(ネタバレ感想) 君たちはどう生きるか
前置き
三連休の中日ってことを忘れて混雑回避でレイトを取ったが7割がた埋まるくらいの人いり。ネット上での口コミ広報力侮れないなと思いつつ鑑賞。宮崎さんほどの実績があればある程度の動員が見込めるのは妥当なところと言えるか。
ストーリー
戦中の日本、戦闘機のコクピット部分上部を製造する工場主の息子(牧眞人)が主人公。物語の序盤火災で母を亡くしその後工場の移転と共に後妻である妻の妹のお屋敷へと引っ越しするところから始まる。
が、基本的にそこでの暮らしぶりはほとんど描かれず引っ越した先に存在する不思議な塔とそこへ誘う青鷺をキーにして物語は進行。異界への入り口となった森へ後妻が誘われその後を追うようにして眞人も異界へと踏み込み事態は切迫感を増していく、といった流れ。
映像、アニメーション
所作の一つ一つが凄い。序盤の火事を聞きつけ飛び出す父、それを追う主人公の動作。青鷺の中身が飛び出てくる気持ち悪ささえ感じる動き、痛みを感じるほどの自傷描写、ひとつひとつに宮崎さんの動きへのこだわりが感じられて感動する。
ジブリ関連のメイキングやドラマ映像はだいたい目を通していると思うのだけれどそこで描かれていた「動きへのこだわり」が妥協することなく表現されていてそこを見ただけでもう来て良かったなと思ったほどだ。
特に今作は「群衆」や「集合」するもの達の表現が圧倒的だったように思う。火事場の騒乱、眞人を押し出すペリカンの群れやインコの軍隊などなど。CG技術の発展と宮崎さん自らそういった新しいものを取り入れるために様々な学習とテストを行っていたことが見事に結実しているように見えた。
声優への印象
青鷺役、父親、母親のサブだが重要な役どころは特に違和感なく劇中の人物の台詞として聞けたのだが肝心の主人公とヒミ役の二人が端的に言って下手だなあ、という思いがずっと抜けずじまい。
特に感情を入れて演技する必要のある場面での演技に説得力がなくて盛り上がらず。多分そういった声による過剰な演技は正解ではない、ということなんだろう。
物語への感想
メタファー多過ぎ、説明省きすぎで知識人は解説したがりそうだなーという印象を持った。個々の不明瞭な点はいちいち取り上げるのは無駄という気もするが一例を挙げると塔の主が求める最終目的と眞人をその世界に誘因するためのトリガーである後妻の引き込みが強引、かつ理由は最後まで明確には示されないので想像するしかない。といった感じの「想像するしかない」のオンパレードだ。
青鷺との険悪な関係が道中の課程で少しずつ改善して協力者となる流れはとても丁寧に描かれていて青鷺が劇中での同行者としての役割を明示されているのに対し、過去の母がこの世界に存在する意味、老婆の中で一人だけこの世界に迷い込んでいる意味、作られた世界で育まれる命とその旅立ちを守っている意味、わらわらの旅立ちを邪魔するペリカンの意味、産道を守っている石の意思等々メタファーだらけ、多分これから補足されたり知識ある人達の解説によって少しずつ解き明かされるのだろうが初見では多分こうなんだろうな程度の受け止め方しかできなかった。
塔の主が自分の血を引くものに世界の維持、最後には新生を願ったもののその世界は強引に打ち壊され、眞人の意思としても受け継ぐ事は拒否しそれぞれの世界へ戻っていくというラスト、監督が伝えたかったものはこれだったかと納得したものの、じゃあそこに到るまでの過程はどうだったか?と言われると「微妙だ」と言うしかない感じ。
圧倒的な色彩と動きで場面場面は凄いと思うのだけれどひとつながりのお話として見た場合はアリスinワンダーランドを見ているような気分がしていた。まあでも監督の最後(といいつつ生きてる限りは作り続けそう)の作品としていくらでも解釈のしがいはありそう。一般の人よりはなんらかのクリエイターに刺さりそうなお話でした。
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