、それと「昔の映画は良かった」的なことを言うおじさんがいますが、大嘘ですから。クソみたいな映画が山ほどあって、いい映画だけが今日に残っているだ

鴈治郎キャビアを喰らふ。小津安二郎『小早川家の秋』ネタバレ感想文

2021年の映画初めに早稲田松竹で鑑賞。2002年にラピュタ阿佐ヶ谷で観て以来の再鑑賞となる『小早川家の秋』。別名「鴈治郎キャビアを喰らふ」(<俺が勝手に命名)。 以前とそう大きく感想は変わらずほぼ同じことを書くんですが(リライトです)、小津の自己投影が見え隠れする作品だと思うのです。 小津安二郎54本の監督作品のうち、たった3本しかない松竹以外の作品。 いわば他流試合。そのせいかどうか、大阪出張です(笑)。 市川崑や岡本喜八ファンの私にとっては東宝系の俳優陣は馴染み深い。

憧れと現実。イスラル映画『声優夫婦の甘くない生活』ネタバレ感想文

前置きもなく本題に入りますが、素敵な声から素敵な女性だと妄想して「憧れる」男が登場しますね。 これを仮に「百万本のバラエピソード」と命名するとして、このエピソードとソ連から「憧れの聖地」イスラエルに移住したユダヤ人の「現実とのギャップ」が丸っと重なるのです。 つまりこれは「憧れと現実」を描いた映画なのだと思います。 表面上は、憧れと現実の間で揺れる夫婦の(再生の)物語に見えますが、実は夫婦の視点は一致していません。 「男女の視点の相違」を通じて「憧れと現実」が描かれます。